表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【更新日は月・水・金・日】グローリー・スタリオン ―亜人国家に流れ着いた俺は、平穏のために大陸の覇権を争う―  作者: 桐沢清玄
第3章 二人の侍女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/96

25話 白百合亭①

 ……太陽が黄色に見える。眠い。

 アルマとイライザの情報は手に入れたし、エリオドロ教皇との接点も出来た。

 今の所、上手くいってる。


 たっぷり睡眠を取り、軽やかな足取りのロメオ。

 俺とマリカはゲームに出てくるゾンビのように、のろのろと歩いていた。

 一度、変装道具に不備が出ていないか確認したかった。

 朝の日差しを浴びながら、三人で劇団のテントに向かう途中だ。


「二人とも、大丈夫ですか? ……少し、眠った方が良いと思うんですけど」


「ふああ~……。誰かさんがお楽しみの間、アタシは部屋の外で警備させられてたからねえ」


「悪かったよ、《《ジェナ》》。でも、大事な情報は手に入ったからさ」


「はいはい。よかったですね~、《《クリフ》》さん」


 クリフとジェナ。

 それが、この国で俺達が名乗っている表向きの名前だ。

 適当にじゃれ合いながら、目的地に到着。


 座長が寝泊まりしているテントの前で、ロメオが声を掛けた。


「おーい、ニコレッタ! 今、時間あるかい?」


 もぞもぞと、テントの中で動く気配がする。

 そしてお目当ての人物は、寝間着姿のまま姿を現した。


「……なんですか、旦那。昨日、遅くまで団員と飲んでたせいで眠いんですけど?」


「おはよう。変装道具に問題が無いか、確認して欲しいってさ」


「ああー、そういう話ですか。……どうぞ、お二人とも」


 意外に快適な、ニコレッタのテントの中。

 胡座をかいて座る俺達の周りを、忙しなく動き回る彼女。

 目が覚めてきたのか、お喋りに付き合いながら、されるがままになっていた。


「うん、問題なし。ソウ……じゃなかった、クリフさん! 付け髭に使う塗り薬、使い過ぎとかは?」


「ああ、大丈夫だと思う」


 腰の小さい鞄の中から小瓶を取り出し、残量をニコレッタに見せた。

 彼女は満足そうに頷く。


 別に貴重な薬という訳じゃないらしいが、また貰いに来るのも面倒だ。

 今ある分で、何とか間に合わせたい。


「ジェナさんに関しては……強いて言うなら、付けっぱなしだと臭くなるから気を付けて下さいねって感じかな!」


「分かったー。女の子が臭いとか、イヤだもんね」


「助かったよ、ニコレッタ。んじゃ、俺達はこのまま出かけてくる」


「……なんかお二人とも、おねむな感じっぽいですけど。でもワケありっぽいからなあ。私が何か言うのも野暮ってもんですよね。……ただねえ、クリフさん」


 ニコレッタは簡易ベッドの近くにある小物入れを漁り、俺に瓶を渡してきた。

 これは多分、香水だと思う。


「すっ…………ごい女臭いというか、生臭いです、あなた! とりあえず、それ使って下さい。使い方、分かります?」


「分からん。教えてくれ」


「もう、しょうがないなあ……。一応、匂いは控えめのやつなんで」


 香水をたっぷり使い、匂いの方は解決。

 テントから出た俺とマリカは、ロメオを探した。

 他の劇団員と雑談中だったらしく、彼の周りには人が集まっていた。


 話の腰を折るのも悪いが、報連相は大事だ。

 設定としては護衛役。それなりの態度で振る舞う。


「それじゃあ、ロメオ様。俺達はちょっと、出かけてきますので」


「うん、分かった。宿までの帰りは劇団員に送ってもらうから、心配しないでくれ」


 ニコレッタ以外の劇団員は、俺とマリカの正体を知らない。

 ロメオと別れ、目的地の白百合亭に向かう。

 入国初日に場所は調べてあるので、特に迷ったりはしなかった。




「……あそこか」


「……うん。酒場だし、この時間は閉まってるみたいだね」


 白百合が描かれた看板。

 街外れの酒場であるその店は、静かな空気に包まれていた。

 一度、店を素通りしてから物陰に隠れる。


 店の入り口脇にある花壇を、一人の老人が手入れしていた。

 男だ。年は60代くらいに見える。


「……ちょっと、《感応》使ってみるね」


「……任せた」


 マリカの反応に注目していると、彼女は目を丸くした。

 どうやら、当たりらしい。


「うーん。……ひとまずアタシだけで行って、話しかけてみようかな」


「……大丈夫か?」


「まあ……多分。エリノア王女の配下に聞いて、ここに来たよって言ってみる。あと、あの死んじゃった子の見た目とかも……情報として必要かな?」


「そうだな……。あいつ結局、名乗らなかったから」


「おーけー。行ってくるぜい」


 マリカの背中を見送りつつ、俺自身は周囲に動きが無いか気を配る。

 しばらくすると帰ってきた彼女に手招きされたので、二人で老人の元へ。


「先ほど、そちらの女性から事情を伺いました。……スタリオン卿で間違いありませんか?」


「そうだ。ここじゃクリフって名乗ってるが」


「アタシはマリカ。こっちだとジェナだよ」


 俺を見る老人の顔に、一瞬だけ驚きが走り、その後すぐ安堵に変わった。

 老人は腰の鍵束から一本選び、手慣れた様子で店のドアを開ける。


「さあ、お二方。まずは中へ。落ち着いて話が出来る場所が必要でしょう」


 カウンターの椅子に座ると、透明なグラスに注がれた水を出された。

 底には薄切りのレモンが沈んでいる。

 どうするか迷っていると、マリカがごく普通に口を付けた。


「だーいじょうぶだって、ソウちゃん」


「……ま、そうだな」


 微かな酸味が、喉を通り過ぎていった。

 老人も水を一口飲み、本題に入る。


「この度は我が国の近衛侍女救出に動いて頂き、誠に有り難う御座います。……あなた方の元へたった一人、辿り着いた少女──我々の間では、《揚羽》と呼ばれていました」


 ……《揚羽》か。

 本名も名乗らず、最後まで役目を果たして死んでいった。

 どんな生まれかは分からない。

 だが、エリノアに拾われてからは、あいつなりに誇りを持って働いてたんだろう。


「俺達の所へ来るまで、大変だったみたいだな。エリオドロ教皇に聞いたよ」


「事の顛末は、こちらでも把握しています。犠牲は大きかった。ですが……フェリクス将軍を討てた意義もまた、大きい」


「そこはマールにとっても、思いがけない朗報だ。お互いに最善を尽くし、アルマとイライザを救出しようじゃないか。……彼らへの手向けにもなる」


「ええ、そうですね。あなた方に、王女の影の一員を紹介させていただきます。私のような老いぼれは、ここから先は足手まといになるでしょうから」


「ああ、助かる。……お前達のような存在は、ノヴァリス国内にどの程度いる?」


「それなりには。とりあえず、近くの花屋などは仲間が経営しています。彼は王女の影の一員ですので、早速ここへ呼んできましょう」


 ……エリノアもあれでなかなか、腹黒いというかなんというか。

 まあそれでこそ、我が盟友だな。

 前途多難と思っていた今回の作戦だが、少しずつ希望が見えてきた。


 敵地のど真ん中。

 だが、やりようはある。

 アルマとイライザに再会した時、どんな第一声が相応しいか。

 今から考えとこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ