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学園マッスル・パニック。……流石の私もドン引きですわ

翌朝。

寝不足を解消し、スッキリとした頭で登校したリリアーナを待っていたのは、阿鼻叫喚の光景だった。


「……ふにゃ!? な、なんですの、この『鉄の森』は……!?」


昨日まで色とりどりのバラが咲き誇っていた学園の庭園は、一夜にして更地となり、そこには重厚な**『屋外型・高重量トレーニング施設』**が鎮座していた。


噴水からは透明な水ではなく、不気味に白濁した「低脂肪プロテイン」がドバドバと湧き出し、優雅なベンチはすべて、角度調整機能付きの「インクライン・ベンチ」に置き換わっている。


「……あ、リリアーナ様! おはようございます!」


ミリーとテオが、重さ30kgはある鉄球(教科書入れ)を抱えながら駆け寄ってきた。二人の後ろでは、昨日昼食会にいたお姉様方が、ドレスをたすき掛けにして懸垂チンニングに励んでいる。


「……皆さま、一体どうされたのですか? ……昨日の庭園はどこへ……?」


「何を仰るのですか、リリアーナ様! 昨日の昼食会での貴女の沈黙……『言葉よりも重力を信じろ』というあの啓示に従い、陛下と私共で一晩で設営いたしましたわ!」


お姉様の一人が、バキバキにパンプアップした前腕で額の汗を拭いながら微笑む。


リリアーナは、頬を引き攣らせた。


「(……い、いえ……。……私、ただ眠くてボーッとしていただけですわ。……人類マッチョ化は私のライフワークですが、……それはあくまで『美しき化学サイエンス』の結果であって、……こんな、学園を鉄屑の山にすることではありませんわ……!)」


リリアーナの頭をよぎるのは、前世のおっさんとしての「社会性」だった。


やりすぎだ。これは、完全にコンプライアンス違反、あるいは過剰投資オーバーワークだ。


「……あの、皆さま。……少し、落ち着いてくださいな。……筋肉は一日にして成らず、……そして学園は筋肉を育てる場所であって、筋肉そのものになる場所では……」


「……リリアーナ様! 謙遜なさらないで! 貴女が望んだ『筋肉の理想郷ディストピア』、私たちが必ず完成させてみせますわ!」


お姉様方の瞳には、もはや論理の通じない「信者の輝き」が宿っていた。


噴水から湧き出るプロテインの匂いが風に乗り、学園中にバニラと鉄の香りが充満する。


「……ふにゃ。……ふにゃにゃにゃにゃ……。……ど、どうしましょう。……これ、どうすればいいのかしら……。……私、ただ……昨日は枕が合わなくて、寝不足だっただけなのに……」


リリアーナは、鉄棒にぶら下がりながら「愛のバルク!」と連呼する後輩たちを見つめ、初めて**「自分の影響力が、制御不能なモンスター(化け物)」**になっていることにドン引きした。


「……あ、あはは。……良いバルクですわね……(震え声)。……私は、ちょっと……学長室へ、退路プロテインを探しに行ってきますわ……」


リリアーナは、人生で初めて「自分の筋肉愛」に追いつけなくなった周囲を置き去りにし、ふらふらと逃げ出すのでした。

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