隠してないけどやばい武器達
翌朝。
「おはようございます」
王家の一行が朝食を終えると、リゼットが声をかけた。
「今日は、昨日とは少し違ったものを見てもらうわ」
「違ったもの?」
王妃が首を傾げる。
「ええ。昨日は町を楽しんでもらったでしょう?」
リゼットが笑う。
「今日は、この拠点にあるものを紹介する予定なの」
「まあ!」
王妃の顔が明るくなる。
「昨日も色々と見せてもらいましたけれど、まだあるのですか?」
「あるわよ」
「それは楽しみですわ」
国王も興味深そうに頷いた。
「余も見せてもらおう」
こうして王家の一行は、拠点の外へと向かった。
◇
「まずはこちらです~」
ニコラが案内したのは、拠点の敷地内にある広場だった。
そこには何体もの人工モンスターが並んでいる。
「……これが?」
王太子が目を見開く。
「人工モンスターです~」
ニコラが答えた。
小さなコボルト。
動く鎧。
大きな馬。
その他にも、様々な形をしたモンスターたちがいる。
「昨日の町にも似たようなものがいましたけれど……」
第二王女が近づいていく。
「これは本当に生きているのですか?」
「人工的に作ったモンスターです~」
「モンスターを……作った?」
「はい」
ニコラは眠そうな顔で頷いた。
「魔石や魔力、それから周囲の魔力を利用して動きます~。そしてマスター 起動者ですね~。マスターの命令を忠実に守る召喚獣みたいなものかなぁ~。今の設定は スロリアゴールの住民を襲わない。何かあったら助けに入る~。あとは~、町の外に連れていく場合はモンスターを全力で倒しにいく。かなぁ」
「…………なるほど、我々に襲い掛かる事はないのですね?」
「そういう設定はマスターが決めれるので~。」
王太子が固まる。
王妃も人工モンスターを眺めていた。
「こちらは?」
「わんおー」
「……わんお?」
「名前です~」
ニコラが説明する。
「かわいいでしょう~?」
「ええ……」
王妃が思わず手を伸ばす。
わんおは嫌がることもなく、尻尾を振った。
「まあ!」
王妃の顔が完全に緩む。
「連れて帰りたいですわ」
「ダメだよー」
マドカが横から言った。
「この子たちはここにいるから」
「残念ですわ……」
王妃がわんおを撫でる。
「そのうち エレノアが新作を献上するんじゃないかなぁ~。護衛特化でもかわいいやつ~。」
「まぁ そうなのですか?!エレノア頼みましたよ?!」
その隣では、動く鎧がゆっくりと歩いていた。
「こっちは?」
国王が尋ねる。
「警備用です~」
「……これも人工的に?」
「はい~。町のパトロールを頼んでます~。」
「なるほど……」
国王は少し考え込む。
昨日、町の中で見た人工モンスターたち。
ただの珍しい魔道具だと思っていた。
だが、こうして詳しく見てみると、その技術がどれほど異常なのかが分かってくる。
「これほどのものを、個人で作っているのか?」
国王がニコラを見る。
「私だけじゃないですよ~。」
「そうなのか?」
「怖がらせないをコンセプトにマドカが色々描いてくれるので、それを参考にしています~。」
「…………確かに、野生のモンスターとは違った可愛さというか愛嬌があるな。」
国王はマドカを見る。
「余には、マドカがそれだけの実力や知能があって上を目指さんのが不思議でならん。」
「面倒だし?」
「いや……そうだな。そなたはそのままでよい。」
◇
「次はこっちだな。」
グレタが案内したのは、武器庫だった。
そこには、様々な武器が並んでいる。
剣。
槍。
斧。
弓。
そして、見たこともない形状の武器。
「ここにあるものは、基本的に俺たちが対モンスターで使うために作ったものだ。今のところ対人戦はないからな。」
グレタが言う。
「売り物じゃないのかい?」
王太子が尋ねる。
「今町に売りに出てるのは弟子たちが作ったもので、ここにあるのは売り物じゃねえ。武器に振り回されるような奴だと悪いことに使うからな。」
グレタは一本の剣を手に取った。
「こいつは、今の俺が作れる中でも最高クラスだ」
鞘から抜かれた刀身が、光を受けて輝く。
「……美しい」
王太子が思わず呟く。
見た目だけではない。
手にしただけで分かる。
異様なほど軽い。
それでいて、妙な頼もしさがある。
「魔力を流せば、さらに性能が上がる」
グレタが説明する。
「切れ味、耐久性、魔力伝導。全部かなり高い」
「そんなものを普通に置いているのか?」
「あくまでもこれは試作品。これからアップデートしていく。」
グレタがあっさり答える。
「……」
王太子は何とも言えない顔になった。
その隣では、第二王子が別の武器を見ている。
「こちらは?」
「銃だ」
「銃?」
「遠くから敵を撃つための武器だ」
グレタが説明する。
「ニコラが魔法を使って作った弾を撃ち出す」
「魔法を?」
「銃から出る弾薬に魔法が付与されてんだよ」
実演用の標的が設置される。
ニコラが銃を持つ。
「撃ちますね~」
次の瞬間。
轟音。
標的が吹き飛んだ。
「…………」
王家の一行が固まった。
「これが……銃?」
「はい~」
ニコラが銃を眺める。
「今のが、現時点ではかなり強いほうです~」
「現時点では?」
国王が反応する。
「はい」
ニコラは普通に頷いた。
「まだ改良できますから~」
「……」
国王は黙った。
どうやら昨日の時点では、まだ本気を出していなかったらしい。
◇
「そういえば」
グレタが第二王子を見る。
「剣術を習ってるんだったな?」
「え?」
第二王子が驚く。
「はい。まだまだ未熟ですが」
「そうか」
グレタは少し考える。
そして武器庫の奥へ向かった。
「だったら、こいつを持っていけ」
「……?」
グレタが取り出したのは一本の剣だった。
見た目は先ほどの剣よりも、少しだけ地味だった。
「これは?」
「インテリジェンスウェポンだ。剣は俺が作ったがニコラが人工知能を剣に埋め込んでいる。」
「インテリジェンス……?」
「意思を持つ武器だ」
第二王子が目を見開く。
「武器が、意思を?」
「そういう武器だ」
グレタが剣を差し出す。
「使い手の動きを見て、助言してくれる」
「助言……?」
「剣術の癖も指摘してくれるし、危ない動きも教えてくれる。剣が師匠みたいなもんだな。」
第二王子が恐る恐る剣を受け取る。
「よろしくお願いします」
すると。
「こちらこそマスター」
剣から声がした。
「……!」
第二王子が飛び上がる。
「しゃ、喋った!?」
「喋るって言っただろ」
グレタが笑う。
「マスター、右手に力が入りすぎています」
剣が淡々と告げる。
「え?」
「剣を強く握りすぎています。もっと自然に」
第二王子が握り直す。
「……こうですか?」
「先ほどより良くなりました」
「…………」
第二王子は剣を見つめる。
「すごい……」
「こいつなら、剣術の練習相手にもなる」
グレタが言う。
「一人で練習するときにも役立つだろ」
「ありがとうございます!」
第二王子は嬉しそうに剣を抱えた。
「大切にします!」
「そうしてくれ」
グレタも満足そうに頷いた。
王妃が微笑ましそうにその様子を見ている。
「素敵な贈り物ですわね」
「うむ」
国王も頷く。
「これは王城に持ち帰ってもよいのか?」
「本人が使うならな」
「本当にありがたい」
国王がグレタへ礼を言う。
グレタは軽く手を振った。
「気にすんな。使ってくれる奴がいるほうが、武器も嬉しいだろ」
「はい!」
第二王子はさっそく剣に話しかけていた。
「ところで、名前は?」
「まだありません」
「では、僕が考えても?」
「もちろんです」
第二王子は嬉しそうに考え始めた。
それを見たマドカが小さく笑う。
「よかったねー」
「はい!」
◇
「さて」
リゼットが空を見上げる。
「次は外に出ましょうか」
「まだあるのか?」
国王が尋ねる。
「ええ」
スロリアゴールを囲む城壁。
その上へと案内される。
「これは……」
王太子が目を見開いた。
城壁の上には、いくつもの大型兵器が設置されていた。
「バリスタです」
グレタが説明する。
「かなり大型のやつだ」
「これほど大きなバリスタを……」
国王が近づいていく。
「普通のバリスタではありませんよ~」
ニコラが言った。
「魔法を撃てます~」
「…………」
「魔法を?」
「はい~」
ニコラが装置を操作する。
バリスタに特殊な弾体が装填される。
「上級魔法を込めた弾を撃ち出します」
「上級魔法を、弾として?」
「そうです」
王家の一行が見守る。
「発射します」
轟音。
次の瞬間。
遠くに設置された巨大な標的へ向かって、魔力を帯びた弾が飛んでいく。
着弾。
そして――。
巨大な魔法陣が展開された。
爆発的な魔力が周囲へ広がる。
「…………」
誰も言葉を発しなかった。
「これが……城壁の上に?」
王太子が呟く。
「はい」
ニコラが答える。
「大きなモンスターが攻めてきた時とかに使います~」
「こんなものを町に設置しているのか……」
国王が遠くを見る。
巨大な城壁。
その上に並ぶバリスタ。
さらに町の中には人工モンスター。
門には巨大な防衛設備。
そして、いざとなれば上級魔法まで飛んでくる。
国王はしばらく黙っていた。
「……この町」
「はい?」
エレノアが振り返る。
「本当に開拓地だったのか?」
「最初はそうでした」
「そうか……」
国王は遠い目をした。
◇
「他にもありますよー」
マドカが言った。
「まだあるのか!?」
王太子が思わず叫ぶ。
「あるよ」
「何がある?」
「色々」
「色々では分からない!」
マドカは少し考える。
「じゃあ、見たい?」
「……」
王太子は国王を見る。
国王も王妃を見る。
王妃は楽しそうに笑っていた。
「もちろんですわ」
「……余も見よう」
国王が頷く。
「こうなったら、とことん見せてもらおうではないか」
その言葉を聞いたマドカが笑った。
「じゃあ、次いこー」
こうして王家は、さらに拠点の奥へと案内されていく。
町を見れば驚いた。
拠点に泊まれば驚いた。
そして翌日になれば――。
そこには、まだ王家の知らないものがいくつも残されていた。
スロリアゴール。
そしてマドカたちの拠点。
その底は、まだ見えそうになかった。




