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魔王が死んでも、世界は思ったより平和じゃない  作者: Soh.Su-K
第1章 2節 狗鬼討伐依頼編

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第25話 ちょっと小休止だな

 俺はいつもの様に酒場にいた。

 あの戦闘から、既に5日が過ぎていた。

 酒を飲みたいのは山々なんだが、如何せんゼペットから禁酒令を出された。

 なので仕方なく、コッフェを啜っている。


「こんな飲み物があるとはなぁ」


 大将は俺の隣に座り、一緒にコッフェを飲んでいる。

 今はまだ営業時間ではない。

 左手の負傷で依頼をこなす事も出来ず、暇を持て余していた。

 コッフェを分けてもらうためにピュートに会いに行った帰り、大将とバッタリ会ったので、そのまま店に来たのだ。


「まぁ、飲み物には見えないよな」


「しかし、面白い香味だ。ウチもメニューに入れるか」


「今度、ピュートを紹介してやるよ」


「お、頼む」


 大将との他愛もない会話が続く。


「そういや、今日からこの間の報酬を支払うってギルドが言ってたぞ?」


「あぁ、今日だったか」


「行かないの?」


「俺は何もしてないからな。貰えるかすら分からん」


「でも、お前が偵察しに行ったんだろ?」


「戦闘では全く役に立ってない。見てるだけだった。それで報酬貰ったら、他の奴に申し訳ない」


「……、そう言うとこは真面目だよな、お前」


「うるせぇ」


「照れるなよ」


「照れてねーよ!」


「おはようございまーす」


 セリファが出勤して来た様だ。


「何でガルがいるの?」


 開口一番でそれか。


「そこでバッタリ会ってな。それより、ガルの相手してやってくれ。俺は仕込みをせにゃ」


 大将が立ち上がり、厨房へ消える。


「私だって掃除とかあるんですけど!?」


「いいじゃねーか、綺麗だから」


 何とも適当な大将だ。

 セリファはおずおずと大将の座っていた席に座る。


「何飲んでんの?」


「コッフェ。お前も飲む?」


「何それ……」


 カップに半分ほど注いでやった。


「真っ黒……。炭?」


「いいから飲んでみろ」


 セリファは意を決して一口飲む。

 飲んだ瞬間に顔をしかめた。


「にっが!!」


「アハハハハ!悪い悪い、ミルクと砂糖入れるの忘れてたわ!」


「絶対わざとでしょ!にっが!!」


 ひとしきり笑った所で、セリファのカップにミルクと砂糖を入れてやった。


「よく混ぜて飲んでみろ」


 セリファは一度俺を睨み付けた後、恐る恐るカップを啜る。


「……、さっきより苦くないけど……、やっぱり苦い」


「気付けに良さそうだと思わないか?」


「私は苦手」


「お前、甘いのが好きだもな」


「私がお子ちゃまだって言いたいの!?」


「まぁ、エールも飲めないしな」


「果実酒の方が好きなの!」


「甘いからな」


「何なのよ!」


 セリファはプンプンしながらも、コッフェをチビチビと啜る。


「苦手じゃなかったか?」


「味は好きになれないけど、香りは好き。凄くいい香りね」


「ハハ、落ち着くだろ?」


「うん」


 それからしばらく俺達は静かにコッフェを飲んだ。

 厨房からはいい匂いが漂ってくる。

 昼過ぎの中途半端な時間とあって、外も静かなものだった。


「怪我、したんでしょ?」


 おもむろにセリファは話し掛けてきた。


「あ?あぁ、これな」


 包帯が巻かれた左手を見せる。


「無茶するから……」


「じゃないと死んでた。まぁ、結局は不要な偵察になったけど」


「あんまり心配させないでよね」


 溜息を吐きながらコッフェを啜るセリファ。


「なに?心配してくれてんの?」


 俺はニヤニヤとセリファの顔を覗き込む。


「バカッ」


 耳まで赤くしながらセリファはそっぽを向く。


「まぁ、死なない様に頑張ってるつもりだけどな」


「信用できないから言ってるの」


「はいはい、気を付けるよ」


「心にもない事を……」


「お主ら、付き合うならはよ付き合わんか」


 グローが厨房から出てきた。


「やっぱりここだったか」


「なんでグローがいるんだよ」


「お主を探しに来たに決まっておろうが。家にもおらぬし、まさかと思ってここを尋ねたら案の定だわい」


 グローがセリファとは反対側の隣に座る。


「ほれ、お主の取り分だ」


 金貨の入った袋を俺の前に置く。


「今回は役に立ってねーから、受け取る権利はねーよ」


 目の前のそ(・)れ(・)をグローの前に戻す。


「何を言っておるか。偵察はこなしたではないか。それに、冒険者を募って兵力にした機転もお前のものだ。貰う権利はある」


 再び俺の前に置く。

 そのついでに、俺のカップにコッフェを注いでそのまま飲んだ。


「拗ねておるのか知らんが、少しはシャキッとせんか」


「俺はしばらく休業だ。この手じゃ何も出来ん」


 俺は拗ねているのか?

 自分でもよく分からんが、とにかく何のやる気も出ない。

 いつになったら復帰できるのか分からん。

 3ヶ月と言われたが、そこからリハビリをしないとならない。


「採取系の依頼なら出来るじゃろ」


「金になんねーよ」


「とにかく、お主は少し休めって事だ。短命種の癖に行き急ぎすぎだ」


「はぁ……」


 確かに今まで休みという休みはなかった気がする。

 スラムにいた頃は毎日食糧を探すために歩き回り、師匠に拾われた後はその人の為に命を懸けて戦っていた。

 その人が死んだ後は賞金稼ぎとしてずっと依頼をこなしている。


「確かに、長期の休みなんて経験ないな……」


「完治するまでは何もするなよ?セリファ、ガルの監視をしてくれ」


「はぁ!?」


 掃除道具を取り出していたセリファが大声を出す。


「何で私なのよ!」


「仲がいいからの、お主ら」


「なんで監視されなきゃならんのだ……」


「お主はほっとくと何をするか分からん」


 こいつら、怪我人の俺に対して言いたい放題だな……。

 俺はもう一口コッフェを啜った。

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