重力級のお湯割り。……あるいは、地面にめり込むマッスル・パッチ
「……ふにゃぁ。……皆様、……しじみ汁で元気になりすぎですわ……。……生産性を、……別のベクトル(仕事)に向けなさいな……」
宴会場は、今や「リリアーナ・ファンクラブ」の総会と化していた。
カシアン兄様とフェリクスが、私の左右をがっしりとホールド(デッドロック)し、火花を散らしている。
「リリアーナの護衛は、血を分けた兄である私に決まっているだろう! どけ、眼鏡のストーカー!(兄様)」
「論理的に考えてください。筋肉しか脳にない兄より、彼女の化学式を完全解析(理解)している私こそが、終身保守担当に相応しい!(フェリクス)」
「「さあ、リリアーナ! どちらを選ぶんだ!!」」
「……ひゃぁぁぁ!! ……選べませんわ! ……というか、……どちらもログアウト(帰宅)してほしいですわぁぁ!!」
私は、この暑苦しい二人(+背後で虎視眈々と狙うバルバラ皇帝)を物理的に停止させるため、究極の「鎮圧剤」を錬成することにした。
「……サーシャ! 『鋼鉄のエプロン』を盾にして、……領内から**『重晶石』の粉末と、……『超高濃度・魔導黒糖』**を持ってきなさい!!」
【質量増幅:重力級お湯割りの配合式】
F = G × (m1 · m2) / r²
(F: 万有引力。お湯割りの質量 m1 を魔力で一時的に増大させることで、飲んだ者の体重を相対的に10倍へとブーストする)
私は、立ち昇る蒸気(アルコール分)を吸い込んで「おっさんモード」を全開にし、二人に向かって特大のジョッキを突き出した。
「……いいですわ、……そんなに私のそばにいたいなら、……この**『超高密度・黒糖お湯割り(重力パッチ)』**を飲み干しなさいな!!」
「「望むところだ!!」」
二人が一気に喉に流し込んだ瞬間。
**【物理演算エラー:重力オーバーフロー】**が発動した。
「……ぐ、……っ!? ……な、……なんだ……、……肩の僧帽筋が、……地面に吸い込まれるように……重い……!!(兄様)」
「……リリアーナ様、……これは……、……私の……計算を……超えた……『質量』だ……っ!!(フェリクス)」
ドォォォォン!!
二人の足元の床が、巨大なクレーターとなって陥没。
カシアン兄様とフェリクスは、首から下を床にめり込ませた状態で、完全に固定された。
「……ふにゃぁ。……これでようやく、……『定時(静寂)』が訪れましたわ……」
「まあ、リリアーナ。なんて素敵な『人間オブジェ』なのかしら。……次は、その重力、私を抱き締める時に使ってくださらない?」
めり込んだ二人を眺めながら、バルバラ皇帝が艶やかに微笑み、私の頬をヨシヨシし始めた。
「……ひゃぁぁぁ!! ……皇帝陛下まで、……バグに耐性を持たないでくださいましぃぃ!!」
リリアーナの「静かな生活」への道は、重力をも超える「愛の執念」によって、再び泥沼へと沈んでいくのであった。




