クライブ モンバトを買う
スロリアゴールに来て、数日。
クライブはこの町で冒険者として活動するため、町の中を見て回っていた。
「まずは武器屋か」
冒険者として仕事をするなら、装備は重要だ。
武器屋に入ってみると、予想以上に品揃えがいい。
「……結構いい武器が揃ってるな」
辺境の町とは思えない。
続いて防具屋、魔道具屋、雑貨屋と見て回る。
どの店にも、それなり以上の商品が並んでいた。
「この辺のモンスターが強いからか?」
店員に聞いてみると、その通りらしい。
強いモンスターが多い。
だからこそ、冒険者も多くの素材を持ち帰る。
素材が集まれば、それを加工する職人も集まる。
そして店に並ぶ商品の質も上がっていく。
「なるほどな」
町そのものが、強いモンスターを相手にする冒険者を中心に回っている。
そんなことを考えながら店を見ていると、妙な商品が目に入った。
「……なんだこれ?」
棚に並んでいたのは、小さな魔道具だった。
「モンスターゲット・バトラー?」
「はい。通称モンバトです」
店員が説明する。
「最近、王都でも大人気のゲームですよ」
「ゲーム?」
クライブは手に取ってみる。
「金貨一枚……」
思わず値札を二度見した。
「高くないか?」
「そうですか?」
「平民なら十日は暮らせるぞ」
「ですが、かなり売れてますよ」
「そんなにか?」
王都で人気という話は聞いたことがある。
しかし、ゲームに金貨一枚。
クライブには少し理解しにくかった。
「一体、何ができるんだ?」
「モンスターのデータを集められます」
「モンスターのデータ?」
「はい。倒したモンスターの死体から魔力を吸収して、モンバト本体に記録するんです」
「ほう」
「そして記録したデータをカードにできます」
店員が見本のカードを取り出した。
「このカードに、モンスターの情報が記録されています」
「どんな情報だ?」
「モンスターのランク、HP、MP、スキル、魔法、生息地などですね」
「結構細かいな」
「さらに、そのカードを使えば、幻影魔法でモンスターを再現して戦わせることもできます」
「なるほど。ゲームだから戦わせるわけか」
「そういうことです」
クライブはカードを眺める。
確かに面白そうではある。
だが、冒険者として気になったのは別の部分だった。
「それより、このモンスター探索ってのは何だ?」
「そちらですか?」
「これ、モンスターを探せるんだろ?」
「はい。種類を指定すれば、その周辺にいるモンスターの種類や数、場所などを確認できます」
「…………」
クライブは店員を見る。
「どう考えても、そっちのほうがヤバいだろ!」
「え?」
「モンスターを探さなくていいんだろ? どこにいるのか分かるんだろ?」
「はい」
「冒険者からしたら、そっちのほうがよっぽど重要じゃないか!」
店員は少し困ったように笑った。
「開発したニコラ様は、探索機能については『おまけ』と仰ってましたけど」
「おまけ……?」
クライブは頭を抱えた。
この町の人間は、どうも感覚がおかしいらしい。
「……これ、買う」
「ありがとうございます」
「ゲームには興味があるわけじゃない。探索機能が欲しいんだ」
金貨一枚を支払う。
こうしてクライブは、モンスターゲット・バトラー。
通称モンバトを手に入れた。
「さて……」
買ったからには、もう少し詳しく知りたい。
クライブは店員にいくつか質問してみることにした。
「倒したモンスターのデータは、何体でも記録できるのか?」
「はい。同じ種類のモンスターでも、何体でも記録できますよ」
「カードも?」
「はい。必要なら同じモンスターのカードを何枚でも作れます」
「なるほどな」
それなら、ゴブリンなんかは大量に集められる。
そこら中にいるモンスターだ。
「それなら、データを売ることもできるのか?」
「もちろんです」
「いくらになる?」
「それはモンスターによりますね」
「やっぱりそうか」
クライブは少し考えた。
素材なら分かる。
武器や防具の材料になる。
肉なら食料にもなる。
だが、これはゲームのカードだ。
戦闘で使えるわけでもない。
「……こんなもの、本当に買ってくれるのか?」
半ば興味本位だった。
それなら一度、実際にデータ屋へ持っていってみるのも悪くない。
「データ屋ってのは、どこにある?」
「商業ギルドがやっている店がありますよ。それに今超レアの新ダンジョン一九階層のモンスターを倒して攻略を終わらせた銀翼の黎明ってSクラスパーティーもこの町に住んでますね。」
「なるほど。この町に来た新参だし挨拶に顔出してみるか。」
クライブはモンバトを手に取った。
「ちょっと試してみるか」
冒険者としてモンスターを倒せば、素材が手に入る。
そのうえデータまで売れる。
もし本当に金になるなら、悪くない。
そんな軽い気持ちで、クライブは冒険者ギルドに銀翼とのアポを取りに向かうことにした。




