近隣からのお客さん一行
それから、さらに二か月。
新しい拠点は、少しずつその姿を変えていた。
最初は荒れ果てていた土地も、今では人が歩ける道が作られ、簡単な畑も広がっている。
家も増えた。
鍛冶場も稼働している。
ニコラの研究設備も少しずつ増え、周囲には魔道具らしきものまで置かれ始めていた。
そして――。
「……わが村より立派だ……」
この日、訪れていた近隣の村の代表が、呆然と呟いていた。
「そう?」
マドカは首を傾げる。
「うち、まだ開拓途中だよ?」
「これで途中……?」
代表は周囲を見回す。
「ここは、これからも開拓し続けるのでしょうか!?」
「そうだね~」
マドカは少し考える。
「欲しい設備はいっぱいあるし。重要な自然を壊さないくらいには、広げていくんじゃないかなー」
「自然を壊さない程度に……」
代表は遠い目をした。
すでに周辺では、いくつもの資源が見つかっている。
珍しい鉱石が採れる鉱山。
魔力濃度の高い地域にしか生えない植物。
魔物から採れる希少素材。
どれも、普通の村なら一つ見つかるだけでも大騒ぎになるようなものだった。
「……わが村で、そんなものを採るのは無理です」
代表が力なく呟く。
「鉱山なんて掘ったら、人手が足りません。珍しい植物も、魔物が出る地域まで採りに行く余裕はありませんし……」
「そうなんだ」
マドカは特に気にした様子もない。
「うちは人がいっぱい来たからねー」
その言葉に、代表が黙る。
そして。
「……いっそのこと」
ぽつり。
「合併を願い出てみれば?」
「ん?」
マドカが振り向く。
少し離れたところにいたリゼットたちも、話が聞こえたらしい。
「合併?」
「い、いえ!」
代表が慌てる。
「こちらの話ですので!」
「いや、聞こえてるけど」
マドカが苦笑する。
代表は顔を赤くしながら、もう一度周囲を見回した。
整備された土地。
新しい家。
活気のある鍛冶場。
魔力に満ちた森。
そして、そこで働く人々。
「……こちらに移り住みたい者は、かなりいると思います」
「やっぱり?」
マドカは納得した。
「あー……これ、引っ越してきたいのかな」
「おそらく……」
リゼットが頷く。
「まあ、そういうことなら」
マドカは特に深く考えずに言った。
「代表さん、代わるチャンスだね」
「え?」
「今の村の代表を続けたい人もいるだろうけど、新しい場所に移りたい人が多いなら、村ごとこっちに来るのもありじゃない?」
「…………」
代表が固まる。
マドカはその反応を見て、少し首を傾げた。
「違った?」
「い、いえ……」
代表はしばらく黙ったあと、小さく頭を下げた。
「……一度、村で話し合ってみます」
「うん。こっちは別に構わないよ」
マドカはあっさり答えた。
「住む場所は作れるし、仕事もあるしね」
「仕事まで……」
代表はまた周囲を見る。
その表情は、もう半分決まっていた。
どうやらこの日。
近隣の村にとって、大きな転機となる話し合いが始まることになったらしい。
なお、マドカ本人は――。
「さて、私は何しようかなー」
そんなことを考えていた。
村の未来を左右する話が進んでいることなど、あまり気にしていなかった。
その後、代表は村への報告のために帰っていった。
なお、帰り際には「せっかくなので」と、この拠点で採れた珍しい植物や加工した魔物素材などを大量に持たされていた。
「……これ、本当にいただいていいんですか?」
「うん。お土産だよ~」
「お土産の量ではないと思うのですが……」




