表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/100

王宮フォレスト。……あるいは、聖獣たちのデバッグ・パレード

「……ふにゃぁ。……なんだか、部屋の中がやけに緑っぽいですわ……」


翌朝。婚約者との「初共同デバッグ」を終え、泥のように眠っていた私は、カーテンの隙間から差し込む光で目を覚ました。

……おかしい。私の寝室は、ベルシュタイン邸の三階のはず。なのに、窓の外から聞こえるのは、小鳥のさえずりというレベルを超えた、**「密林の咆哮」**だった。


「リリアーナ様、おはようございます。……どうやら、昨夜の『植物活性剤パッチ』が、換気ダクトを通じて王宮の庭園に漏洩リークしたようですね」


フェリクスが、蔦の絡まり始めた壁に寄りかかりながら、涼しい顔で朝の麦酒プロトタイプを差し出してきた。

慌てて窓を開けると、そこには絶句する光景が広がっていた。


「ひゃぅっ!? ……わ、王宮が、……ジャングルになっていますわ……っ!!」


かつての手入れされた平坦な庭園は消え失せ、そこには数千年の時を経たかのような巨木がそびえ立ち、色とりどりの巨大な花々が、リリアーナとフェリクスの共同作業を祝福するように発光している。

さらに悪いことに、その中心部には、どこから集まったのか、「伝説のユニコーン」や「黄金の聖獣」たちが、行列を作って待機していた。


「聖女様……! 貴女の放った『生命の福音』により、我ら聖獣の傷は癒え、毛並みはシルクのようにリファクタリングされました!」

「(……えっ、聖獣が喋りましたわ……? 翻訳魔法……いえ、これもフェリクス様の仕業!?)」


「ククク……。リリアーナ様、彼らは貴女を『生命のグレート・サーバー』として認識し、定期的なメンテナンスを求めて集まったようです」


フェリクスが眼鏡を光らせると、聖獣たちが一斉に跪く。

だが、その光景を見た私の中の「45歳のおじさん(職人)」は、絶望に震えた。


「……フェリクス様。……あれを見てください。……あのユニコーンの太腿だいたい、……そしてあの聖獣の広背筋。……完璧ですわ。……完璧なバルクですわ……!!」


私は、自分たちが作った「植物活性剤」が、動物たちの筋肉をも超活性化させてしまったことに気づいた。

彼らはもはやただの獣ではない。**「極限までパンプアップされた、歩く筋肉の権化」**となっていたのだ。


「ああ……っ! 私がなりたかった姿が、……あんなユニコーンに先を越されるなんて……! ゴミですわ、私の配合はやっぱりゴミなんですわぁぁ!!」


私は悔しさのあまり、フェリクスの胸元で地団駄を踏んだ。

その時、密林をかき分けてアレン王子とカシアン兄様が、巨大な食虫植物と格闘しながら現れた。


「リリアーナ! 王宮が森になったと思ったら、君の気配がする方向に聖獣の行列ができているじゃないか! どけ、馬ども! リリアーナの隣は僕のポジションだ!(王子)」

「……妹よ。……聖獣たちが君を崇めるなら、私はその聖獣たちを束ねる『筋肉の王』として君を守ろう!(兄様)」


王子たちは、聖獣たちの圧倒的なバルクを見て、対抗意識からその場でシャドーボクシングを始めた。


「……ふにゃぁ。……もう、勝手になさってください……。……私は、……この森で採れた『魔導マンゴー』でも食べて、……二度寝しますわ……」


リリアーナが現実逃避を決め込んだその裏で、フェリクスはこの「聖獣の森」を観光資源および軍事拠点として活用する**『王宮再開発ロードマップ』**を、着々と書き進めているのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ