ここは暴食 ベルゼピア
「……ここ、どこだろ?」
マドカは辺りを見回した。
さっきまでいたダンジョンとは、明らかに違う。
足元には崩れた石。
少し離れた場所には、半分だけ残った石壁。
何かの建物だったのだろうか。
そこは、古ぼけた遺跡の残骸だった。
「ティニア。ここって知ってる?」
「知らないわよ。あたしだって初めて見る場所だもの」
ティニアも周囲を見回す。
「でも……あっち」
ティニアが指差した。
遠くに、何かが見える。
建物がいくつも集まっている。
かなり大きい。
「国……かな?」
「たぶんそうじゃない?」
マドカは目を細めた。
距離はそれなりにある。
歩いていけば、一時間くらいはかかりそうだ。
「じゃあ、とりあえず行ってみようか」
「そうね。ここにいても何もないし」
二人は遠くに見える国らしき場所へ向かって歩き始めた。
しばらく歩いていると、マドカがふと後ろを振り返る。
そこには、先ほどまで自分たちがいた遺跡。
崩れた石壁と、地面に散らばった大量の石。
どうしてあんな場所に転移したのか。
そもそも、ここはどこなのか。
マドカにはまだ何も分からなかった。
「まあ、行けば分かるか」
「その考え方、雑すぎない?」
「だって、考えても分からないし」
「……それもそうね」
二人はそのまま歩いていった。
「はい。入場にはギルドカードをお願いします」
王都らしき場所へ近づいたところで、門番に呼び止められた。
マドカは自分のギルドカードを取り出す。
「これでいい?」
「……怠惰、スリーピア?」
門番がカードを見て首を傾げた。
「ん?」
「知らんな。ここは暴食の国だぞ」
「暴食……?」
マドカとティニアが顔を見合わせる。
「ここは暴食の国の王都ベルゼピアだ」
「……ここ、怠惰じゃないの……?」
マドカはもう一度、自分のギルドカードを見る。
間違いなく、いつものギルドカードだ。
ティニアも自分のギルドカードを取り出した。
「こっちも同じね」
「ふむ……」
門番は二人のカードを確認する。
「ギルドカードそのものは本物だな」
「じゃあ入っていい?」
「所属国が違う。だが、ギルドカードは偽造できん」
門番は少し考える。
「しかたない。まずは冒険者ギルドへ行け。国を変えた手続きをしてもらえ」
「国を変える?」
「この国で活動するなら必要になる」
「なるほど……」
マドカは素直に頷いた。
「じゃあ、冒険者ギルドに行けばいいんだね」
「そういうことだ」
門番が道を教えてくれる。
二人は王都へ入った。
「……」
「……」
しばらく歩く。
「ここ、怠惰じゃないの……?」
「暴食なんでしょうね」
「なんで?」
「知らないわよ」
ティニアはため息をついた。
そして、ふと足を止める。
「……面倒になってきたわね!」
「それは私も思った」
こうして二人は、転移事故の原因も分からないまま。
とりあえず冒険者ギルドへ向かうことになった。




