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【更新日は月・水・金・日】グローリー・スタリオン ―亜人国家に流れ着いた俺は、平穏のために大陸の覇権を争う―  作者: 桐沢清玄
第3章 二人の侍女

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24話 教皇エリオドロ、種馬と邂逅する③

「ふーん……あなたがマールの種馬さん? 結構、可愛い顔してるのね」


「ですよねえ、お姉様! ふふっ、ほーらぁ……そんな仏頂面、しないで……?」


「……」


 スタリオン卿との初対面を終え、共に夕食を済ませた。

 ロメオは客人用の部屋へ泊まらせた。

 ここは私の寝室。

 外にはラモンとルシアナ、そしてマリカと名乗った小娘が控えている。


「さあ、どうしたスタリオンよ。お主の種馬としての資質──いや。大陸に変革をもたらす者として、その奸雄ぶりを儂に見せるのだ」


「……あの、猊下。本当に……裏闘技場の場所を教えて下さるんですよね? この二人を、あなたの目の前で抱けば」


「うむ! 儂は教皇。そのくらいの情報、耳に入っていて当然であろう。ささ、早く始めよ。ナタリア、デボラ。たっぷり楽しませてやれ」


 どこか落ち着かない顔のスタリオン。

 なんだ、意外に奥手なのか?


「……もしかして、複数は始めてかしら?」


 ハーレムの最古参であるナタリア。

 啄むような口づけを頬にしながら、年下の青年に優しく囁いている。

 まずは雰囲気作りから。流石の手腕よ。


「えー、そうなのお? ……私とナタリアお姉様が、始めてなんだあ」


 にやにやと笑みを浮かべるデボラ。

 ハーレム最年少の彼女は、スタリオンより年下だ。

 しかし、どちらが経験豊富なのかという話になった場合。

 デボラに軍配が上がるだろう。


 スタリオンはあっという間に寝間着を脱がされ、女二人に弄ばれていた。

 なんというか、こう……純朴な青年がいいようにされていて……実に倒錯的だな。

 ……い、いや! 私にそのような趣味は無い! 断じてな!


「えっ……うそっ、何これ! ふわあ……こんなに……なるんだあ……」


「まあ……凄い。これだとちょっと、お子様のデボラには大変かしらね? ふふっ」


「むっ……むううっ! なっ……なかなか、いいモノを持っておるではないか。……まあ、儂の方が立派だがな? その……少しだけ」


 昔は私も随分と女を喜ばせたものだが、今のそれはただの芋虫。

 女とベッドを共にしても、せいぜい慰めに乳を吸うぐらいだ。

 医者によると、肉体と精神の減退が理由らしい。


 私にあてがわれた、ハーレムの女達。

 今はもう、城に仕える無数の生臭坊主が相手になってしまっている。


(あのグレゴルの爺さんですら、元気に腰を振っているというのに。というかあの爺さん、絶倫過ぎるだろ……)


「ねえ、種馬さん。そろそろ……欲しいわ。お姉さんのこと、可愛がってくれる?」


「あー……まあ、もう少し準備しとこう」


「ひゃっ! ちょっ、あなた……っ!? ……そんなことまで……してくれるの?」


「お……おおー! こんなのあるんだあー!」


 なっ、なんだそれ。

 何も知らなそうな顔して、とんでもないことしてるな。


「おっ……お主……そんな技を、どこで?」


「ええと……私が生まれた世界では、性行為を題材にした娯楽が溢れているので。様々な作家が、儲けの為に多種多様な作品を生み出しています」


「ん……んんっ……。やるじゃない、あなた。でも、ここからは私の番よ」


「へへー。私も脱いじゃおっと!」


 二人はネグリジェを脱ぎ捨てた。

 長身で豊満なのがナタリア、小柄で華奢なデボラ。

 しっかりと体型の維持に務めているようで、並の男ならすぐに飛び付くだろう。


 スタリオンの上に跨がり、ナタリアの反撃が始まった。

 だが……あの顔は……。

 年上という立場も忘れ、快楽を貪るただの女がそこにいた。


「ねえ……私もぉ……」


 デボラはスタリオンの唇を貪り始めた。

 まるで私など最初からいないかのように、三人は快楽の世界に浸っている。

 たっ……たまらんっ!! 体が燃えるようだ!


「……エミリオ! あなた、それ……!」


 視線に気付いたのか、ナタリアはふとこちらを向き、私の下半身を指差した。

 寝間着姿のまま椅子に腰掛けていたが、下腹部が盛り上がっていた。

 な、なんとっ……このようになるのは、いつ以来だろうか!


 こうしてはいられない。

 いそいそと寝間着を脱いだ私は、ベッドに上がった。


「デボラ、儂の相手をせよ! 久し振りに、出来そうなのだ!」


「うんっ! ずっとエミリオちゃんと出来なかったから、寂しかったよ……?」


 デボラはうっすらと涙を流しながら、私を受け入れてくれた。

 多分、私も泣いているだろう。


 この行為の意味を、ずっと分かりかねていた。

 快楽──だけではないのだな。

 感謝するぞ、スタリオンよ。




 晴れやかな気持ちで、朝を迎えた。

 私とスタリオンは、自室のバルコニーから街を眺めていた。

 ロメオの護衛に戻ったスタリオンの顔は、付け髭に覆われている。


 朝まで付き合ってもらった、ナタリアとデボラ。

 寝室でそのまま、二人仲良く眠っている。

 

「……いい街並みであろう? まあ、見た目だけは整っておる。宗教国家として国が一新されてから、ノヴァリスは強い国となった。王族は形だけ残り、質素な暮らしをさせられているが」


「その辺りは確か、パルティーヤの台頭が影響していると──いくつかの書物で、読んだ事があります」


「良く勉強しておるな。……荒れ地から復興したパルティーヤに対し、当時のノヴァリス王国は焦った。国を強くするには金が要る。だが税には限度がある。ならばどうするか? ……祈りに値札を付ければ良いと、彼らは考えた」


「神柱石に宿る“柱神はしらがみ”を奉る──それがノヴァリス教。神の怒りに触れたとして、神柱石を失ったマールとパルティーヤの地は赦しを求めている。……経典には目を通しましたが、神の教えというより、国の都合が透けて見える内容でした」


 スタリオンの言葉に頷く。

 柱神──そんなものは存在しない。

 神柱石の召喚は、ただの現象に過ぎないというのが大昔からの定説だ。


 こじつけ、でたらめ、嘘だらけ。

 虚飾という無数の砂粒の上に出来上がったのが、このノヴァリス神聖王国。

 数多の血と涙を糧とし、今も膨れ上がっている。


「……スタリオンよ、約束の情報だ。──ローザ・カルミナ館。そこの地下に、裏闘技場はある。十分に仲間と情報を集めよ。失敗は許されん」


「感謝します、猊下。私はこれから一刻も早く、リヒトブリックの協力者と合流しようと思います。……それでは、失礼します」


 ベランダを後にする、新時代の若き奸雄。

 そんな彼に、思わず声を掛けてしまった。


「お主の望みは何だ? 既にお主は家族を持ち、仲間がいて、爵位もある。これ以上、欲しい物があるのか?」


 彼は振り返り、答えた。


「周りの者達の安寧。今の私は、これだけに御座います」


 もう一度礼をしてから、彼は出て行った。

 ソファに座り、息を吐いた。


(スタリオンに会って、エリノア王女の本質も理解する事が出来た。……そう、“器”だ。あの二人は入れ物なのだ)


 彼らはこの大陸に──世界に対して、敵意や害意は持たない。

 周りの人間の善意や悪意を汲み取り、可能な限り最善の選択をする。

 行き着く先は、より良い世界。


 偉大な功績を残し、歴史に大きな名を残すだろう。


 だがその過程で、多くの血は流れる。

 彼らはそれすらも受け入れ、実行する事が出来る。


(グウィネスは戦うだろう、ノヴァリスを巻き込んで。……はあ、やれやれ。大変な時代に生まれてしまったな)


 老いた私は、何をすべきか。

 困難な問題だ。生憎、時間はまだある。


 欲に染まらぬ、無辜な民だけは救いたい。

 漠然とだが──そんな願いが、心の内にある事だけは分かった。

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