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【4章執筆中】グローリー・スタリオン ―亜人国家に流れ着いた俺は、平穏のために大陸の覇権を争う―  作者: 桐沢清玄
第3章 二人の侍女

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27話 無価値な優しさ、その果てに①

「いやあ、二人とも強かった! 久しぶりに楽しかったぜ、ありがとう!」


「だな、そこらの男よりよっぽど強え。……まあ、ワケありなんだろうけど」


 機嫌が良さそうなリョウヘイくんとノブユキくん。

 鍛錬を終えた私たちは、六人で雑談することにした。

 火照った体を日陰で冷ましながら、皮袋に入った水を回し飲み。


 この辺りは融通が利くみたいで、警備兵にお願いすると持ってきてくれた。

 ろくに動けない奴らの戦いを見たって、面白くないだろうしね。


「ええっと、みんなの名前を聞いて思ったんだけど……多分、神柱石で召喚されたんだよね? どうしてこんなとこにいるの?」


「あー、やっぱそこ気になっちゃいますよね? ……えーっと、なんでだっけ?」


「いやいやレンジ、それありえねえから!」


 首を傾げるレンジくんに対して、リョウヘイくんが突っ込む。

 何か、悪いことをした──ってわけでもなさそうだけど。


「ケイタ、教えてやれ。俺たちがどうしてここにいるかってさ」


「……俺はただ、みんなに誘われただけで……」


 ノブユキくんに背中を叩かれたケイタくんと、一瞬だけ目が合った。

 そっぽを向いたケイタくんは、そのまま黙ってしまった。


「んじゃ、俺から言うわ。……まあ単純に強くなりたかったのと、調子乗ってる知り合いをいつかシメに行ってやろうと思って」


「そうそう。あいつ、すっかりでかい顔するようになったみたいだからな」


「ああ、そうだっけか! ソウマかあ……今ごろ、何やってんだろ」


 ……やっぱ、知り合いかあ。

 でも、友達って感じじゃない。

 ソウマくん、この子たちとあんま仲良くなかったみたい。


「……俺たち、ここから出してもらえるのかな?」


「あん? なんだよケイタ、いきなりそんなこと言い出して。最初に偉いヤツと約束したし、大丈夫だって!」


 俯きながら独り言みたいに呟いた、ケイタくんの言葉。

 それを軽く笑い飛ばすリョウヘイくんの顔は、お気楽そのものだった。

 でも、本当にそう思ってるのか、自分に言い聞かせてるだけなのかは分からない。


(そこはまあ、抱えてるものの大きさが違うから仕方無いのかな)


 ソウマくんも、最初はただのひねくれた子供に見えた。

 でも、少し話してみれば違った。

 世の中を知らないまま、神柱石に召喚されてしまった。


 目の前のこの子たちも、それは同じ。

 この世界での始まりは一緒だ。

 

(それでも今のソウマくんは、家族も、仲間も、国も抱えて生きてる。そういうのが、何となく気に入らないのかな?)


 ……別に仲直りしろとは言わない。

 でもせめて、認めてあげてほしい。

 なーんて、余計なお世話か。


「んじゃ俺たち、お先に失礼させてもらいますんで!」


「だな。水浴びでもするか」


「お互い、頑張りましょうねー」


 立ち上がった三人に遅れて、ケイタくんも立ち上がろうとした。

 そんな彼に対して、私は声を掛けた。


「ねえねえ、ケイタくん! お姉さんたちと、もう少しお話しない?」


「……えっ?」


 なんで俺なんかにって顔で、動きを止めるケイタくん。

 残ってくれると、助かるんだけどなあ。


「あら、いいわね。ここじゃ薄汚い男どもばかりだし、私も若い子とお話したいわ」


 イライザが仕事用の完璧な笑顔で、手助けしてくれた。

 うん、やっぱ頼りになる。


「うはっ! いいじゃん、ケイタ! 頑張って口説いてみな!」


 リョウヘイくんたちはケイタくんをからかいながら、闘技場を出て行った。

 よし、これで──


「……なあ、おじさんも混ぜてくんねえか?」


 大斧さん登場。

 うん、邪魔。

 だけど、いつもお世話になってるからなあ。


「別にいいけど、他の人に喋ったりとかは無しで」


「おう、分かってるって! よしケイタ、俺の隣に座んな!」


「ええ……」


 困惑しながらも、ケイタくんは大斧さんの隣に座ってくれた。

 他の人に聞かれたくないように、お互いに距離を近づける。


「……私たちさ、ソウマくんの知り合いなんだよね」


「……それ、本当ですか?」


 目を見開いて、身を乗り出すケイタくん。

 あの三人とは違うんじゃないかって思ったけど、やっぱり。

 嬉しそうな顔してるし、仲良かったのかな?


「ええ、本当よ。私たちはエリノア王女殿下に仕えていて、少しの間だけソウマさんと生活していたの。マモルさんもね」


「へえ、マモルも一緒だったんですね」


「ただもんじゃねえと思ってたが、そういう事情とはねえ。……いや、だとしてもだ。あんたら、なんでこんなとこにいる?」


「それはまあ……騙されたんだって。ちょっとした用でこの国に来たら、悪い貴族に薬を飲まされてさ。目が覚めたら、ここにいたって感じ」


 大斧さんとケイタくんは顔を見合わせた後、気の毒そうな視線を私たちに向けた。

 ──よし。これで目的は達成。


 しばらく話しているうちに、いくつか分かったことがある。

 闘技場で実況をしてるジュスティーノは、元は剣奴側の人間だったらしい。

 借金のカタでここに連れてこられた貴族で、ろくに戦えもしなかったけど、ああやって場を盛り上げる役に回って今の地位に収まったとか。


 リョウヘイくんたちはかなり自由で、娼館から来た女の人もあてがわれているらしい。

 でも、そういう場所にケイタくんだけは行ってない。

 あの四人が他の剣奴たちみたいに染まりきってないのは、その辺りも影響してそう。


 ……うーん、大した情報じゃないかも。

 ケイタくんを見送って、今後の事を考える。


(あの四人とは、戦いたくないなあ。っていうか、勝てない)


 手を抜かれているのは、明らかだった。

 神能と人能で強化された身体能力。

 大斧さんでも、まともにやり合えば厳しいかもしれない。


「しっかしまあ、あんたもえぐいことするねえ」


「……こっちだって、必死だから。悪い?」


「いーや、別に? ……ま、狙うならケイタだよな」


「……? アルマ、どういう事?」


 意図してやった私と、そうじゃなかったイライザ。

 それでいい。こういうやり方は、イライザには向いてない。

 だったら、私がやる。


(同情を買って、戦う時に少しでも腕が鈍れば御の字。四人よりは三人の方がいい)


 頭の中で、ケイタくんを殺す方法を考える。

 ──最低だな、私って。


「俺は正直、あんたみたいな奴は嫌いじゃないぜ。普通はここに来ちまったら、とっとと諦めちまうのが殆どだからな」


「はいはい。慰めにもなってないし」


「……それじゃ、慰めにもう一つ情報をやろう。今日はあんたら、あの四人と組んで戦うってよ。近くでしっかり動きを見とけ。普段は三戦だが、今日は二戦。奴隷の売り買いが目玉だな」


 それはいい情報かもしれない。

 事前に知らされるより、前もってどの動きに注目するか考えておける。


「……ありがと、大斧さん」


 イライザと一緒に、頭を下げた。

 にやりと笑った大斧さんは立ち上がって、闘技場から出て行った。


 あの四人が味方なら、今日も生き残れる可能性は高い。

 さっきまで殺し方を考えていたのに、今はとても頼もしく思えた。


 ……はあ。

 やっぱ性格悪いなあ、私。

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