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【4章執筆中】グローリー・スタリオン ―亜人国家に流れ着いた俺は、平穏のために大陸の覇権を争う―  作者: 桐沢清玄
第3章 二人の侍女

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28話 奈落を眺める者①

 ──ごとごと、ごとごと。

 すっかり夜中だっていうのに、目的地を目指して荷馬車は走る。

 アタシは絶賛、無賃乗車の真っ最中。


 ソウちゃんたちと別れた後。

 まず、王都の西門を乗り越えて、西へ向かった。

 パルティーヤ共和国との国境近くにある村までね。


 《土竜》さんと《梟》さんに教えられた、協力者がいる場所。

 情報収集のために立ち寄ったんだけど、二日滞在した。

 その間、夜中に周囲の地形を調べたりして。


 定期的に荷馬車が出ているらしく、それに紛れた方が安全そうだったから。


 村から出発する、たっぷり荷物を積んだ荷馬車。

 その行き先が、アタシの目的地の一つって感じ。



 ローザ・カルミナ館がある大きな森の近くにある、貴族のお屋敷。

 確か、ええっとぉ……。


 腰の鞄から取り出した、小さな袋。

 中には布でくるんだ木炭。それと、一枚の羊皮紙を切って分けたやつ。

 メモしといて良かったー。


 ──アルバーニ。

 ──フィネスキ。

 ──グアルディ。


 羊皮紙を月明かりで照らしながら、しっかり確認。

 うん、ちゃんと書けてる。

 この辺りはアタシにいらない情報だけど、ソウちゃんとかは必要だろうからね。


 お屋敷で軽く情報収集してから、ローザ・カルミナ館のある森に忍び込もうかな。

 見張りがうろついてるらしいから、頑張らないと。




 荷馬車の後ろから、定期的に顔を出して現在地を確認。

 村を出発してから、今度は南へ。体感40分くらい?

 三軒の大きな屋敷が見えてきた。


 めっちゃ違和感!

 こんな寂れた場所に、密集して建てるのは変だよね。


(……そんじゃ、やっちゃいますか)


 馬車から飛び降りて、地面に伏せた。

 音なんか立てない。


 闇に紛れて参上。

 今夜はちょっと月が明るくて、潜入には不向き。

 でも、泣き言はノンノン。


 愛しのソウちゃんにお願いされちゃったし、成功させないと。

 そーっと地面を這いずりながら、屋敷を囲む壁になんとか近づけた。

 狙いを付けたのは、荷馬車が入っていった屋敷。

 荷物を下ろす作業があるだろうから、その時に何か聞けるかも。

 

 とりあえず《感応》を使って、周囲の人数を探る。

 ……すっごい多いじゃん。

 多分、お客さんとかが泊まってるのかな?


「よし、さっさと荷物を下ろしちまおう。……なんだよ、今日はあんた一人か?」


「へ、へい。いつもは息子を連れてくるんですが、今日はちょっと遠出してまして……」


「はあ? そんなの、誰か他の村の奴に手伝わせればいいじゃないか」


「……みんな、気味悪がってるんですよ。こんな場所に、食料やら何やら大量に運んで。どこに消えてるんだって」


「ま、それは知らない方がいいな。ちょっと他の使用人を呼んでくるから、先に運んどいてくれ」


「わかりやした」


 荷馬車のおじさんが作業を始めた。

 じゃあ、次は中に潜入。

 壁伝いに屋敷の裏側に回って、気配を確認。

 壁をよじ登って、近くの窓に。


(はい、開いてません! でもこんなの、アタシには楽勝なんだよねー)


 腰の鞄から取り出した、ピッキング用の小道具。

 窓と窓の隙間に差し入れて、こうすると~?


 ──かちり。


 そーっと窓を開けて、無事に潜入成功。

 また《感応》を使って、空き部屋を探してそこに滑り込んだ。

 息を整えてから、部屋を出て二階へ続く階段をかけ上った。


 貴族の屋敷には何度も忍び込んだから、なんとなく間取りの想像は出来る。

 次に入った部屋は、思った通り書斎だった。

 真っ暗だから、明かりが欲しい。

 カーテンを少し開けて、お月様の光で中を調べる。


 とりあえず、机の引き出しかな。

 上から順番に開けていくと、一番下に鍵がかかってた。

 小道具を使って手早く開けて、中を調べた。


 書類だらけで頭が痛くなりそうだった。

 領地の収支とか、使用人の名簿とか、どうでもいい書類ばっかり。

 一度、書類を全部引っ張り出してもう一度確認。

 空振りかなあ。


(いやいや、待てよー? 確か、こういう場所って……)


 引き出しの側面と底の間の隙間。

 目をこらしてみると、ある部分が削れていた。


 ほら、やっぱりね。

 その部分に短剣を差し込んで、くいっと。

 底が持ち上がって、一通の手紙が隠されていた。


 開封済みだし、早速読んでみる。

 ……これは、例の裏闘技場に関係する手紙っぽい!

 どれどれ、内容は──


(いやいや、ヤバいって! ……でもこれが、この世界ってことなんだろうなあ)


 手紙の差出人は、アマンシオ・ヴァルゲス。

 宛先は、ビアージョ・フィネスキ。この屋敷の主人。

 肝心の内容だけど、このアマンシオってやつがね?


 ──父親を殺して、当主の座を奪った。

 裏闘技場の運営権を奪いたいから、お前も協力しろ。

 上手くいったら、今まで以上に稼がせてやる──


 そういうこと、らしい。

 こんな手紙、どうして残してるんだろう。

 見つかったら、自分だって不利になるのに。


(……あー、だからか。いざとなったら、このアマンシオって人に脅されたんだって言うため?)


 アタシは少し迷ってから、その手紙を鞄に突っ込んだ。

 そして、引き出しにまた鍵をかけた。

 これでまあ、なんとか。


 ワンチャン、自分で隠した場所忘れたって勘違いしてくれる……かもしれない。

 他の屋敷も探りたいけど、今回は時間が勝負。

 つーわけで、お次は本命のローザ・カルミナ館。

 裏闘技場、だね。


 そーっと書斎から出てから、素早く一階に下りた。

 潜入に使った窓から屋敷の外に出て、鍵をかけておく。

 壁を乗り越えて、またまた《感応》を使った。


 ──周囲に人影無し。


 じゃあ、一気に森の近くまで走ろう。

 ま、元陸上部なんで。

 万年補欠だったけど、フォームは綺麗って言われてたよ。


 軽く体をほぐしてから走り始めて、少しずつスピードを上げていく。

 風の影響を受けたくなかったから、外套は無し。

 夜中に高速で走る人影は、ちょっとしたホラーかも。

 

 アタシの神能は《暗殺者》。隠密能力と身体能力が上がる。

 《身のこなし》、《短剣使い》、《感応》の人能も合わせれば、こういう仕事にはぴったりだ。


(……でも、ちょっと後悔してるんだよねー。アタシも《農耕》の人能、欲しかったなあ。虫歯になりにくいとか、お菓子いっぱい食べられるじゃん)


 ソウちゃんとかマモルくんとか、他のクラスメイトは《農耕》持ち。

 ふんだ、いいもん。

 このお仕事成功したら、褒めてもらえるし。


 ──おっと、いけないいけない。


 今は余計なこと考えずに、目の前の仕事に集中しないとだね!

 次の目的地を目指して、アタシはちょっぱやで草むらを走った。


 アルマさんと、イライザさんだっけ。

 実は昔、一度だけ見たことあったりして。


 エリノア王女のことが知りたくて、王宮に忍び込んでさ。

 お姫様も、侍女の人たちも可愛いし綺麗だったなあ。

 ……生きてるといいね、うん。 

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