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【更新日は月・水・金・日】グローリー・スタリオン ―亜人国家に流れ着いた俺は、平穏のために大陸の覇権を争う―  作者: 桐沢清玄
第3章 二人の侍女

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23話 交換条件①

 パルティーヤ共和国・首都ヴァレンツァ。

 いい馬を飛ばして、宿や村で休みながら四日。

 なんだかんだで、パルティーヤを訪れたのは一年ぶりくらいだ。


 街の浮ついた雰囲気に惑わされることなく、ダランテ家の別邸を尋ねた。

 応接室で、友人と久し振りに向かい合う。

 こっちは急ぎの話だが、何事にも順序がある。


「しかしまあ……こうして会うのも半年ぶりですよね? ソウマさん、ますます風格が出てきた」


「そうか? そういうロメオも、いよいよ父親から家督を継ぐって話じゃないか。評議会、頑張れよ」


「いやあ……僕は、商売が好きなだけだからなあ。それに、まだ評議会に入れると決まったわけじゃありませんから」


「投票で決まるんだろ? 特に何も無ければ、繰り上がりみたいなもんだろ」


 政治の話には興味が無いらしい。

 マリカは隣で紅茶と茶菓子に夢中だ。


 ノヴァリスに着いたら、忙しくなる。

 今くらいは好きにさせてやるか。


「それで、本日はどんな要件で? 直接ここを尋ねるってことは、それなりに重要なお話……ですよね?」


 こちらが話を切り出す前に、先手を取られてしまった。

 交流はあるが、相手は商売人。

 差し出す土産によっては、断られてしまうだろうな。


「……俺とマリカを、ノヴァリスに入国させて欲しい。顔を知られているだろうから、変装して行くつもりだ」


 他国の機密もある。詳細は伏せた。

 ロメオは目を丸くしながら、顎に手を添えた。


「……本気ですか? あなたが、あの国に行くというのは……」


 彼は押し黙り、俺を見つめた。

 裏がある話だというのは、察してるはず。

 全ては話せない。それでも、筋は通したかった。


「ソウマさん。あなたは僕に、何を差し出せますか? それ次第です」


「……俺が提案するのは、街道の整備。マールからパルティーヤの間だ。完成したら、ダランテ街道と名付けよう。こっちの懐事情もあるから、時間は必要だが」


「なるほど。我が家の名声も上がりますし、二国間の経済も活性化する。私だけじゃなく、ソウマさんにも利益がある──いい話だ」


 鋭い視線を向けるロメオは、商売人の顔をしていた。

 だが、それはやがて引っ込んだ。


「……ソウマさん、こういうのはどうです? 街道に関しては、僕が人もお金も集めて、完成させましょう。その代わり──僕の姉と、結婚して欲しい」


「ぶふっ! ……ごほっ、ごほっ……!」


 俺の隣で、マリカが紅茶を吹き出した。


「汚いぞ、マリカ」


「……けほっ、けほっ……いやいや、いきなり結婚の話とか驚くっしょ!? ソウちゃん、アタシともまだ結婚してないし! そんな話、認めるわけ──」


「ロメオ、その話乗った」


「本当ですか!? ソウマさん、ありがとう!」


「はあああああ!?」


 ぎゃあぎゃあと騒ぐマリカを落ち着かせてから、ロメオの話を聞いた。

 家の話は、前から耳に入っていた。


「僕の姉は、とても優秀でした。ですが、跡目争いに僕が勝ってしまってからは、ずっと部屋に籠もりっきりで……。姉には、自由に生きて欲しいと思っています」


「そういう理由なら、俺以外の人間と結婚させるのがいいんじゃないか?」


「……まあ、それについては……ちょっとだけ、話してみます? この別邸の、二階に住んでいるので」


「へえ、そうなのか。こういうのは本人の気持ちも大事だろうし、話を聞いておきたいな」


「分かりました。じゃあ、ちょっと待っててくださいね」


 ロメオが離席して、マリカと二人きりになった。

 横から視線を感じるが、無視しとこう。

 

 それにしても……結婚、か。

 俺は既にグラーネ、ターニャと結婚している。

 多分、二人から反対意見は出ないだろう。

 問題は、ロメオの姉がマールに上手く馴染めるかだ。


(……まだ話も決まってないし、今から考えても仕方無いか)


 手持ち無沙汰に紅茶で唇を湿らせていると、部屋の外から足音が聞こえてきた。

 姿勢を正し、マリカに呼び掛ける。


「……いいか? 余計な事を言うなよ」


「……はーい」


 応接室のドアを開けたロメオが、意地の悪そうな顔で入ってきた。


「ほら、姉貴。紅茶が冷めちゃうからさ」


「はいはい。それで? 珍しいお茶菓子……ってのは……」


 ぼさぼさの、長い金髪。

 青緑の目。弟と一緒だ。


 白いネグリジェを纏った、小柄で大らかな体型。

 そんな彼女が──プリシラ・ダランテ。


 俺と目が合った彼女。

 両手を頬に付け、口を開けた。


「……うぎゃああああああ!!」


「おっと! ここは通さないよ、姉貴」


「このっ! どきなさいっ! バカ弟っ!」


 ドアの前に立ち塞がる弟に対し、ぽかぽかと腕を振り回しながら暴れる姉。

 ……なんか、子供の喧嘩みたいだな。

 まあ商人の家だし、こんなもんか。


「仲が良いのは結構だが、時間が惜しい。二人とも、座ってくれ」


「諦めなよ、姉貴。ソウマさん、いい人だからさ。嫁ぎ先としてはいいと思うよ?」


「とっ……嫁ぎ先ぃ!? あんた、勝手に……とりあえず、着替えてくるから」


「逃げようとしても、無駄だからね? 使用人に言って、見張らせる」


「……ちっ」


 肩を怒らせながら出て行くプリシラ。

 うん。猫被ってるよりは、やりやすい。


 おまけに、同い年だとか。

 グラーネもターニャも俺より年上だから、意外にいい相手かもしれない。

 ……その辺りはまあ、プリシラ次第だが。 

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