ガブちゃん配信6
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「今、私はヒナタとルーデウスお兄様をメンバーに加えた新ユニットを考えていますわ!」
ガブリエルは、改めて全員を見渡しながら宣言した。
「ヒナタさんと、ルーデウス様ですか?」
シルヴァが確認すると、ガブリエルは大きく頷いた。
「ええ! それに加えて、ニコラ博士がDJ機材を一台追加で完成させたと、さっき研究室で聞きましたの!」
「おお! 追加、やっとできたんだね!」
マドカが嬉しそうに声を上げた。
「これで音楽の幅も広がるねー! DJが増えれば、いろんな編成ができそう!」
「僕もDJをやりたいですね」
シルヴァが興味深そうに口を開いた。
「楽器もいいですが、音楽を組み立てる側にも興味があります。演奏と組み合わせれば、面白いことができそうですから」
「まあ! シルヴァさんもですの?」
ガブリエルは少し驚いたあと、嬉しそうに頷いた。
「それなら、なおさら人員を考えなければいけませんわね。あと二人か三人は、追加で募集することになるかもしれませんわ」
『シルヴァさん、DJにも興味があるのか!』
『楽器とDJを組み合わせたら、面白そうだな』
『ニコラ博士の追加機材、ついに完成!』
『ガブちゃんのユニット、どんどん規模が大きくなってない?』
「二人か三人かぁ。結構な人数になるね!」
「モンバト部にも、かわいい子はいますから!」
ガブリエルは自信満々だった。
「だったら、もうモンバト部でバンドを組めばいいじゃん。お兄ちゃんを無理に誘わなくてもいいならさ!」
マドカがあっさり提案する。
「まあ、ルーデウスお兄様はマドカのお兄様でしょう?」
ガブリエルは、さも当然という顔で答えた。
「私ともいとこになるわけですし、男女関係を疑われる心配も少なそうではありません?」
「確かにそうかも!」
マドカは納得したように頷いた。
「お兄ちゃん、奥手だし!」
「……マドカさん。ご本人がいないところで、ずいぶんな言われようですね」
シルヴァが苦笑する。
「だって本当だもん!」
「まあ、否定はしませんけれど……」
アナスイも、少し困ったように微笑んだ。
『ルーデウス様、いないところで評価が進んでるw』
『奥手なのは事実なのか……』
『いとこ同士なら恋愛の噂も立ちにくい、という考えか』
『マドカちゃん、お兄ちゃんの扱いが遠慮ないなw』
その話を聞いていたキシリアが、ふと疑問を口にする。
「ちょっと待ちなさいよ。マドカのお兄さんって、公爵家の次期当主様でしょう? そんな人が暇なはずないじゃない!」
「え? よく遊びに来るよ?」
「……は?」
キシリアが固まった。
「公爵家とここ、繋がってるし」
「いや、そういう問題じゃないでしょう!?」
「そうかな?」
「そうよ!」
キシリアは頭を抱えた。
「公爵家の次期当主が、そんな気軽に遊びに来るものなの!?」
「来るよ?」
「マドカの周り、いろいろおかしくない!?」
『公爵家の次期当主が気軽に遊びに来る場所w』
『そもそも公爵家と屋敷が繋がってるのがすごい』
『キシリア様、ようやく周囲の異常さに気づいたw』
『マドカちゃんにとっては日常なんだろうなあ』
その横で、ガブリエルは何やら考え込んでいた。
「……それにしても、ルーデウスお兄様は、少々シスコンすぎますわよねぇ」
「ぶっ!?」
マドカが吹き出した。
「ちょっと、ガブちゃん!?」
「だって、そうでしょう? 結婚相手がシスコンというのは、ちょっと考えものですわー」
「いやいやいや! お兄ちゃん、別にそこまでじゃないって!」
「とんでもない風評被害を受けていますわね……」
アナスイが苦笑した。
「ルーデウス様がいらっしゃらないところで、ずいぶんな評価が下されていますわ」
「でも、かっこいいんだよ!」
マドカは、兄を擁護するように胸を張った。
「優しいし、面白いし、頼りになるし!」
「ああ、ルーデウスは面白いしな!」
ジャスティスも頷いた。
「話してると結構楽しいぜ!」
「ほら! ジャスティスもそう言ってるじゃん!」
「……なるほど。人柄については、もう少し詳しく調べる必要がありそうですわね」
「何の調査をするつもりなの!?」
マドカの叫びに、ガブリエルは優雅に微笑んだ。
『ガブちゃん、ルーデウス様を審査対象にしてない?w』
『本人がいないのに結婚相手の話まで進んでるぞ!』
『マドカちゃん、必死の兄擁護』
『ジャスティスさんの証言で評価が上がった……のか?』
「ふふっ。まあ、それはそれとして……」
ガブリエルは、シルヴァとアナスイへ向き直った。
「今回、アナスイさんとシルヴァさんを私のユニットへお誘いするのは、諦めますわ」
「あら、そうなのですか?」
アナスイが意外そうに尋ねた。
「ええ。お二人には、すでに別のユニットのお話がありますもの。無理に引き抜くのは得策ではありませんわ」
「ありがとうございます。そう言っていただけると助かります」
シルヴァがほっとしたように笑った。
「ですが!」
ガブリエルは、そこで人差し指を立てた。
「私にも切り札というものがありますの!」
「切り札?」
マドカが目を輝かせる。
「ええ!」
「ちょっと待ちなさいよ!」
キシリアが慌てて割って入った。
「別に、私だってプライドと組みたいわけじゃないんだからね!?」
「おい! 俺も別に、お前と組みたいなんて言ってねえぞ!」
「誰があんたに聞いたのよ!」
「お前が先に言ったんだろうが!」
「……求められているのは、男性グループじゃなかったのかよ」
プライドは、話の方向が分からなくなったらしく、頭をかいた。
『また始まったw』
『誰もプライドさんと組みたいかどうか聞いてないんだよなあ』
『キシリア様、先回りして否定してるのが怪しいw』
『男性ユニットの話をしてたはずなのに、なぜこうなる』
「ふふっ。もちろん、男性ユニットのお話も進めますわよ?」
ガブリエルは余裕たっぷりに答えた。
「ただ、私自身も演奏できますからね!」
「そういえば、ガブちゃんってギターとキーボードができるんだよね?」
マドカが尋ねる。
「ええ。それだけではありませんわ!」
ガブリエルは、得意げに胸を張った。
「ギター、バイオリン、ピアノ、キーボード。これらは、すでに習得しておりますの!」
「えっ、バイオリンも!?」
マドカが驚く。
「すごいね! いつの間にそんなに練習してたの!?」
「学園生活の合間に、こつこつと練習しておりましたわ。もちろん、まだまだ磨く余地はありますけれど!」
「いや、十分すごいですよ……」
シルヴァが感心したように呟いた。
「それだけ演奏できるなら、ユニットの編成も幅広く考えられそうですね」
「でしょう?」
ガブリエルは満足そうに頷いた。
『ギター、バイオリン、ピアノ、キーボード!?』
『ガブちゃん、いつ練習してたんだよ!』
『学園生活とダンジョン攻略とモンバトと楽器……時間の使い方がすごい』
『しかも本人はまだまだって言ってるw』
『これは切り札を持ってる顔ですわ』
「そして、私の最大の切り札は……!」
彼女は、そこで一拍置いた。
「お姉様ですわ!」
「……エレノア王女殿下ですか」
シルヴァが思わず声を漏らした。
「確かに、音楽のたしなみもありますし、歌も見事でしたね」
「ええ。これはなかなか厄介な相手ですわね……」
アナスイも真剣な顔で頷いた。
「お姉様が参加なさるとなれば、私のユニットもかなり強力になりますわ!」
「エレノアも歌うの!?」
マドカが嬉しそうに身を乗り出す。
「うん! それは見てみたいかも!」
「ふふふ……。そうでしょう、そうでしょう!」
ガブリエルは、すっかり勝ち誇った様子だった。
『エレノア王女殿下が参戦!?』
『それは確かに強力な切り札だ』
『ガブちゃん、自分の実力だけじゃなくてお姉様まで!』
『エレノア様の歌、聴いてみたい!』
『これはユニット同士の勝負が楽しみになってきたな』
だが、そこで彼女は、さらにとんでもない提案を口にした。
「では、ユニットの活動開始まで、あと一か月といたしましょう!」
「一か月!?」
キシリアが声を上げた。
「ええ。一か月あれば、歌も演奏も練習できますし、配信の準備だってできるはずですわ!」
「いや、ずいぶん急だな……」
プライドが呆れたように呟いた。
「もちろん、皆さんにはそれぞれ準備していただきますわよ!」
ガブリエルは、手元のメモを見ながら説明を始めた。
「まず一組目は、アナスイさんと嫉妬の勇者様!」
「ええ、わたくしとキシリアさんですわね」
「そうよ! アナスイには負けないんだから!」
キシリアは、すっかり勝負モードになっていた。
「二組目は、シルヴァさん、ジャスティスさん、プライドさん!」
「おう! やるからには本気でやるぜ!」
ジャスティスが勢いよく拳を握る。
「……俺もやることになってるのか」
プライドは少しだけ困惑していた。
「もちろんですわ! 男性ユニットとして、どこまで人気を集められるか、楽しみにしておりますわよ!」
「まあ、せっかくだからな。やるなら、ちゃんとやってやるぜ」
プライドも、ようやく腹をくくったようだった。
「そして三組目が、私とヒナタ、ルーデウスお兄様を中心とした新ユニットですわ!」
「なるほど。三組で勝負するということですね」
シルヴァが確認する。
「ええ! そして……」
ガブリエルは、最後にもう一度メモを確認した。
「アーノルドさんは……」
「おう」
アーノルドが腕を組んで返事をする。
「……よく分かりませんわね」
「おい」
「いえ、だってアーノルドさんは、歌を歌いたいのか、演奏したいのか、それとも踊りたいのか、まだよく分かりませんもの!」
「ドラムならやってみたいとは言ったぞ」
「では、そこも含めて検討ですわね!」
ガブリエルは、あっさりと話をまとめた。
『三組の顔ぶれが決まってきた!』
『アーノルドさん、ドラム担当になる可能性があるのか』
『男性ユニット、楽器構成次第でかなり変わりそう』
『ガブちゃん、審査しながら編成まで決めてるw』
「とにかく! ユニット開始まで一か月! それぞれ練習して、準備を整えてくださいませ!」
「……それで、何を競うんだ?」
プライドが尋ねた。
ガブリエルは、にっこりと笑った。
「売り上げですわ!」
「売り上げ!?」
キシリアが目を丸くする。
「ええ。活動開始後、三組で売り上げ勝負をいたしますの! 配信の収益、音楽の販売、グッズなど、何をどこまで扱うかはこれから決めますけれど……」
ガブリエルは、楽しそうに続けた。
「せっかくユニットを組むのですもの。皆さんに楽しんでいただくだけでなく、どれだけ支持していただけるのかも確かめたいですわ!」
「おお……! 面白そうじゃん!」
マドカが手を叩いた。
「三組で売り上げ勝負かぁ! これは盛り上がりそうだね!」
「ええ。もちろん、ただ勝てばいいというわけではありませんわ。皆さんに楽しんでいただける活動をすることが大前提ですもの!」
「ふふっ。いいですわね」
アナスイも楽しそうに微笑んだ。
「勝負となれば、わたくしも手を抜くつもりはありませんわよ」
「望むところよ!」
キシリアが胸を張る。
「絶対に勝ってみせるわ!」
「僕も、やるからには真剣に取り組みますよ」
シルヴァも頷いた。
「演奏もDJも、できることを増やしていきたいですね」
「俺だって負けねえぞ!」
ジャスティスが拳を握る。
「よし、俺もやるなら本気でいくぜ!」
プライドも、ようやく乗り気になってきた。
『売り上げ勝負って、かなり本格的だな!』
『配信、音楽、グッズ……何を出すかで戦略が変わりそう』
『キシリア様、絶対に勝つ気だw』
『アナスイさんも本気だし、これは楽しみ』
『男性ユニットも頑張れ!』
『ガブちゃんの切り札、エレノア様までいるのは強いな』
ただし、ガブリエルはそんな彼らを見て、満足そうに頷くだけだった。
「ふふふ……。皆さん、楽しみにしておりますわよ?」
その笑顔には、すでに勝利を確信しているかのような自信があった。
こうして、新たに三組のユニットが結成されることになった。
一か月後、それぞれのユニットがどんな活動を見せるのか。
そして、売り上げ勝負の結果はどうなるのか。
エキドナの屋敷では、音楽活動をめぐる新たな競争が始まろうとしていた。




