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フェリクスの改変。……神速の騎士は、肉の塊へと進化する

リリアーナが「空っぽの美少女」になってから数日。


フェリクスは焦っていた。リリアーナの「理系脳」を再起動させるには、彼女が最も愛した「至高の筋肉」を目の前に提示するのが最短ルートだと、彼の計算機(脳)が弾き出したからだ。


「……アレン殿下。リリアーナ様が提唱した『神速の騎士団』……。あれは理論的に中途半端です。速度スピードを重視するあまり、一撃の質量マスが不足している。……私の作った**『超圧縮・高密度プロテイン・α』**を投与すれば、彼らは真の完成体となるでしょう」


「……しかしフェリクス、彼女はあのバランスこそが至高だと言っていたが……(王子)」


「今の彼女は何も言いません。……ならば、私が『正解』を上書きするまでです」


【フェリクス製:筋肉最大出力化プログラム】

フェリクスは強引に、騎士団の半分に独自の強化薬を投与した。


結果、かつてリリアーナが**「……ふにゃ。……しなやかな豹のような筋肉ですわ」と愛でた騎士たちは、見る影もない「歩く肉の城塞(筋肉ダルマ)」**へと変貌を遂げた。


「……くっ、腕が重い……。だが、パワーだけは以前の数倍だ……!(ダルマ化した騎士)」


数日後。王都近郊に、災害級の魔獣『瞬刻の魔豹』が出現した。


その名の通り、目にも止まらぬ速さで獲物を狩る難敵である。


フェリクスは自信満々に、自身の「筋肉ダルマ騎士団」を最前線に送り出した。


「見ていてください、リリアーナ様。これこそが貴女が到達すべきだった、論理的帰結としてのマッチョです!」


しかし、戦場は惨泩たるものだった。


「……あ、当たらない! 奴の動きが速すぎて、パンチが空を切る……!」


「……膝が、……自分の体重バルクに耐えきれず、……動けんッ!」


筋肉ダルマたちは、自らの重すぎる肉体に翻弄され、魔獣の餌食になりかける。


そこへ、リリアーナの教えを守り続け、フェリクスの薬を拒絶した「神速の騎士」たちが、一陣の風となって戦場を駆け抜けた。


「……ふっ、筋肉とは『魅せる』ものではなく、……『機能』するものだ。……神速一閃!」


リリアーナ派の騎士たちは、圧倒的な機動力で魔獣を翻弄し、一瞬で首を撥ねた。


活躍したのは、間違いなく「リリアーナの遺産」の方だったのだ。


「……バカな。……出力パワーが勝っている方が負けるなど、……計算に合わない……!」


愕然とするフェリクス。しかし、横でそれを見ていたリリアーナは、かつての狂気など微塵も見せず、ただ美しく首を傾げた。


「……まぁ。……あちらの大きな方々、……転んでしまって、痛そうですわね。……ふにゃぁ。……なんだか、おにぎりみたいで、……少しだけ美味しそうですわ」


「……お、おにぎり……!? 筋肉を、……非常食扱いですって……!?」


フェリクスは絶望した。


リリアーナを戻すために「最強の筋肉」を見せたはずが、彼女の目には「食べ物」程度の認識しか残っていない。しかも、自慢の計算で作り上げた騎士団は、リリアーナの過去の遺産に完敗したのである。


「(……認めん。……認めんぞ、おっさん化学者……! 貴方の遺産がこれほど強固なら、……私は、その基礎理論ごと破壊してやる……!)」


フェリクスのプライドに火がついた。


リリアーナを「戻す」という目的は、いつの間にか「前世の彼女の理論を超えたい」という、歪んだエンジニア精神へとすり替わっていったのである。


一方、城下町では。


フェリクスが廃棄した試作品を拾った商人が、**『飲むだけで荷馬車を引けるようになる(が、一度飲むと一生荷物を引き続けたくなる)恐怖の栄養剤』**として売り出し始め、社会問題になりつつあった。

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