↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が死んでも、世界は思ったより平和じゃない  作者: Soh.Su-K
第1章 4節 盗賊団討伐依頼編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/65

第55話 俺の肉を盗むな

「お主にそんな素質があったとはな、ガル」


 大将の店の、一番奥のテーブル席。

 グローが声を落として言う。

 俺の魔術の素質の話だ。公言出来る事じゃない。


「隠してて悪かった」


「事が事だ、当然だわい。エルウィンがお主を気に掛けてた意味も分かった」


「知る人間は、少ない方がいいでしょ」


「そこは気にしとらん。問題はこの先だ。魔王軍の魔術師《ストライゴン》と出くわす度に倒れられても困るぞい」


「そこは私が訓練するわ」


「お主だけが頼りだ。頼むぞ」


 グローが樽ジョッキを空にした。


「やけに静かね、アンタ達」


 セリファが料理を運んできた。


「作戦会議だ。状況が変わりつつあるのでのぉ」


「状況?」


「次の魔王が、もうすぐ決まるらしい」


「は?魔王が倒されて、まだ大して経ってないでしょ」


「魔王軍の魔術師が言っておった。確度は高かろう」


 そうなれば、ギルドの依頼も変わる。

 パーティ指定が増えれば、三人じゃ受けられる依頼が減る。


「人数、増やした方がいいかもね」


 エルウィンが俺の皿の肉を一切れ、フォークで刺して口に運んだ。


「おい」


「ケチケチしないの」


「……増やすにしても、誰を入れるんだよ。候補なんていないぞ」


 俺はフォークで肉を刺す。

 刺した筈だった。

 なのに、皿の上から肉が消えている。

 またエルウィンか――そう思った時だった。


「僕が入る!」


 誰も座っていない筈の、右隣りの席から声がした。


「あ?」


 空席の椅子の上に、圃矮人《ハーフリング》が立っていた。

 俺の肉を頬張りながら。


「貴方がガル?」


「あぁ、そうだが」


「助けてくれてありがとう!僕、スゥ!」


 その場の全員が固まった。


「助けた……?」


「操られてたのをガルが助けてくれたって、軍人が言ってた!」


「あぁ、ガルが最後に助けた子じゃない」


「……お前か」


 魔術師と対峙する直前、小屋に一人でいた圃矮人の子供だ。


「元気になったか。良かったのぉ」


「うん!元気!」


「スゥ、お前、俺達のパーティに入りたいのか」


「うん!」


「まずは家に帰るのが先よ」


 エルウィンが言い聞かせる。

 スゥはまた俺の肉をつまみ食いしながら、けろりと言った。


「僕、家ない」


「……家がない?」


「西都の貧民窟《スラム》にいた。親も知らなーい」


 場が静まった。

 まぁ、そうなるよな。


「スゥ、腹減ってるか」


「うん!」


「好きなだけ頼め。その代わり、俺の肉を盗むな」


「はーい!」


 セリファに同じ皿を二つと、ジュースを頼む。

 気まずそうなグローとエルウィンをよそに、俺はスゥに訊いた。


「お前、戦えるのか」


「戦えるよ?隠れるの得意!罠《トラップ》も作れる!小剣《ナイフ》も使える!」


 義賊《ローグ》か。

 操られていた時、こいつに襲われかけた。動きは悪くなかった。


「おいガル、まさか此奴《こやつ》を仲間にする気か」


 グローが慌てて止めに入る。


「貧民窟に帰す訳にもいかんだろ」


「そりゃそうだが……」


「フフ、やっぱりガルって正義の味方なのね」


「違ぇよ。俺もそうだったってだけだ」


 スラムの底で拾われた。

 それがなけりゃ、今の俺はいない。

 それだけの話だ。


「恩返しって訳ね。いいんじゃない」


「実力は、明日テストすればいい」


「じゃあ今日はご飯食べて、風呂入って、寝ましょう」


「ご飯ー!」


「やれやれ……」


 結局、四人で騒がしく飯を食って、その夜は更けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。