表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【4章執筆中】グローリー・スタリオン ―亜人国家に流れ着いた俺は、平穏のために大陸の覇権を争う―  作者: 桐沢清玄
第3章 二人の侍女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/127

32話 悪因悪果と、夜明けの脱出①

「それで、アマンシオさんだっけ。どう? 痛い? 反省した?」


「……うう……あ……」


 ヴァルゲス邸の大広間、その壁。

 二本の槍ではりつけにされた屋敷の主は、なんだかぐったりしていた。

 まあ痛いし、当たり前だよね。うん。


 一応、《隼》くんに押さえつけてもらって、左右の肩口を狙った。

 アマンシオの足元には血だまりが出来ちゃってる。

 このままほっといても死にそう。


「……お前たちは……何が狙いだ……? 屋敷の人間を……何人殺した……?」


「あなたとドロテオって人以外、全員かな。ここから王都、結構近いでしょ? 口封じっていうか……悪いとは思うけど、時間を稼ぐ必要があるからさ」


「……目的は……ローザ・カルミナ館か……ふふっ、馬鹿なことを……私が死んでも、あの場所は続いていく……これから先も……ずっと……」


 アタシたちを、正義の味方か何かだと思ってるのかな。

 それはちょっと訂正しておこう。


「別にいいんじゃない? アタシたち、アルマさんとイライザさんを助けに来ただけだから。お好きにどうぞって感じかな」


 アマンシオは顔を上げて、目を見開いている。

 信じられないような物を見るような、そんな顔だった。


「……馬鹿な。……そんな……理由で……? お前、まさか……マール連邦の……」


「そういうこと。エリノア王女の周りに手を出したら、ソウマ・スタリオンが動く。この後はソウちゃんと合流して、ノヴァリスを脱出する予定なのです!」


 アマンシオの前まで椅子を引っ張って、腰を下ろした。

 ……あんまり、ここで時間使ってる場合じゃないよね。

 《隼》くん、まだ時間かかるかなあ。


「一つ……聞かせてくれ。……お前は……スタリオン卿に意見出来る立場なのか?」


「んー? まあ……この世界に、一緒に召喚されてきたからね。普通に色々、言えるけど」


「そっ……そうか! なら、頼みがある! ……私を亡命させてくれと、お前からスタリオン卿に頼んでくれないか? 借りは返す、絶対に!」


 今までの弱り具合はどこにいったのか、アマンシオの目に光が戻った。

 ──そうきたかあ。


「でも、あなたを殺してこいって言われてきたからなー」


「待て、待ってくれ……そうだ! 証拠がある! ノヴァリスの貴族や神官どもが長年、亜人や人間の人身売買に関わっていた証拠だ! 名前も、取引の記録も、全部ある! 私を生かせば、それをお前たちに渡してやろう!」


「おっ、いいねえ! やっぱり証拠、あるんだ」


「そうだ、ある! ……さあ、この槍を抜いて、手当てしてくれ。案内する」


 こういう場合、殺す前に利用出来るだけ利用しろと、ソウちゃんに言われている。

 アタシは椅子から立ち上がり、槍に手を伸ばす。

 そんな絶妙なタイミングで、《隼》くんが大広間に入ってきた。


「おい、こっちの仕事は終わったぞ。……んだよ、まだ殺してねえのか。そいつ」


「うん。なんか、人身売買の証拠を渡すから亡命させろって」


「ははっ、みっともなく足掻くじゃねえか。……残念だが、お前の家来が吐いちまったぜ? 証拠の在処ってやつをな」


「……申し訳ありません……アマンシオ様……」


 《隼》くんが引きずるように連れてきたドロテオとかいう人は、顔のあちこちが腫れていた。

 よく見ると、指も何本か折られてる。痛そー。


「ドロテオっ!! お前、私を売ったのか!? この……恩知らずが!! 絶対に許さん! 命にしがみつく薄汚い老いぼれめ!!!!」 


 あーらら。

 アマンシオくん、ぶちギレてるう。

 でもそうなっちゃうと、もう生かしておく必要なしだね。


 大広間の壁に飾ってあった、悪趣味なデザインの斧。

 あらかじめテーブルに突き立てておいたそれを、アタシは引き抜いた。


「ねえー、《隼》くん。なんか、ハンカチみたいなの持ってる?」


「んなもん、あるわけねえだろ。……お前、持ってるか?」


「こっ……こちらに」


「いいじゃん、それ。ちょっと借りるね」


 ドロテオさんの執事服の胸ポケットに、丁度いい感じのハンカチが入っていた。

 アタシはそれを受け取ってから、アマンシオの前に立った。


「じゃ、そーいうことなんで! あなた、もう死んでいいよ」


「なっ!! おい、待て──むぐぅっ!!」


「よーーいっ……しょお!」


 アマンシオの口にハンカチを詰め込んでから──お腹に斧を叩き込んだ。

 野球のバットを振るみたいに。


「ん゛ん゛ん゛ーーーーーーーッ!!!! ん゛ん゛ん゛ーーーーーーーッ!!!!」

 

 ──人間って、こんなに目が開くんだ。

 身体をびくびくさせながら、暴れるアマンシオ。

 これでよしっと。


「じゃあその証拠ってやつ、アタシにも見せてよ」


「ああ、いいぜ。少し確認したら、さっさと外に運び出しちまおう」




 ヴァルゲス邸の一階、物置の奥にあった隠し部屋。

 そこには、木箱が積み上がっていた。

 数はえっと……10個かな。


 《隼》くんが開けた木箱の中身には、大量の書類が入っていた。

 虫除けらしい乾燥した香草と、多分……湿気を吸わせるための木炭も一緒に。

 木箱の隙間までろうか何かで塞がれていて、保存対策はしっかりしてるって感じ。

 確かに証拠は欲しいけど……これ、全部……?


「ほら、こいつを見てみな」


「うん」


 《隼》くんに渡された、数枚の書類。

 よく分からないけど、日付だけは分かった。

 ひゃ、100年前!? うわっ、こっちは150年前の書類だし!!


「……なんでこんなの、残してたんだろ? 見つかったらヤバいって、誰でも分かるじゃん」


「売り手や買い手に対して、実績を示すため。あとは、いざという時の脅しだろうな。名前が残ってりゃ、関わった奴らは簡単に裏切れねえ……ってとこだろ」


「でも、これ……100年以上前の書類もあるよ? アマンシオって人、そんな昔から生きてたわけじゃないよね?」


「こいつが始めた商売じゃねえってことさ。ローザ・カルミナ館を手に入れた時に、昔の帳簿までまとめて奪ったんじゃねえか?」


 商品カタログみたいな、そんな感じだったのかな。

 でも、これだけあれば証拠は十分だね。

 ノヴァリスのお偉いさんたち、何人くらい巻き込めるんだろ。


「これ、全部持って行こう。全部荷馬車に載せたら、ロメオさんがいる宿屋に行こっか」


「だな。……ちっ。こんなことになるならよお……あの老いぼれの指、折るんじゃなかったぜ」


「ま、しょうがないっしょ。……ちなみに、あのおじいちゃんはどうする?」


「それなんだが……じいさんは生かすことにした。手足を縛って、そこら辺に転がしとこうぜ」


 あれ、殺さないんだ。

 なんか理由とかあるのかな。


「見かけによらず、おじいちゃん子だったりする?」


「違えよ。何の手掛かりも残らなきゃ、ノヴァリス国内の人間まで疑われる。あのじいさんには、マールの人間に襲われたって証言してもらう。この国に潜伏してる仲間を守るためにな。……あんたのお友達には悪いが、じいさんの中じゃ俺はスタリオンの仲間ってことになってる」


「なるほどー! 《隼》くん、結構考えてるんだねえ」


「あんたみたいに強くねえから、代わりに頭使ってんだよ。それと一応、ここを出る前にアマンシオが死んだか確認するぞ」


「うん、了解」


 さ、喋ってないでお仕事お仕事。

 二人だと大変だなあ。

 後は、ソウちゃんの方だけど──ま、心配しなくても大丈夫か。

 アタシの惚れた男だしね。


 ……どうしよ。

 思い切って、帰る途中に告っちゃおうかな。 

 一緒にピンチを乗り越えて、仲も深まったしさ。


 ちゃんと二人で帰るまで、あと少しだけ頑張ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ