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聖女のプロテイン(聖水)。……お嬢様、それはもはや宗教ですわ

「悪魔の幻惑から我らを救い出した、奇跡の聖女リリアーナ様!」


「その御手が作りし虹色の液体は、魂を浄化する聖水に違いありませんわ!」


……ふにゃ。……なんだか、大変なことになってしまいましたわ。


昨日の「悪魔(のしわざだと勝手に思われている)騒動」以降、私の屋敷の前には、ひれ伏して祈りを捧げる人々が長蛇の列を作っています。


しかも、私が中和剤としてばら撒いた「抗筋肉触媒入りプロテイン」の余りが、**『悪魔を祓う聖水』**として、教会の高位聖職者たちにまで注目されてしまったのです。


「……リリアーナ様。……教会から『聖女認定』の使者が来ていますわ」


サーシャが、見たこともないほど豪華な、金縁の招待状を持ってきました。


彼女の目は「あ、このお嬢様、ついに神様になっちゃうんだ」という、諦めに近い虚無の色を湛えています。


「……ふにゃ!? 聖女!? 私、ただの筋肉好きの化学者おっさんですわよ! ……そんな、神聖なものとは無縁ですわ!」


「……ですが、お嬢様の配ったプロテインを飲んだ病人が、『筋肉が漲って、病魔(というか、重い荷物)を投げ飛ばせるようになった!』と叫んで奇跡を証言しているのです。……今や街では、お嬢様のプロテインを水で薄めて、玄関に撒くのが流行っていますわよ」


「……もったいない! ……プロテインは飲むものですわ! 玄関に撒いたら、ただのアリの餌(栄養)ですわよ!!」


私が絶叫しても、周囲の耳には届きません。


それどころか、お父様までもが真っ白な法衣のようなドレス(胸筋が透けている)を用意し、「リリアーナ、国民は君という希望を求めているんだ。……さあ、バルコニーから『聖なるバルク』を皆に授けてやりなさい」と、涙ながらに微笑んでいます。


結局、私はバルコニーに立たされました。


階下には、数万人の群衆。


「……皆さま。……ふにゃぁ。……ええと。……悪魔はもういませんわ。……だから、普通に……筋肉を、……いえ、徳を積んで……」


私が不器用に手を振ると、群衆は「おおお……!! 聖女様が『筋肉(徳)を積め』と啓示をくださった!」と地鳴りのような歓声を上げました。


その時です。群衆の後方に、フードを深く被った怪しい影が二つ。


その影は、信者たちの熱狂を忌々しそうに見つめていました。


「(……あの小娘……。……せっかく私たちが、この国に『淫靡な幻覚』を振り撒こうと準備していたのに……)」


「(……ああ。……まだ何もしていないのに、勝手に『悪魔のしわざ』にされて、しかも浄化(物理)されるなんて……。……許せないわ、あの美少女聖女……!)」


彼女たちの正体は、本物のサキュバスとデーモン。


実はこの国、リリアーナの勘違い騒動の裏で、本当に魔族の侵攻を受けようとしていたのです。


しかし、彼女たちが仕掛ける前に、リリアーナの「暴走」がすべてを更地にしてしまったのでした。


「……ふにゃにゃにゃにゃ。……なんだか、視界の端に不穏な魔力数値パラメータが見えますわ……。……でも、今はとりあえず、この聖女のフリを乗り切らなくては……」


リリアーナは、笑顔でプロテインの粉末を「聖灰」として撒き散らしながら、次なるトラブルの予感に震えるのでした。

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