変態紳士の再臨。……解析(スキャン)すべきは、その「脆弱性(うぶ)」
廊下に立ち尽くす、筋肉嫌いの「純白のリリアーナ」。
彼女が投げつけた花瓶によって、デーモン・ヴァルガスは魔力霧散し、残されたサキュバス・ルナリスは、フェリクスの「絶望の数式」に縛られたまま、呆然と事の顛末を見つめていた。
「……リ、リリアーナ様……。……花瓶(物理)で、上位魔族を……っ」
床に倒れ伏していたフェリクスが、震える手で眼鏡をかけ直した。
彼は今、リリアーナの「おっさん脳」と同期し、精神崩壊寸前の絶望を味わっていたはずだ。……しかし。
彼が眼鏡の奥の瞳を開いた瞬間。そこにあったのは、絶望ではなく、**かつてないほど「ギラギラとした、知的かつ変態的な光」**だった。
「(……待て。……待てよ。……今のリリアーナ様は、……筋肉を拒絶している。……つまり、以前のような、……筋肉を見て『ふにゃにゃ』と笑う、……あの防壁が存在しない……!?)」
フェリクスの脳内で、高速演算が開始される。
ターゲット:リリアーナ・ベルシュタイン。
状態:精神的脆弱性。
防壁:全損。
「……フフ。……フハハハハ!! 計算通り! すべては、この瞬間のためのシミュレーションだったのだ!!」
フェリクスが、瀕死のはずの体で、颯爽と(しかし四肢をガクガクさせながら)立ち上がった。
彼は懐から、血に濡れた計算尺を取り出し、それをリリアーナに向かって、**「変態紳士的なポーズ」**で突きつけた。
「……フェ、フェリクス様? ……お顔が、物凄く怖いですわ……?」
怯えるリリアーナ。
「リリアーナ様! 貴女は今、……筋肉という『不純物』を取り除かれた、……真の意味での『深淵(素体)』となられた! ……以前の貴女は、筋肉越しにしか世界を見ていなかった。……だが、今は違う! ……今の貴女こそ、私の論理(愛)で、一から書き換える(再教育する)に相応しい、……至高の『未完成コード(ピュア・美少女)』だ……ッ!!」
「……え? ……何を仰っているのか、さっぱり……っ」
リリアーナが後ずさりするが、フェリクスは逃がさない。
彼は、リリアーナの周囲に、空中に**「ピンク色に輝く、怪しげな数式」**を展開し始めた。
【フェリクス製:深淵の乙女・再構築・プログラム】
Desire = Integral of (Purity x Vulnerability) dt
Education_Level = Limit (t -> Ecstasy) of (Logical_Seduction)
総合判定:『至高の被験体』。
筋肉がない貴女こそ、私の変態的な計算で、完璧な淑女にしてみせましょう……!
「……さあ、リリアーナ様! ……まずは、その『怯える瞳』の黄金比を計測させてもらう! ……そして、その震える肩の振動数を、……私の鼓動と同調させるのだ……ッ!!」
フェリクスは、リリアーナに触れることなく、ただ周囲の魔力を操作し、彼女の「乙女な反応」をデータ化して楽しむという、**「高度な変態行為」**に及んだ。
「……きゃぁぁぁ!! ……何、この、……この変な数式に囲まれて、……体が、……体が熱いですわ……!? ……ミリー! テオ! 助けて、この変質者から……ッ!!」
リリアーナの悲鳴が、凍りついた屋敷に響き渡る。
床で倒れていたミリーとテオは、薄れゆく意識の中で、その光景を見て、……静かに瞳を閉じた。
「(……ああ。……フェリクス様が、……本来の『変態紳士』に戻られた……)」
「(……リリアーナ様が、……筋肉ではなく、……変態に泣かされている……。……これぞ、……これぞベルシュタイン邸の日常(様式美)……)」
彼らは、主が元の(?)変態に愛でられる姿を見て、安心して意識を失った。
一方、縛られていたルナリスは、そのあまりにも高度(変態)な魔力操作を前に、戦慄した。
「(……バカな。……私、サキュバスなのに、……こいつの『欲求』の深淵が、……怖くて覗けない……ッ!!)」
シリアスは終わった。
そこにあるのは、筋肉を失った美少女を、独自の論理で愛でる、一人の「変態紳士エンジニア」の独壇場であった。




