ガブちゃん配信5
# 新ユニット結成!?――ガブちゃん、モンバトで本気を出す!
モンバトの対戦画面に、勝敗が表示された。
そして、その結果を見たガブリエルは、呆れたようにプライドを見つめた。
「あなた……弱すぎませんこと?」
「なっ……!?」
プライドは目を見開いた。
「な、なんでだよ! 王女がこんなに強いとか、ありえんのか!?」
「失礼ですわね!」
ガブリエルは頬を膨らませた。
「王女だからといって、ゲームが下手だと決めつけないでいただきたいですわ!」
「いや、そういう意味じゃねえよ! お前、さっきまで学生だって言ってただろうが!」
「学生でも、強くなれますわよ?」
「そういう問題か!?」
言い合う二人を見て、マドカがくすくすと笑った。
「まぁ、ガブちゃんはモンバトの大会で準優勝してるしね。自分でダンジョンに行ってデータも取ってるんだよ」
「……は?」
プライドの動きが止まった。
「準優勝?」
「ええ!」
ガブリエルは得意げに頷いた。
『あ、そういえばガブちゃん大会の準優勝者だった!』
『プライドさん、対戦相手の情報を知らずに挑んだのかw』
『王女だから強いんじゃなくて、本人が強いんだよな』
『初戦で相手の実力を思い知らされてるw』
「最初は私も弱かったので、データを購入していましたわ。でも、最近では学園の皆さんと一緒に、三十階層までは到達しておりますの!」
「三十階層!?」
今度はキシリアが声を上げた。
「ちょっと待ちなさいよ! あんた、学生なのにそんなところまで行ってるっていうの!?」
「そうですわよ?」
ガブリエルは、何でもないことのように答えた。
「もちろん、最初から順調だったわけではありませんわ。皆さんと協力しながら攻略を進めて、少しずつ強くなってきたんですの」
「いやいや、待ってよ!」
マドカが笑いながら補足する。
「最初のうちは、私たちもレベリングに付き合って連れてったんだよ。十九階層までは一緒に連れていって、強化訓練もしたんだけどね」
「なるほど……。そこまではエキドナが手伝っていたのですね」
シルヴァが頷く。
「そうそう! でも、それ以降はエキドナはほぼノータッチだね。ガブちゃんが自分たちで攻略してるんだよ」
「ほぼノータッチ……?」
プライドは、信じられないという顔でガブリエルを見た。
「じゃあ、二十階層から三十階層まで、自分たちで攻略したってことか?」
「ええ。もちろん、装備や攻略に必要な情報を整えながらですわ」
『十九階層まではエキドナの支援があったのか』
『そこから先は自分たちで攻略したの!?』
『学生パーティーで三十階層まで到達してるの、普通にすごいな』
『手伝ってもらった経験を活かして、自分たちで進んだんだな』
『ガブちゃん、思ってた以上に冒険者してる!』
ガブリエルは指を立てた。
「それに、最近は技術班にも弟子入りしておりますの!」
「技術班に?」
「装備を自分で作ってみたくなりましたのよ! 素材も自分で集めて、加工方法を学んで、実際に装備を作る。これがなかなか面白いんですわ!」
「……自分で素材を集めて、装備まで作るのか」
プライドは呆然としていた。
王女であり、学生でありながら、ダンジョン攻略を進め、モンバトのデータを集め、装備の製作まで学んでいる。
しかも、それを趣味として楽しんでいるらしい。
「マジかよ……。俺らより怠惰ダンジョンを知り尽くしてるんじゃねえか……?」
「ふふん! まだまだですわ!」
ガブリエルは胸を張った。
「私たちだって、まだ攻略できていない場所はありますもの!」
「いや、十分すげえだろ……」
プライドは思わず呟いた。
『素材集めから装備製作までやる王女様w』
『自分で作った装備を実戦で試すのも楽しそうだな』
『技術班に弟子入りする行動力がすごい』
『ゲームだけじゃなくて、ダンジョン攻略も本気なんだ』
『プライドさん、さっきまでの余裕がなくなってきたw』
「それに、私たちは十九階層以降も、ちゃんと自分たちで考えて攻略してきましたのよ」
ガブリエルは少しだけ真剣な顔になった。
「装備が足りなければ素材を集める。必要なデータがなければ、自分たちで調べる。勝てない相手がいれば、戦い方を見直す。そうやって少しずつ進んできたんですわ」
「……なるほどな」
プライドは、先ほどまでの余裕をすっかり失っていた。
「ただ強い装備をもらって、強い敵を倒すだけじゃねえってことか」
「もちろん、それも大事ですわよ。でも、自分で調べて、自分で試して、少しずつできることを増やすのも楽しいんですの!」
ガブリエルは笑顔を浮かべた。
「だからこそ、モンバトのデータも、自分で集めたものを大切にしておりますわ!」
『努力して強くなったタイプなのか』
『勝てない相手がいたら戦い方を見直す、か』
『ガブちゃん、ゲームでも冒険でも研究熱心なんだな』
『自分で試行錯誤するのが一番楽しいっていうの、分かる』
「私たちもだけど、三十一階層の入口が見つからなくて、そこで攻略が止まっていたんだよね」
マドカが思い出したように言った。
「ええ。長いこと探していたのですが、なかなか見つかりませんでしたの」
ガブリエルは少し悔しそうに頷いた。
「ですが、三十一階層が発見されましたでしょう?」
その表情が、ぱっと明るくなる。
「これからは、もっと強いモンスターのデータも手に入るかもしれませんわ! 新しい階層には、まだ知らないモンスターや仕掛けがあるはずですもの!」
「おお……」
シルヴァが感心したように頷く。
「新しい階層の情報が増えれば、モンバトのデータもさらに充実しますね。研究する側としても、楽しみな話です」
「でしょう!?」
ガブリエルは勢いよく身を乗り出した。
「今までのデータだけでも、いろいろな戦術を試せましたのよ! それがさらに増えるなんて、考えただけでもわくわくしますわ!」
「……なんか、目が怖いんだけど」
キシリアが少し引き気味に呟いた。
「だって、楽しみなんですもの!」
ガブリエルはまったく気にしていなかった。
『新階層の話になった途端、目の輝きが変わったぞw』
『新モンスターのデータ収集、楽しそうだな』
『モンバトの研究材料が増えるってことか!』
『キシリア様、ちょっと引いてて草』
『好きなことになると止まらないタイプだw』
そして、ふとプライドたちへ視線を向ける。
「それに……」
彼女の声に、少しだけ力がこもった。
「あなた方、勇者様もいらっしゃるでしょう?」
「俺らが?」
プライドが首を傾げる。
「ええ。今まで私たちが少しずつ積み上げてきたところへ、勇者様たちがやってきて、後ろから追いかけてくる。あっという間に追い抜かれてしまうかもしれませんわね!」
「おいおい、勝手に追い抜くことにすんなよ」
プライドが苦笑する。
「いや、でも……」
ガブリエルは、ぐっと拳を握った。
「負けられませんわ!」
その目には、先ほどまでの冗談めいた雰囲気はなかった。
「モンバトも、ダンジョン攻略も、これからもっと頑張りますわ! 勇者様たちに負けないように、私たちだって強くなってみせますの!」
「……おう」
プライドは、少しだけ表情を引き締めた。
王女だからといって、周囲に守られているだけではない。
自分で努力し、仲間と協力し、目標に向かって進んでいる。
それは、彼が思っていた以上に立派なことだった。
『勇者相手でも負ける気はないんだな!』
『こういう負けず嫌いなところ、いいな』
『学生側もちゃんと努力して強くなってるんだ』
『プライドさん、ガブちゃんを見る目が変わったか?』
だが、ガブリエルはそこで、再びにっこりと笑った。
「そして、それは……ユニットも同じですわ!」
「……は?」
プライドが間の抜けた声を漏らした。
「ユニットも、ですわよ!」
ガブリエルは両手を広げた。
「せっかく新しいユニットを結成するのですもの! 中途半端な活動をするつもりはありませんわ! 歌も演奏も、配信も、皆さんに楽しんでいただけるものにしたいですの!」
「お、おう……。急に熱くなったな」
「当然ですわ! モンバトだって、ダンジョン攻略だって、音楽活動だって、やるからには本気ですわよ!」
「なるほど……。つまり、ガブちゃんは全部で一番を目指してるってこと?」
マドカが尋ねる。
「ええ! 目指せるものなら、目指したいですわ!」
「いいね! そういうの、私は好きだよ!」
マドカは楽しそうに笑った。
「じゃあ、ユニットの審査も本格的にやらないとね!」
「もちろんですわ!」
『ゲームも攻略もユニットも、全部本気!』
『ガブちゃん、やるからには徹底的にやるタイプだな』
『技術は練習で伸ばすとして、まずは人間性を見る審査だったな』
『この熱意なら、ユニット活動も期待できそう!』
ガブリエルは、再びプライドへ視線を向けた。
「というわけで、プライドさん。まずはモンバトの腕前を、もう少し見せていただきましょうか?」
「……まだやるのかよ!?」
「当然ですわ! 今の一戦だけでは、あなたの実力を判断できませんもの!」
「さっき弱すぎるって言ったじゃねえか!」
「それはそれ、これはこれですわ!」
「納得いかねえ!」
エキドナの屋敷に、プライドの叫び声が響き渡った。
『追加対戦が決定してしまったw』
『ファンサの勉強はどこへ行ったんだよ!』
『でも、プライドさんの趣味を知るって意味では審査の続きか』
『ガブちゃん、勝負になると容赦ないなw』
『プライドさん、次こそ一矢報いてくれ!』
こうしてガブリエルの審査は、ユニットの適性を確かめるはずが、いつの間にかモンバトの追加対戦へと発展していくのだった。




