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魔王が死んでも、世界は思ったより平和じゃない  作者: Soh.Su-K
第1章 3節 軍令:調査依頼編

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第33話 しっかり生きろ

「ふむ、お前のお迎えが来た様だな」


「な!?俺、死ぬのか!?」


「違う、逆だ。肉体に戻る頃合いという事だ」


 肉体に戻れるのか。

 方法を聞かなくて良かった様だ。


「ウラグ、アンタには世話になったな」


「何、集合思念に取り込まれるまでいい暇つぶしになった。礼を言うのはこっちだ」


「普通に出会ってれば、アンタとはいい酒が飲めそうだったんだが、残念だ」


「仕方あるまい、世の流れには逆らえん。私も、お前と話が出来て良かった。そうだ、これを受け取れ」


 ウラグは右手を差し出した。

 掌の上に見た事のない紋章《シンボル》が浮かび上がっている。


「それは?」


「闇魔術の基礎中の基礎だ。本気で修行すれば使えるようになるぞ」


「おい、王国では禁忌だって言ったのはアンタだろ?」


「使い処は考えろという事だ」


「ったく……」


「もう会う事はないが、達者でな。しっかり生きろ、ガル」


「おう、ありがとよ」


 俺はゆっくりと目を開いた。


†


「ガル!起きたか!」


 グローが俺の顔を覗き込んでいた。


「なんだよグロー、顔が近い……」


 俺はグローの顔を手で押しやりながら上体を起こした。


「なんだよではない!」


「呼吸も心臓も止まっていたんですよ!?」


 サリィンとコフィーヌも泣きそうな顔で俺を見ている。

 呼吸も心臓も止まっていたのか。

 肉体と魂が離れるのは中々危険な様だ。


「悪い悪い、心配かけたな」


「何処もおかしい所はありませんか?」


 コフィーヌが近付き、脈などを調べてくれている。


「コフィーヌは医学の知識もあるのか」


「実家が薬草を扱っていたので、衛生兵課程に進みました。異常はなさそうですね」


「なんじゃい、心配させおって」


「俺は寝てただけのつもりなんだがな」


「心配して損したわ」


 グローはそう言って俺に背を向けた。

 魂世界でウラグと会った事は伏せておいた方がいいだろう。

 とりあえず、煙草を吸うために俺は立ち上がろうとした。


「あ!まだダメです!」


 コフィーヌが俺を止めようとする。

 コフィーヌの手が俺に触れる前に、俺の身体はユラリと傾いた。


「あら?」


 俺はコフィーヌを下敷きにする形で倒れた。


「悪い……」


「まだ動くのは危ないかと……」


 コフィーヌは顔を赤らめながら言う。


「それと……、手をどけてもらえないでしょうか……?」


 そう言われて見ると、俺の手はコフィーヌの胸を鷲掴みにしていた。

 手にはかなり控え目ながら、柔らかい膨らみを感じる。

 ……、膨らみ?


「コフィーヌ……、アンタ、女だったのか……?」


「……はい」


 俺は何かに弾かれたようにコフィーヌの上から飛び退いた。

 これは完全にやらかした。


†


 翌日、俺達は無事に木こりの町へ到着した。

 ほぼ丸1日を坑道で過ごしたお陰で、外に出た時の眩しさと言ったら、目が焼けるかと思った程だった。


「臭いはまだ残ってるな……」


 ここは木こりの町ではあるが、ウラグ率いる約1100と、トールズ率いる2500がぶつかった戦場だ。

 死体の処理は既に完了しているが、地面はその時に流された血を吸い、元の土の色が分からないくらいに黒く変色している。


「こりゃ、土の入れ替えからやる必要があるのぅ……」


「町は石畳で完全舗装される予定なので、入れ替えの必要はないとの事でした」


「石畳にするにしても、何か嫌だよな……」


 俺はしゃがんで地面に触れた。

 乾燥した赤黒い砂が手に付着する。


「ここで寝泊まりするって、抵抗あるよな」


「なんじゃ、ガル。怖いのか?」


「怖くはねーけど、気味悪ぃ……」


「意外な弱点だの」


「俺は一般人だぞ?戦場慣れした軍人と一緒にするな」


「私もちょっと、抵抗あります……」


 サリィンとコフィーヌも俺に同調する。

 戦後配属組なのだ、戦場慣れなどしている訳がなかった。


「なんじゃい!そんな事より、調査するのだろ?さっさと終わらせて帰るぞい」


 グローはドカドカと歩き出した。

 俺達はその後に続いた。


「調査ってどれくらいの範囲でやるんだ?」


「盆地内の全てです」


 ニッコリと笑うサリィン。


「……はぁ?」


「ですから、盆地内の全範囲です」


 俺は無言のまま頭を抱えた。


「どれくらいかかる?」


「グロー殿の地質調査の速度なら……10日ほどかと」


「10日!?」


「早い方ですよ?通常は1ヶ月以上かかります」


 確かにグローがいなければ、地面に穴を掘って地質を調べる必要がある。

 それだけで途方もない時間がかかるだろう。


「10日か……。俺、何すりゃいいんだ?」


「護衛と記録の補助をお願い出来ますか?」


「まぁ、それくらいなら」


「あとはそうですね……、料理をしてもらえると助かります」


「飯炊きかよ」


「ガル殿の飯は美味しいですから」


 やけに素直に言われると悪い気はしない。

 俺はため息を吐きながら、グローの後を追った。

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