第26話 王都でいざこざか?
自宅のドアがノックされる。
二日酔いでグワングワンする頭を上げる。
ベッドを振り返るとセリファが寝ていた。
またやってしまったか……。
何とか立ち上がり、紙巻煙草を取り出しながらドアへ向かう。
「はい、どちら様?」
上半身裸のままドアを開けると、サリィンが立っていた。
「ガル殿、まだお休みでしたか、申し訳ございません……」
「あぁ、気にしないでくれ。で?何の用だ?」
「はい、いきなりで恐縮なのですが、私の王都への出頭に付いて来ていただけませんでしょうか?」
「……、はぁ?」
いきなりにも程がある。
「どういう事だ?」
「先の戦闘に関しての聴取が王都の方で行われる事になっておりまして。関係者であるガル殿にも加勢して頂きたいのです」
「加勢?」
何とも嫌な予感がする。
「それだったらグローを連れて行ったらどうだ?俺は見てただけだ」
「いえ、単眼鬼の存在を確認したのはガル殿が最初です。それに、ギルドに協力を仰ぐ案もガル殿でしたので」
「めんどくせぇな……」
「もちろん、グロー殿も一緒に来て頂きますし、ギルドのブリジット殿とフィロー商会のピュート殿も一緒です」
「主要関係者全員を招集してるのか……」
「そうなります。申し訳ございませんが、今日の昼過ぎには発ちますので、それまでにご準備の方をお願い致します」
深々と頭を下げるサリィン。
「分かった。行くしかないんだな……」
「はい、ありがとうございます。では、昼過ぎに支所までお出で下さい。では、お邪魔致しました、お二方」
「あ!?」
ニッコリと笑ってサリィンが爽やかに去っていく。
セリファがいる事に気付いていたようだ。
何とも食えない耳長人だ。
「はぁ、俺は怪我人だぞ?」
咥えたままだった紙巻煙草に火を点ける。
「バレてたのね……」
セリファがベッドから起き上がってきた。
「起きたか?」
「話し声で起きた。王都に行くの?」
「ああ、何か招集らしい。めんどくせぇ……」
「いいじゃない。王都なんて滅多には入れないんだから」
「観光で行くんじゃねーからな?」
「けど、観光も出来るでしょ?」
「興味ない」
「いいなー、私も王都に行ってみたい」
「……、お前も一緒に行くか?」
「はい?」
「大将には俺が言っとく。お前も一緒に来い!」
「ちょっと、勝手に決めないでよ!」
「行きたくないのか?」
「……、行きたい」
「よし、行こう!」
†
「大丈夫ですよ」
ニッコリと笑うサリィン。
予想以上にアッサリと許可が下りた。
「えぇ、今回の入城手形は『関係者一行』としか書いてありませんので。人数指定もありません」
「なんとも杜撰な……」
グローが呆れている。
「むしろ、危険分子が数人入った所ですぐに処理出来るっていう自信だろうな」
頼んだ分際で物騒な事を言うもんだ、俺は。
「では、軍以外の関係者として、ガル殿、グロー殿、ブリジット殿、ピュート殿、それにセリファ殿の5名を登録しておきます」
「あぁ、頼む」
「軍からは、私とコフィーヌ、文官のトウラが随行致します」
合計8人の王都への旅が始まった。
二頭立ての荷車に7人が乗り込み、1人が御者だ。
御者はサリィンとコフィーヌ、トウラが交代で務めた。
「何とも呑気な旅だのぉ」
グローがパイプを吹かしながら言う。
「グロー、ここでパイプ吸うなよ!煙が籠るだろ!」
俺ですら煙草を我慢しているのに。
「ケチだのぉ……」
グローは渋々ながら灰を捨て、パイプを仕舞った。
「そうだ、サリィン」
「はい?」
「案の定、襲撃に遭った様だの」
「襲撃?何の話だ?」
グローはニヤニヤと笑っている。
「何、食人鬼の護送中の話だ」
「えぇ、グロー殿にアドバイスを頂いていたので何とか対処出来ました。3人程を捕えております」
「全く話が見えないんだが?」
「分からんか、ガル。護送中のサリィン達を襲ったのは、中央軍の奴らじゃ。手柄を全てサリィンに持っていかれたからな」
「はぁ?」
「その時に捕えた捕虜は賊として既に王都へ送りました。今回の聴取の際には、武器になります」
グローがガハハと笑う。
なるほど、だからニヤニヤしていたのか。
何ともめんどくさい事に巻き込まれたもんだ。
しかし、王都での聴取は一波乱ありそうだ。




