追放冒険者 スロリアゴールへ
クライブは、冒険者パーティーの一員として、長く活動していた。
剣の腕は確かだった。
魔物との戦いでは前衛を務め、必要なら後衛の援護もする。
野営では料理を作り、怪我をすれば治療をする。
地図を確認し、魔物の気配を探り、仲間の状態を見ながら戦い方を変える。
何でもできる。
器用な男だった。
だからこそ――
「クライブ。お前、今日でパーティーを抜けてくれ」
突然、そう告げられた。
「……俺が?」
「ああ」
クライブは仲間たちを見る。
誰も冗談を言っているようには見えない。
「理由を聞いてもいいか?」
「もっと戦闘に特化した奴を入れたいんだ」
「なるほど」
「お前は何でもできる。だが、逆に言えば何か一つが突出しているわけじゃない」
「そうか」
クライブは頷いた。
自分が戦力として評価されていない。
どうやら、本当にそうらしい。
だが、それ以上は何も言わなかった。
「わかった」
「……いいのか?」
「俺も長く世話になった。最後に一つだけ言っておく」
クライブは一人ずつ仲間を見る。
「お前は攻撃に集中しすぎる。敵が動いたら、必ず一度だけ周囲を見ろ」
「お前は防御を仲間に任せすぎだ。自分が狙われることも考えておけ」
「それと、お前は魔力を使いすぎる。長期戦になったら危険だ」
それぞれに、短い言葉を残す。
「じゃあな」
クライブはそれだけ言って、パーティーを離れた。
自分がいなくなればどうなるのか。
クライブには何となく分かっていた。
だが、それを口にするつもりはない。
自分たちが強いと思っているなら、それも経験だ。
いつか気づくこともあるだろう。
「さて……」
クライブは一人になった。
「俺の力を必要としている場所へ向かおうか」
そう呟き、町を出た。
――数日後。
クライブは、見知らぬ大きな町の前に立っていた。
「ここが……スロリアゴールか」
聞いていた話では、辺境に新しくできた町らしい。
最近になって商業ギルドなども入り、町として発展しているという。
「冒険者ギルドも参入したばかりらしい」
クライブは頷く。
「それなら、仕事もあるだろう」
自分の力を必要としている場所。
そう思いながら、町へ入っていく。
まずは冒険者ギルドだ。
そう考えて、案内を受けた場所へ向かう。
そして――
「…………」
クライブは立ち止まった。
目の前にあるのは、小さな建物だった。
いや。
小さいというより――
「……これが?」
看板には、確かに冒険者ギルドと書かれている。
「冒険者ギルド……?」
クライブは建物を見上げた。
「おいおい……こんな小さい冒険者ギルド、見たことねぇんだけど!?」
思わず声が出た。
だが、それも仕方がない。
クライブがこれまで見てきた冒険者ギルドとは、明らかに規模が違う。
受付も少ない。
建物も小さい。
掲示板も寂しい。
まるで――
「……本当にここで仕事になるのか?」
クライブは首を傾げた。
それでも、仕事を探すために中へ入る。
「いらっしゃいませ」
受付の職員が、気のない声で挨拶した。
「依頼を探しているんだが」
「……依頼ですか?」
「ああ」
「でしたら、村長さんのところへ行ってください」
「…………は?」
「町の依頼は、そちらで管理していますので」
クライブは固まった。
「冒険者ギルドなのに?」
「はい」
「……じゃあ、ここは何をしてるんだ?」
「冒険者の登録とか、依頼達成の報告とか、報酬の清算とかです」
「…………」
クライブは外を見る。
そして、もう一度建物を見る。
「よく分からんな……」
「私たちも最初はそう思いました」
「最初は?」
「今は慣れました」
職員はそう言って、淡々と仕事を続ける。
「ですので、依頼を受けたいのでしたら村長さんのところへどうぞ」
「……分かった」
クライブは冒険者ギルドを出た。
そして、村長の家へ向かった。




