男性勇者達の場合
# 男性ユニット始動――機材は貸せないけど、協力はするよ~
エキドナの屋敷、技術班の作業室。
シルヴァ、ジャスティス、プライドの三人は、ニコラに相談するために訪れていた。
「ニコラ博士、少しお願いがあるんですが」
「ん~? な~に~?」
ニコラは作業机に向かったまま、のんびりと返事をした。
「僕たちの男性ユニットでも、DJを取り入れたステージをやりたいと考えているんです。それで、ニコラ博士が使っているDJ機材を、しばらく貸していただけないでしょうか?」
「え~、やだ~」
「ええっ!?」
あまりにもあっさり断られ、シルヴァは思わず声を上げた。
「そ、そんな!? 少しの間だけでも駄目ですか?」
「だって~、あれは壊れたときの予備だもん~。使えなくなったら困るでしょ~?」
「予備だったんですか!?」
「うん~。地球にあったDJ機材を参考にして、こっちの世界でも使えるように作ってみたんだけどね~。まだ完全再現ってわけじゃないから、改良が必要なんだよ~」
「なるほど……。完成品というわけではないんですね」
「そういうこと~。だから、貸したくないんだよねぇ~」
ニコラは悪びれる様子もなく答えた。
「では、同じような機材を新しく作ることはできませんか? 設計図などを提供していただければ、エジソンさんたちに相談できるかもしれません」
「え~、そんなことしてる暇あるの~?」
「そ、そこを何とか!」
「シルヴァは今できることを考えたほうがいいと思うよ~。機材がないと何もできないわけじゃないでしょ~?」
「……それは、そうですね」
シルヴァは少し考え込んだ。
DJ機材を借りることばかり考えていたが、そもそも自分たちのステージに必要なのは、機材そのものだけではない。
曲も必要だし、歌やダンスの練習も必要だ。魔法演出を入れるなら、その構成も考えなければならない。
「……分かりました。機材の貸し出しは諦めます。その代わり、音楽活動に関して、何か協力していただくことはできませんか?」
「ん~、それならいいよ~」
「本当ですか!?」
「音源を作る手伝いくらいならできるよ~。ただ、私が作曲できるわけじゃないからねぇ~。メロディは自分たちである程度考えてね~」
「ありがとうございます! それだけでも助かります!」
シルヴァの表情が明るくなる。
「それと、ステージでの機材操作も、必要なら相談してみるといいよ~。私が裏方で操作する形なら、できるかもしれないしね~」
「そこまでお願いできる可能性があるんですか!」
「まだ決定じゃないよ~? 予定を確認してからね~」
「もちろんです! ありがとうございます、ニコラ博士!」
シルヴァは深々と頭を下げた。
「うんうん~。じゃあ、まずは曲の案を考えてきてね~。メロディが決まらないと、音源も作れないからさ~」
「分かりました。僕たちで考えてみます!」
三人はニコラに礼を言い、作業室を後にした。
機材を借りることはできなかった。
しかし、音源制作の協力は得られた。機材操作についても、裏方として担当してもらえる可能性がある。
何より、ニコラの言うとおり、今の自分たちにできることはほかにもあるのだ。
まずは四人で、具体的な方針を決める必要があった。
* * *
その後、シルヴァたちは会議室へ集まり、アーノルドも交えて今後の活動について話し合うことにした。
「それでは、改めて整理しましょう。僕たちのユニットは四人です。僕とジャスティスさん、プライドさん、そしてアーノルドさんですね」
「おう。メンバーは決まってるんだ。あとは、どうやって形にするかだな!」
プライドが勢いよく頷いた。
「まず、曲をどうするかだ。ニコラから音源制作の協力は得られそうだが、作曲はできないらしい。となると、メロディを考えるところから始めなきゃならねえ」
ジャスティスが腕を組む。
「そこで、あちらの世界の曲を参考にするのはどうでしょう?」
シルヴァが提案した。
「そのまま使う、ということか?」
「ええ。時間もありませんし、今から僕たちだけで作曲を勉強するのは難しいでしょう。ジャスティスさんが知っている曲を参考に、構成や演出を考えるのが現実的だと思います」
「……仕方ないだろうな。時間もないんだ。俺が知っている音楽の知識を活かして、形にできそうなものを考えてみるか」
ジャスティスは納得したように頷いた。
「よし! それなら曲の方向性はジャスティスに任せるとして、俺はダンスを考えるぜ!」
「お願いします。僕は歌と魔法演出を担当するつもりですが、DJ操作まで自分でやるのは難しいですからね。そこはニコラ博士に相談してみます」
「魔法演出なら、ヒロバトを使うのはどうだ?」
ジャスティスが、ふと思いついたように口を開いた。
「ヒロバト?」
「そうだ。シルヴァのデータを登録して、魔法演出を行う動作を設定しておくんだ。そうすれば、ステージではヒロバトのシルヴァに魔法を使ってもらい、本人は歌に集中できるんじゃないか?」
「なるほど……。僕が自分で魔法を使い続ける必要がなくなるわけですね」
シルヴァは考え込んだ。
「事前に動作を設定しておけば、魔法演出のタイミングも合わせられそうです。もちろん、実際にどこまで細かく設定できるかは、試してみる必要がありますが」
「いいじゃねえか! それなら俺もダンスに集中できるし、シルヴァも歌に専念できる!」
プライドも賛成した。
「ただ、ほかのグループもヒロバトやモンバトの幻影を使ってくる可能性はありますね」
シルヴァが指摘する。
「アナスイさんとキシリアさんは、使ってくると思いますよ。二人組ですから、演奏やダンスを補助する幻影があれば、できることが増えますし」
「まあ、そこはある程度しょうがないだろうな。便利なものがあるなら、ほかの連中だって使うさ」
ジャスティスは肩をすくめた。
「道具が同じでも、使い方まで同じになるわけじゃない。俺たちなりの見せ方を考えればいいんだ」
「そうですね。ヒロバトはあくまで補助ですから、僕たち自身の歌やダンスが重要なのは変わりません」
シルヴァは資料に書き加えた。
「それから、アーノルドさんにはドラムを担当していただく方向で考えています。以前、興味があるとおっしゃっていましたよね」
「ああ。やってみたいとは思っている。ただ、演奏できるかどうかは分からんぞ」
「まずは練習してみましょう! エジソンさんにドラムを作ってもらえば、始められるはずです!」
プライドが明るく言った。
「そうだな。俺も実際に触ってみたい。どんな楽器なのか、興味があるんだ」
アーノルドは前向きに頷いた。
「ただ、食事時は料理の仕事が忙しい。練習時間は、そのあたりを考えて調整する必要があるな」
「もちろんです。全員で練習する時間と、個人で練習できる時間を分ければいいと思います」
シルヴァが答えた。
「よし、だいぶ形になってきたな!」
プライドが嬉しそうに拳を握る。
「ジャスティスが曲の構成を考えて、俺がダンス、シルヴァが歌と魔法演出、アーノルドがドラム! ニコラには音源制作を手伝ってもらう!」
「ただし、ドラムはまだ練習を始める段階ですし、ニコラ博士の機材操作も確定ではありません。そこは、これから相談していきましょう」
「分かってるって! まずはできることからだろ!」
プライドは豪快に笑った。
「そうですね。勝負まで一か月しかありません。曲の案を考えるのと並行して、ドラムの製作やダンスの練習も進めましょう」
シルヴァは資料をまとめた。
男性ユニットの準備は、まだ始まったばかりだ。
曲も、演奏も、ステージの構成も、これから決めなければならないことは多い。
それでも、四人それぞれが担当する方向性は見えてきた。
あとは、限られた時間の中で、それを一つのステージへとまとめ上げるだけだった。




