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落内円は落ちている  作者: 七風


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603/606

ガブちゃん達の場合

# ガブちゃんの音楽ユニット――突然の招集!


 その日のガブリエルの配信は、いつもとは少し違っていた。


 配信画面に映っているのは、ガブリエル本人だけではない。ヒナタ、ルーデウス、エレノア、そしてモンバト部のケヴィン、シェリー、フローラ、エミリアまで、全員が揃っていた。


 ただし、全員が最初から乗り気だったわけではない。


「……なあ、ガブリエル。俺、いきなり呼び出されたんだが。いったい何をするつもりなんだ? 俺だって、そこまで暇じゃないぞ?」


 ルーデウスは、困惑した表情でガブリエルを見た。


 つい先ほど、ガブリエルから突然呼び出されたばかりなのだ。詳しい説明もないまま配信にまで参加させられ、何が始まるのかも分からない。


 さすがに困惑するのも無理はなかった。


「まったく……またガブリエルの思いつきですか。私も忙しいんですけど」


 エレノアも、呆れたように息をついた。


 妹の行動力は昔からよく知っている。何かを思いついたら、周囲の都合などお構いなしに話を進めるのがガブリエルという人物だった。


「えーっ! でも、私は楽しみだよ!」


 そんな二人とは対照的に、ヒナタは最初からやる気満々だった。


「だって、3ユニットの売り上げ勝負でしょ? せっかく参加するんだから、面白いことをやりたいじゃん! 歌も演奏もダンスも、いろいろ組み合わせられそうだし!」


「ヒナタは相変わらず前向きですね……」


 ルーデウスが感心したように呟く。


「そういうお兄様も、やるからには本気で取り組むべきですわ!」


「いや、まだ何をするのか聞いてないんだけど……」


 ガブリエルは、そんなルーデウスの反応を気にする様子もなく、堂々と胸を張った。


「皆様! 本日はお集まりいただき、ありがとうございますわ!」


「いや、集めたのはガブリエル様ですけどね」


 ケヴィンがすかさず突っ込んだ。


「そうですよね。私たちも、詳しい話を聞く前に呼び出されたんですから」


 フローラも苦笑する。


「ガブリエル様ですから、しょうがないですね」


 エミリアが穏やかにまとめると、シェリーも頷いた。


「ええ。ですが、私たちも音楽デビューってことよね? それなら、ちょっと楽しみです!」


「まあ、そういうことになるな」


 ケヴィンは腕を組み、少し真面目な顔になった。


「これは貴族としても負けられないな。せっかく表舞台に立つんだから、半端なことはしたくないぜ」


「私は、モンバトを使ってかわいい子をいっぱい出したいです!」


 シェリーは目を輝かせた。


「歌って踊るだけじゃなくて、モンバトの演出も使えば、華やかなステージにできそうですし!」


『始まった瞬間から温度差がすごいw』

『ヒナタちゃんはもうやる気満々だな!』

『ルーデウスさん、完全に巻き込まれた人の顔してるw』

『エレノア様も呆れてるじゃないかw』

『ガブちゃん、説明する前に全員集めたのかよ!』

『モンバト部は慣れてる感じがするな』

『ガブリエル様ですからしょうがない、便利な言葉だw』

『でも音楽デビューって聞くと楽しみだな!』

『ケヴィン、貴族として負けられないのかw』

『シェリーは安定のかわいい子好き』

『モンバトを使ったライブって、どんな演出になるんだろう?』

『8人もいるんだから、いろんなことができそう』

『ルーデウスさん、ピアノ弾けるんだっけ?』

『ヒナタちゃんのアイデアにも期待!』


「ふふっ、皆様も期待してくださっているようですわね!」


 コメント欄を確認したガブリエルは、満足そうに微笑んだ。


「さて、今回の勝負について、改めて説明いたしますわ!」


「いや、そこは俺たちにも説明してくれよ」


 ルーデウスがすぐに口を挟む。


「そうですね。まずは、何をするのかを明確にしていただけると助かります」


 エレノアも同意した。


「分かりましたわ! 今回、私たちは歌や演奏、ダンスなどを組み合わせた音楽活動を行います。そして、アナスイさんとキシリアさんのユニット、シルヴァさんたちの男性ユニットと、売り上げを競うのですわ!」


「売り上げ勝負なのは分かってるけど、具体的に何をするかはこれから決めるってことか?」


「そのとおりですわ、お兄様!」


「なるほどな……」


 ルーデウスはようやく事情を理解したように頷いた。


 3ユニットの売り上げ勝負そのものは、すでに配信を見ている者たちの間でも話題になっている。今回の配信は、その勝負に向けてガブリエルたちが本格的に動き出す場面というわけだ。


『おお、ついに具体的な準備が始まるのか!』

『女性ユニットはアナスイさんとキシリアさんだよな』

『男性ユニットはシルヴァ、ジャスティス、プライド、アーノルドの4人!』

『そしてガブちゃんのところは8人編成か』

『単純な人数ならガブちゃんのユニットが多いな』

『でも人数が多ければ売れるってわけでもないからな』

『どんな曲を出すのかが重要になりそう』

『配信だけじゃなくて、グッズや録音した曲も売り上げに関係するのかな?』

『それぞれ違う方向性になりそうで楽しみ』

『ガブちゃん、もう勝つ気でいるんだろうなw』


「もちろんですわ!」


 ガブリエルは、まるでコメントを読んだかのように胸を張った。


「私たちが負ける要素など、ほとんどありませんわ!」


「ガブリエル、その慢心はいけませんよ」


 エレノアが即座に釘を刺す。


「まっ! お姉様は心配性ですわね~!」


「心配もします。まだ曲も決まっていないのですから」


「それは、これから決めますわ!」


 ガブリエルは勢いよく答えた。


「まず、私たちはある程度、楽器も貴族教育で扱えますわね? ならば、歌だけでなく演奏も取り入れられるはずですわ!」


「まさか、俺にユニットでも参加しろと?」


 ルーデウスは、嫌な予感がしたように目を細めた。


「確かに、このメンバーなら演奏も歌もできそうではあるけど……いきなりすぎだろう?」


「何をおっしゃいますの、お兄様! お兄様には貴族女性のファンもいらっしゃるではありませんか!」


「いや、そういう話じゃないんだが……」


『ルーデウスさん、逃げ道を塞がれてるw』

『貴族女性のファンは強力な武器なのか』

『ガブちゃん、イトコまで戦力として計算済みだったw』

『本人の予定は考慮されていない模様』

『でもピアノを弾くルーデウスさんは見たい』

『ガブちゃんの言うことにも一理あるのが困るw』


「それに、ヒナタもお姉様も、このゴールでは有名ですわ! そして私も、自分では有名だと思っていますわ!」


「自分で言うんだ……」


 ルーデウスが小声で突っ込んだ。


「当然ですわ! 私たちには、すでに知名度がありますもの! モンバト部にも配信ファンがついていますし、これはかなり有利ですわよ!」


「確かに、ファンを獲得するという点では、私たちにも強みがありますね」


 エミリアが頷く。


「ただ、すでに人気があるからといって、必ず売り上げにつながるとは限りません。活動の内容も大切だと思います」


「そのとおりですわ。だからこそ、私たちにしかできないものを作るのです!」


 ガブリエルは、ますます自信を深めたようだった。


『ガブちゃん、完全に勝つつもりでいるw』

『知名度とファンがいるのは確かに強い』

『でもアナスイさんとキシリアさんも人気が出てるからな』

『男性ユニットもどんなことをするのか気になる』

『売り上げ勝負だから、企画力も大事そう』

『モンバト部のファンがどこまで応援するかも注目だな』

『8人いるなら、演奏担当とダンス担当を分けることもできそう』

『全員が同じことをする必要はないんだよな』

『ガブちゃんがどうまとめるのか楽しみだ!』


「……とはいえ、曲はどうするんですか?」


 エレノアが話を本題へ戻した。


「作曲から始めるとなると、それなりに時間がかかります。すでにこの世界にある曲を使うのでは駄目なのですか?」


「それもそうですわね……」


 ガブリエルが考え込むより先に、ヒナタがぱっと顔を上げた。


「だったら、この世界の有名な曲をアレンジして、もっと激しくしてみるのはどうかな? 今ある曲って、ちょっとお上品すぎるっていうか。テンポを上げたり、盛り上がる部分を作ったりすれば、ライブでも映えると思うんだよね!」


「おお、それはいいんじゃないか?」


 ケヴィンが賛同する。


「アップテンポにして、見せ場を作るんだな。演奏に合わせてダンスを入れれば、観客も盛り上がるだろうし!」


「そして、モンバトを使ってかわいい子をいっぱい出すんです!」


 シェリーは、そこだけは改めて強調した。


「……シェリー、それはもう分かりました」


 フローラが苦笑する。


「でも、演出の方向性としては悪くないと思います。私たちは配信にも慣れていますし、モンバトの見せ方にも工夫の余地がありますから」


「そうですね。歌や演奏だけでなく、映像や演出も含めて考えれば、私たちならではのステージにできそうです」


 エミリアも続いた。


 ガブリエルは満足そうに頷き、全員を見渡した。


「よろしいですわ! では、まずは怠惰の大陸で有名な曲を候補に挙げますわ。そのうえで、テンポを速くしたり、演奏やダンスを加えたりして、私たちに合う形へアレンジしていきましょう!」


「うん! その方がライブでも盛り上がると思う!」


 ヒナタは最初から変わらない笑顔で頷いた。


「……まあ、やるからにはちゃんとやるけどな」


 ルーデウスも、ようやく腹をくくったようだった。


「ただ、次からは呼び出す前に、何をするのかくらい教えてくれよ」


「善処しますわ!」


「その返事、絶対にまた急に呼び出すやつだろ……」


 ルーデウスのぼやきに、ヒナタが笑い、モンバト部の4人も顔を見合わせた。


 エレノアだけは、諦めたように小さく息をついている。


「……本当に、ガブリエルの思いつきには振り回されますね」


「お姉様! 今回はちゃんと計画を立てておりますわ!」


「それなら、まずは曲を用意してから言いなさい」


「うっ……。分かりましたわ!」


『結局、曲選びからかw』

『ヒナタちゃんが最初から最後まで乗り気でよかった』

『ルーデウスさん、頑張れw』

『エレノア様の苦労が伝わってくる』

『モンバト部のステージ、どんな感じになるんだろう』

『3ユニットとも方向性が違いそうで面白いな』

『売り上げ勝負、これからが本番だ!』


 こうして、ガブリエルのユニットも本格的に動き始めた。


 知名度、演奏技術、配信ファン、そしてモンバトを活かした演出。


 8人それぞれの強みを組み合わせれば、華やかなステージを作り上げることもできるだろう。


 まずは曲選び。そして、どのようなアレンジを施すのか。


 ガブリエルの頭の中では、すでに華やかな舞台の構想が広がり始めていた。


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