ガブちゃん配信3
# 新ユニット結成!?――ガブちゃんが考える人気ユニットの条件
ガブリエルは手元のメモを確認しながら、集まった面々を見渡した。
「まず、色欲大陸の方が音楽活動は盛んですわね?」
「そうなの?」
マドカが首を傾げる。
「ええ。色欲大陸では、音楽に関係する活動や配信もいろいろ行われていますわ。それに比べて、怠惰大陸での音楽活動は……」
ガブリエルは、少し考えてから指を折った。
「トライアングルwithDJニコ。配信で確認できるのは、これくらいですわね」
「まあ、確かにそうね」
アナスイが頷いた。
「女の子四人のユニットですから、見た目にも華やかですし、実際に人気がありますもの」
「そうそう!」
キシリアが嬉しそうに胸を張る。
「トライアングルは男女ともに人気よ! ライブだって盛り上がるんだから!」
「いやー、照れるね!」
マドカは頬をかきながら笑った。
「でも、みんなが楽しんでくれるなら嬉しいよ!」
『色欲大陸って、音楽活動も盛んなのか!』
『大陸によって、芸能や配信の広まり方も違うんだな』
『怠惰大陸はトライアングルが代表格って感じか』
『DJニコまで含めて四人なのがいいんだよな!』
『トライアングル、男女どっちにも人気なのか!』
「なるほどな……」
プライドは腕を組み、ガブリエルを見た。
「それで、王女様。何か考えがあるんだろ?」
「ええ、もちろんですわ!」
ガブリエルは待ってましたとばかりに頷いた。
「まず、学園の皆さんは、かっこいい男性だけのユニットを求めていらっしゃいましたわ!」
「なるほどな」
プライドは納得したように頷く。
「下手にアナスイやキシリアが絡むより、そっちの方が問題は少なそうだな」
「それはいいわね!」
キシリアもすぐに賛同した。
「つまり、私たち女性陣のユニットと、男性陣のユニットで勝負みたいなものね! アナスイとだって、人気で勝負できるじゃない!」
「あら?」
アナスイは優雅に微笑んだ。
「キシリアさんは、わたくしに勝てると思っていらっしゃるのですわね?」
「な、何よ! やってみなきゃ分からないでしょう!?」
「ふふっ。そうですわね。楽しみにしておりますわ」
「その余裕が気に入らないのよぉ!」
『おっと、キシリア様が勝負を仕掛けた!』
『アナスイさん、余裕の笑顔w』
『まだユニットの審査中なのに、もう対決が始まってるぞ!』
『女性ユニット同士の人気勝負、これは楽しみ』
『ガブちゃん、審査を進める前から火花が散ってます!』
早くも火花を散らす二人を、ガブリエルは楽しそうに眺めていた。
「まあまあ。まずは、それぞれの魅力を確認していきましょう」
そう言って、ガブリエルはキシリアへ向き直った。
「今日初めてお会いした嫉妬の勇者様。綺麗な黒髪で、とっても素敵ですわね。それに、お顔もよくおモテになりそうですわ」
「な、何よぉ……」
キシリアの頬が、ほんのりと赤くなる。
しかし、すぐに得意げな笑みを浮かべた。
「わ、分かってるじゃない! そうなのよ! 私だって、なかなか魅力的でしょう?」
「ええ。とても目を引く方だと思いますわ」
「ふふん!」
キシリアは満足そうに胸を張った。
『キシリア様、褒められた瞬間に元気になったw』
『黒髪と赤い瞳の組み合わせ、確かに目立つよな』
『ガブちゃん、褒めるのが上手いな』
『これは自己肯定感が上がる審査ですわw』
『アナスイさんとの勝負、始まる前から火花がすごいw』
「それから、シルヴァさんとアナスイさんは、エキドナの配信でもよくお見かけしますわね。お二人とも、もう有名になってきているのではありません?」
「そうですね。最近は、よくサインを頼まれます」
シルヴァは少し照れくさそうに笑った。
「僕自身、そこまで注目されるとは思っていなかったのですが……ありがたいことですね」
「ふふっ。わたくしも、皆様に覚えていただけるのは嬉しいですわ」
アナスイも微笑む。
「特にアナスイさんは、ジュリエットちゃんとロミオくんのペット配信も相当な人気ですわよね!」
「あら、ありがとうございます」
アナスイの表情が、ぱっと明るくなった。
「もちろん、二匹とも大切な家族ですもの。これからも、たくさん可愛がってあげたいですわ」
『ジュリエットちゃんとロミオくん、かわいいもんな!』
『ペット配信は癒やし枠』
『アナスイさん、二匹の話になると表情が柔らかくなるよね』
『シルヴァさんもサインを頼まれるのか! 人気者だなあ』
『男性ユニットを作るなら、シルヴァさんは外せないだろ』
『音楽以外の活動も、人気につながるんだな』
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
キシリアが慌てて声を上げた。
「私だって、キャリーとの配信はキシラーも応援してくれているんだから!」
「もちろん、知っていますわよ」
ガブリエルはにっこりと頷いた。
「キャリーちゃんとの配信も、人気がありますものね」
「そうよ! キャリーはかわいいし、私たちの配信だって見どころがあるんだから!」
キシリアは少し前のめりになった。
「キシラーだって、いつも応援してくれているのよ!」
「うんうん。あれもいいよね!」
マドカが楽しそうに頷く。
「実はさ、今度キャリーとキシリアさんのグッズを作ろうかなって思ってたんだよね!」
「……えっ?」
キシリアの目が大きく開いた。
「グッズですって!?」
「うん! キャリーと一緒のイラストとか、ぬいぐるみとか、いろいろ作れそうじゃない?」
『えっ、キャリーちゃんのグッズ!?』
『キシリア様とのセット商品は欲しい!』
『マドカちゃん、さらっと新企画を発表したぞw』
『キシラー歓喜の予感!』
『ぬいぐるみ、絶対かわいいやつじゃん!』
「マドカってば!」
キシリアは一瞬で笑顔になった。
「かわいく頼むわよ!? キャリーのかわいさを最大限に引き出してちょうだいね!」
「もちろん! キシリアさんもかわいくするよ!」
「私も!?」
「そりゃそうでしょ! 二人のグッズなんだから!」
「そ、そうよね! ふふっ、楽しみにしているわ!」
先ほどまでアナスイとの勝負を気にしていたキシリアは、すっかりグッズの話に夢中になっていた。
『勝負のこと、もう忘れてない?w』
『キャリーちゃんのグッズが最優先になったw』
『キシリア様、分かりやすすぎる!』
『マドカの企画力、さすがだな』
『本人のグッズも出ると聞いて、急に乗り気になるの好きw』
「……ただ~」
ガブリエルが、ぽつりと声を漏らした。
「ん?」
マドカが顔を上げる。
「ん? 何かあるの?」
キシリアも、少し警戒した様子でガブリエルを見た。
その視線が、ゆっくりと横へ移る。
プライドは嫌な予感を覚えたらしく、二人から目を逸らした。
「おい。こっち見るなよ!」
「あなた……プライドさんでしたわね」
ガブリエルは改めて彼の姿を眺めた。
ごつい体格。鋭い目つき。荒っぽい立ち姿。
そして、本人が特に隠す気もない、いかにも強そうな雰囲気。
ガブリエルは少しだけ身を引いた。
「……少し怖いんですわ」
「またそれかよ!」
プライドが即座に抗議する。
「オラオラ系で……」
「だから、オラオラ系って何なんだよ!」
ガブリエルは困ったように首を傾げた。
「う~ん……。なんと申しましょうか。近くにいるだけで、何か怒られそうな気がするんですわ」
「別に怒ってねえだろうが!」
「ほら、今も少し怖いですわ!」
「お前なぁ……!」
プライドは頭を抱えた。
『プライドさん、見た目だけで損してるw』
『本人は普通にしてるつもりなのが面白い』
『オラオラ系って言われても、本人には分からんだろw』
『ガブちゃん、怖がってるのにちゃんと観察してるな』
『男性ユニット、歌う前から審査が始まってるw』
キシリアはその様子を見て、思わず吹き出した。
「ぷっ……! あはははっ! ちょっと、プライド! あんた、初対面の王女様にまで怖がられてるじゃない!」
「お前だって、さっきまでガブリエルに品定めされてたじゃねえか!」
「私は褒められたもの!」
「くそっ、なんで俺だけこうなるんだよ!」
「ふふっ。お二人とも、ずいぶんと個性がはっきりしていますわね~」
ガブリエルはメモを見下ろし、真剣な顔で何かを書き加えた。
「ふむふむ……。男性ユニットの候補としては、少々考える必要がありそうですわね~」
「おい! 勝手に落選させるんじゃねえぞ!」
「まだ落選とは言っておりませんわよ?」
「そのメモに何を書いてるんだよ!」
「第一印象についてですわ~」
「絶対に余計なことを書いてるだろ、それ!」
『第一印象の欄に何を書かれたんだw』
『プライドさん、まだ歌も聴かれてないのに!』
『ここから挽回できるのか!?』
『人間性の審査って、こういうところを見るのか』
『技術は練習できても、第一印象は難しいなw』
エキドナの屋敷に、プライドの抗議とキシリアの笑い声が響き渡った。
どうやら男性ユニットの審査は、演奏の腕前を確認する前から、波乱含みのスタートになりそうだった。




