↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が死んでも、世界は思ったより平和じゃない  作者: Soh.Su-K
第1章 4節 盗賊団討伐依頼編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/63

第51話 理解と納得の違い

 洞窟の中、震える5人の子供達を前に、俺の手は止まったままだった。


「ガル」


 そう言ってエルウィンは矢を矢筒に戻し、双短剣《ツインショートソード》を取り出す。


「いや、待ってくれ……」


 俺はエルウィンを止め、その子達に近付いた。


「耳長人《エルフ》語は分かるか?」


 腰を落としながら、俺はその子達に話し掛けた。


「……、少し……」


 食人鬼の1人が言った。


「そうか、良かった。ここで何してる?」


「僕ら、偉大な魔術師になるため、練習、してる……」


「偉大な魔術師になって、どうする?」


「戦う!魔王軍に入って、魔王様の為に働く!」


「魔王は死んだ、知ってるだろ?」


「もうすぐ次の魔王様が決まる!そしたら、また戦いが始まる!」


 まるでお気に入りの御伽噺をしているかのように、目をキラキラさせている。


「ガル、無駄だ」


 グローは顎髭を撫でながら言う。


「殺す以外にないぞ」


「……」


 俺は何も言えなかった。

 こんなにも幼い子供達を、将(・)来(・)の(・)危(・)険(・)性(・)という理由で殺していいのだろうか。

 いつもの俺ならば、そんな疑問など浮かばない筈だ。

 なのに今は、何故か浮かんでしまう。


「……、お前ら動くなよ」


 俺はその子達を縄で縛り始めた。


「ちょっと!?ガル!?」


「何をしておる!?」


「ガキ殺しなんざやりたくねー」


 手早く5人の子供を縄で繋ぐ。


「辞めろガル!此奴《こやつ》らは小さいが魔術師だぞ!」


「手を縛った所で、魔術は発動出来るわ。危険な事は辞めて、ガル」


 2人から止められるが、知った事ではない。

 暗黒種族だからと言って、子供まで殺すべきなのか。


「何処へ連れて行くつもりだ、ガル」


 グローが俺の前に立ちはだかる。


「どけ、何処でもいいだろ……」


「何処に連れて行っても同じだ。またそこで同じような盗賊の討伐依頼が出るだけだ。下手すりゃ今度は死人が出るぞ」


「だからって子供まで殺すなんて!」


「ガル」


 エルウィンが俺を呼んだ。

 エルウィンに向き直った瞬間、平手打ちを喰らった。

 乾いた音が洞窟内に響く。


「駄々こねないで。戦争って事、忘れたの?」


「……」


「もしここで、この子達を見逃したら、次は100人規模の部隊で村を襲うかもしれない。1000人規模の指揮官になっているかもしれない。将軍になる可能性だってある。潰せるときに潰すのが鉄則よ。貴方なら分かってる筈でしょ?」


「……」


 そうだ、分かっている。

 矮鬼《ゴブリン》などと同じだ。

 根絶やしにしなければ解決したとは言えない。

 そんな事は分かってるんだ。


「……、俺には出来ない……」


 子供達を繋いでいる縄から手を離し、俺は洞窟の中から出た。

 グローとエルウィンが顔を見合わせる。

 グローが小さく頷くと、エルウィンも頷き、エルウィンだけが俺を追って外に出た。


「ガル、戻ろう」


 下を向いて立ち尽くす俺に、エルウィンが優しく声を掛ける。


「分かってるんだ、頭では……」


「うん……」


「けど、俺には出来ない……。情けない……」


「うん……」


 まるで過去の自分を見ている様だった。

 隠れながら必死に生き、強者に怯えていた過去の自分と、さっきの子供達が重なった。


「本当に殺すしかないのか……?」


「うん……。先に街に戻ろう」


 俺はエルウィンに付き添われ、街に戻る事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。