表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【更新日は月・水・金・日】グローリー・スタリオン ―亜人国家に流れ着いた俺は、平穏のために大陸の覇権を争う―  作者: 桐沢清玄
第3章 二人の侍女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/95

23話 交換条件②

 身だしなみを整え、落ち着いた雰囲気の格好で現れたプリシラ。

 事情をかいつまんで説明すると、彼女はすんなり受け入れてくれた。


「……で、私の将来の旦那さんは困ってると。ロメオ、あんたはしっかり協力しなさい。いいわね?」


「もちろん、そのつもりだよ。……姉貴の性格だと、もう少し抵抗すると思ってた」


「こーんな美味しい話、見逃すはずないでしょ! あのクソ親父から、ようやく離れられるんだからさ。……でもスタリオン卿は……いいの? 自分でいうのもアレだけど私……こんなだし」


 プリシラは平然とした様子で、服の上から自分の腹肉を両手でつまんでみせた。

 マリカがごほごほと咳き込む。

 そんなマリカを肘で小突いてから、正直な気持ちを伝える。


「君さえ良ければ結婚の話、このまま進めさせて欲しい。書類仕事なんかは手伝ってもらう事になるけど、ちゃんと自由な時間は用意する。それに──」


 一度、言葉を切る。

 繊細な話だ。怒らないといいが……。


「俺の友達に、料理に詳しい奴がいる。もし君が自分の体型を気にしてるなら、そいつに健康志向の飯を作らせる。それなら少しずつ、痩せられるはずだ」


「……跡目争いに負けてさ。気付いたら、食べてばっかになってたんだよね。……私、ちゃんと痩せられるかな?」


「うちの屋敷は女も多いし、色々と協力してくれると思う」


「そっか。……じゃあ、頑張ってみる」


 姉の背中に手を添えるロメオは、優しい眼差しをしていた。

 俺の視線に気付いたロメオは、気恥ずかしそうに頭を掻いた。


「結婚の話は、このくらいにしよう。ノヴァリスに潜入する手段として、ロメオの劇団の力を借りたい。それは可能か?」


「劇団の方は、すぐにでも動かせますよ。……具体的に、いつパルティーヤを出国する予定ですか?」


「明日だ。マール国内に潜伏していたノヴァリスの間者が、俺達に追いつく前に」


「だねー。怪しまれないように、ある程度出国は遅らせるだろうけど……その分、かなり無茶しながらパルティーヤに来るんじゃないかな?」


 俺とマリカが持ってる人能、《感応》。

 強敵や怪しい人物を探すのに有効な能力だ。

 ただ、欠点もある。


(……戦闘能力を持たなかったり、ただ命令を受けただけの一般人に対しては、《感応》は効果が薄い。あらゆる可能性を考えると、素早い行動が最優先だ)


「ああ、そういうのも考えないといけないのね。……じゃあ、二人と背格好が似た人間を用意しといたら? 変装させて、たまに窓際に立ったりして」


「……時間稼ぎも含めて、そこまでやった方がいいかもしれないな」


「僕と一緒にソウマさん、マリカさんは変装してノヴァリスに行くけど、その間も二人に似せた人物を別邸に置いておく……?」


「つまり外から見ると──ロメオが仕事で別邸を空けている間も、俺とマリカは休暇か何かで留まっている──ように見えるはずだ」


 パルティーヤに潜伏するノヴァリスの間者が既に存在するなら、この小細工はあまり意味が無い。

 俺達がダランテ家に入る現場を、見られた可能性が高いからだ。


 ただ、その辺りが未知数であるなら、どちらにせよやっておいた方がいい。

 今回の救出作戦を成功させる為に──そして、俺とマリカの生存確率を上げる為にも。


「なんだか、推理小説っぽい流れですね! 今後の流れも決まったことですし、使いを出して劇団の座長を呼んできます。彼女は、化粧や変装が得意なので」


「助かる。変装姿を確認したら、俺とマリカで街に出かけてもいいか? ちょっと、会っときたい奴がいるんだ」


「ええ、構いませんよ。……ご友人ですか?」


「そんな感じだ」


 朝倉匡仁あさくらまさひと

 《詐欺師》の神能を持つ、パルティーヤ評議会の一員になったクラスメイト。

 折角だし、顔見せに行くか。




 クラスメイトの屋敷を訪ね、俺とマリカは豪勢な夕食を食べていた。

 屋敷の外見は当然、内装や調度品もいささか下品。

 当の本人は、俺達の視線を気にすることなく振る舞っていた。


「よく来てくれたなあ、二人とも! さあ遠慮せず、どんどん食べて飲んでくれよ」


「悪いなアサクラ、急に押しかけて。美味いよ、どれも」


「ほえ、ほいひー! ふぉうひゃんも、はえへはえへ」


 使用人も下げて、三人の食事。

 久し振りに会った俺達は、それぞれの近況を報告し合った。

 これからパルティーヤに行ってくる、とは言えないが。


「そういえばソウマ、前に会った時は髭生やしてたよな? 気分転換ってやつ? マリカも結構、ばっさり髪切ったなあ」


「あー……まあ、そんな感じだな」


「そうそう! イメチェンだねー!」


 付け髭を付ける為、邪魔な髭は剃った。

 マリカは髪色の違うカツラを被るので、長かった髪をボブカットに。

 このくらいは、やらないとな。


「へえ、そうかあ。……ところで、二人がここに来た理由は? ……金か!? 金の動く話か!?」


 人が変わったかのような態度で、こちらの様子を窺うアサクラ。

 ……ああ。やっぱこいつ、神能の力に溺れてるな。

 今まで通り、付かず離れずの関係でいいか。


「いや、ちょっとした休暇だよ。しばらく、ダランテ家の別邸で過ごす予定だ」


「ちぇっ! なーんだ、金の話じゃないのかあ。……もし儲け話があったら、俺にも一枚噛ませてくれよな! 俺たち、友達だろ?」


「勿論さ。俺達、クラスメイトだしな」


 アサクラの濁った目に、俺はどう映っているのか。

 そんな事を考えながら、彼の屋敷を後にした。

 

 次の日。

 ロメオの護衛に扮した俺とマリカは、劇団と共にパルティーヤを出た。

 賑やかな劇団員に囲まれ、二日の旅路。


 ダランテ家の威光は存分に発揮され、あっさりと入国は叶った。

 まずは第一関門、突破だな。

 

 ──『白百合亭』。

 あの女が、最後に残した手がかり。

 そこに行けば、リヒトブリックの協力者に会えるはずだ。

 とにかく仲間。そして情報。

 焦るな。迅速に。冷静に。


(ロメオから、ノヴァリスの体制に不満を持つ有力者を紹介すると言われたが……どんな相手だろう)


 美しいサンクト・ノヴァリスの街並みに圧倒されながら、テントの設営を手伝う。

 ……芸の一つでも、覚えとくんだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ