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落内円は落ちている  作者: 七風


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王都での報告

新しい拠点での生活が始まって、数日。


 マドカたちは少しずつ新しい環境にも慣れ始めていた。


 屋敷の修復や周辺の整備も進み、最低限ではあるものの、暮らしていくための環境は整いつつある。


 そんなある日のこと。


「陛下に報告してきますね」


 エレノアがそう言って、マドカたちの前に立っていた。


「何を?」


「もちろん、これです」


 エレノアが指差したのは、ニコラが作った新しい魔道具だった。


「せっかくですから、王城にも見ていただきましょう。マドカたちが新しく作ったものですし」


「ゲームだよ?」


「ええ。マドカにとってはゲームですね」


 エレノアは苦笑する。


「ですが、王国にとっては少々意味が違ってくるかもしれません」


「そうなの?」


「それは陛下が判断されることでしょう」


 こうして、エレノアは魔道具を持って王城へ向かうことになった。


 そして、その日の午後。


「陛下、新しい魔道具が完成しましたので、お見せしたいものがございます」


「またマドカたちかね?」


「はい」


 国王は少し楽しそうに笑った。


 マドカたちが作るものは、毎回どこか普通ではない。


 今回は一体何を持ってきたのかと興味を持ちながら、エレノアから魔道具を受け取る。


「これは?」


「モンスターを登録し、育てて戦わせるためのゲームだそうです」


「ほう」


 国王は興味深そうに端末を見る。


「モンスターを育てて戦わせる……子供たちには受けそうだな」


「マドカもそのつもりで作ったようです」


「なるほど」


 国王が端末を操作すると、登録された狼の幻影が目の前に現れた。


「おお……」


 本物と見間違えるほど精巧な狼が、淡い魔力の光をまといながらその場に立っている。


「これは幻影か?」


「はい。実際に倒したモンスターの魔力を吸収して登録し、その魔力を利用して再現しています」


「つまり、実物を捕らえているわけではないのだな」


「その通りです。幻影ですから、戦わせても怪我をすることはありません」


「なるほど……」


 国王は感心しながら狼を眺める。


 ここまでは、確かに面白いゲームだ。


 しかし、エレノアは続けた。


「さらに、一度登録したモンスターは何度でも呼び出すことができますし、同じモンスターの魔力情報を複数の端末へ登録することもできます」


「ほう」


「そして、もう一つ重要な機能があります」


 エレノアが端末を操作する。


 画面に周囲の地図が表示され、その上にいくつかの反応が現れた。


「周辺に存在するモンスターを探知できます」


「……何?」


「方向と距離まで表示されます」


「…………」


 国王はしばらく画面を見つめた。


「つまり、この端末を持っていれば、周囲のモンスターを探すことができるのか?」


「はい。例えば、この反応なら北東二・三キロの位置にゴブリンがいる、という具合です」


「…………」


 国王の表情が変わった。


「それは……」


 先ほどまで子供向けゲームを眺めていた顔ではない。


「冒険者にとって、非常に有用なのではないか?」


「私もそう思います」


「いや、冒険者だけではないな」


 国王は端末を見ながら考え込む。


「周辺の魔物の生息状況を調べることもできる。討伐前の探索にも使える。新人の訓練にも使えるだろう」


「はい」


「しかも実際の戦闘を再現しながら、安全に訓練できるのだな?」


「はい」


 エレノアが頷く。


「マドカたちはあくまでゲームとして作ったようですが、実用面でもかなり優れています」


「なるほど……」


 国王はしばらく考えたあと、端末をエレノアへ返した。


「これは何台ほど作れる?」


「ニコラに聞かなければ分かりませんが、量産できるようにすることは可能だと思います」


「そうか」


 国王は満足そうに頷いた。


「では、何百台か欲しいな」


「何百台ですか?」


「王国の各地で使えるようにしたい。冒険者ギルドにも必要だろうし、魔物の多い地域でも役に立つだろう」


「……マドカが聞いたら驚きそうですね」


「本人はゲームだと思っているのだろう?」


「はい」


「なら、まずは本人に説明してみるといい」


 国王は笑った。


「きっと面白い反応をするぞ」


 その頃。


 マドカは王城でそんな話が進んでいるとは知らず、ニコラとリゼットと一緒に王都へ向かっていた。


「今日は冒険者ギルドに行こう!」


「うん~」


「サリーにも見せたいんだ」


「喜んでくれるかな~」


「絶対喜ぶよ!」


 マドカは自信満々だった。


 そして三人は、冒険者ギルドへ到着する。


「サリー!」


「マドカさん?」


 受付にいたサリーが顔を上げる。


「今日はどうしたんですか?」


「新しいゲームができたから見せに来た!」


「ゲーム?」


「うん!」


 マドカは嬉しそうに端末を取り出した。


「モンスターを探して、登録して、育てて、戦わせるゲームなんだよ!」


「へえ……」


 サリーは興味を持ちながら端末を見る。


「以前お話しされていたものですか?」


「そうそう!」


 ニコラが横から説明を始める。


「実際のモンスターを倒して、その魔力を端末に吸収するんだよ~。それを登録すると、あとから幻影として呼び出せるの」


「なるほど……」


 サリーが表示された狼を見る。


「かなり本物に近いですね」


「でしょ?」


「これなら、実際のモンスターと戦っているような訓練もできそうです」


「そうなんだよ!」


 マドカは嬉しそうに頷く。


「しかも、みんなで見られるのがいいんだよね」


「確かに、見ている側にも分かりやすいですね」


 サリーは感心していた。


 けれど、まだこの時点では、便利なゲームという認識だった。


「それで、他にはどんな機能が?」


「周囲のモンスターを探せるよ~」


 ニコラが端末を操作する。


「この辺りなら、北東二・三キロにゴブリンがいるね~」


「…………」


 サリーが固まった。


「今……何と?」


「北東二・三キロにゴブリン」


「モンスターの位置が分かるんですか?」


「うん」


「距離まで?」


「うん~」


「…………」


 サリーは端末を見つめたまま、しばらく黙り込んだ。


「ニコラさん」


「うん?」


「これ……」


 サリーの声が少し震えている。


「索敵魔道具ですよね?」


「ゲームだよ~?」


 マドカが横から答える。


「ゲームなんだけど……」


「……」


 サリーはマドカを見る。


 そして、もう一度端末を見る。


「モンスターを探知できて、方向が分かって、距離まで表示されるんですよね?」


「うん」


「実際のモンスターを登録して、安全に戦闘訓練もできる?」


「うん」


「しかも、一つのモンスターの魔力情報を複数の人が共有できる?」


「そうだよ~」


「…………」


 サリーはゆっくりと立ち上がった。


「ちょっと待っていてください」


「?」


「ギルマスを呼んできます」


「そんなに?」


「そんなにです!」


 サリーは急いで奥へ向かっていった。


 マドカはその背中を見ながら、首を傾げる。


「そんなにすごいのかな?」


「便利だからね~」


「でもゲームだよ?」


「マドカにとってはね~」


 しばらくすると、奥から一人の男性が歩いてきた。


「どうしたんだね、サリー君」


「ギルマス!」


 サリーが振り返る。


「こちらを見てください!」


「こちら?」


 ギルドマスターが端末を覗き込む。


 そこには周囲の地図と、いくつものモンスター反応が表示されている。


「ややっ……」


 ギルドマスターの目が大きく開かれた。


「これは!?」


「新しく作ったゲームだよ!」


 マドカが胸を張る。


「モンスターを探して、登録して、育てて、戦わせるの!」


「…………」


 ギルドマスターはマドカを見る。


 次に端末を見る。


 そして、サリーを見る。


「サリー君」


「はい」


「これは本当にゲームなのかね?」


「マドカさんにとっては、そうなんだと思います」


 サリーは苦笑した。


「ですが、冒険者ギルドからすれば、とても重要な魔道具です」


「なるほど……」


 ギルドマスターは端末を手に取った。


「モンスターの探索に使えるだけではなく、戦闘訓練にも使える。これは新人冒険者の育成にも利用できそうだな」


「そうですね」


「それに、希少なモンスターを探すこともできるのだろう?」


「はい」


 ニコラが答える。


「魔力反応が検出できれば、距離を確認できますよ~」


「ふむ……」


 ギルドマスターは腕を組む。


「これは面白いことができそうだ」


「何するの?」


 マドカが尋ねる。


「例えば、希少なモンスターを探したいという者を、冒険者が安全に生息地まで案内するのだ」


「……!」


 マドカの目が輝いた。


「それ、楽しそう!」


「だろう?」


「ゲームを持ってる人が、珍しいモンスターを探しに行くんだ!」


「その途中で危険があれば、我々冒険者が対処する。実際にモンスターを倒せば、その魔力を登録できる」


「いいね!」


 マドカはすっかり乗り気になっている。


「じゃあ、そういうツアーもできるね!」


「うむ。新しい依頼にもできそうだ」


 サリーも頷く。


「ゲームを遊びたい人が増えれば、希少モンスターを探す冒険者の仕事も増えますし、遠方の地域へ人を案内することにもなります」


「なるほど……」


 ニコラは二人の話を聞きながら、特に驚いた様子もなく頷いている。


「ゲームが大きくなってきたね~」


「うん!」


 マドカは嬉しそうに答えた。


「せっかくだし、みんなで遊んでほしいもん」


 その時だった。


 ギルドマスターが、ふと思い出したようにマドカを見る。


「ところで、マドカ君」


「なに?」


「今回の魔道具の開発において、君たちにはかなりの功績がある」


「そうなの?」


「国王陛下からも話を伺っている」


「え?」


 マドカが目を丸くする。


「この魔道具を冒険者や王国へ提供した功績も含め、君の冒険者ランクを上げることになった」


「…………え?」


「それと、リゼット君もだ」


「私も?」


 リゼットは少し驚いた顔をする。


「魔力に関する研究や、この魔道具の開発にも協力しているからな。十分な功績だ」


「そういうことなら、ありがたく受け取っておきましょうか」


 リゼットは穏やかに笑った。


 一方、マドカはまだ納得しきれていない。


「でも、私、ランク上げようと思ってゲーム作ったわけじゃないよ?」


「それは分かっている」


 ギルドマスターは笑った。


「だからこそ、こちらから評価するのだよ」


「うーん……」


 マドカは少し考える。


「じゃあ、もらえるならもらおうかな」


「うむ。それでいい」


 隣では、ニコラがぱちぱちと拍手していた。


「マドカ、よかったね~」


「ニコラは?」


「私は別にいいかな~」


「興味ないんだ」


「うん。冒険者ランクって私にはあんまり関係ないし~」


 ニコラは特に気にした様子もなく、マドカとリゼットを見る。


「リゼットも魔力関係で研究に携わったし、二人ともちゃんと評価されてよかったね~」


「ニコラ……」


 マドカは少し嬉しそうに笑った。


「ありがと」


「うん~。二人ともおめでとう~」


 ニコラは、それ以上何かを求めることもなく、二人の昇格を素直に喜んでいた。


 マドカが遊びたくて作ったゲーム。


 ニコラが面白そうだから作った魔道具。


 リゼットたちが研究に協力したもの。


 それがいつの間にか、王国にとっても冒険者ギルドにとっても、無視できないほどの価値を持つものになっていた。


 けれど当のマドカは、そんなことを深く考えてはいない。


「ねえ、ニコラ」


「なに~?」


「帰ったら、もっとモンスター探したい!」


「いいよ~」


「ティニアも誘おう!」


「ティニア、喜ぶかな~」


「絶対喜ぶよ!」


 新しく始まったゲームは、こうして少しずつ世界へ広がっていくことになる。


 そしてマドカはまだ知らない。


 この遊びが、やがて王国中を巻き込むほどの大きなものになっていくことを。

https://mitemin.net/imagemanage/top/icode/1246368/ リゼットをAIで作ってもらいました!

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