ガブちゃん配信2
# 新ユニット結成!?――ガブちゃんの審査と恋愛疑惑
エキドナの屋敷。
マドカに呼び集められた面々が集まると、ガブリエルはさっそく一人ずつ顔を眺め始めた。
まるで品定めでもするかのような視線に、プライドが早々に眉をひそめる。
「ふーん。あなた方が勇者ですのね~。ほーん……」
「おい、マドカ。なんだこいつは!」
プライドが小声で抗議した。
「なんでこんなに品定めみてぇな目で見てきやがる!」
「ガブちゃん、審査するって張り切ってたからね!」
「いや、だからって、そんなにじろじろ見る必要ねえだろ!」
『初対面からめっちゃ見られてて草』
『プライド、さっそく警戒してるw』
『ガブちゃん、審査する気満々だな』
『マドカは完全に面白がってるだろw』
「失礼ですよ。怠惰第二王女殿下のガブリエル様です」
シルヴァが、呆れたようにプライドをたしなめた。
「第二王女だと!?」
プライドは改めてガブリエルを見た。
「……王女様なのかよ」
「今さら気づいたんですの?」
ガブリエルは、ふふんと胸を張った。
「そうですわよ。私は怠惰スリーピアの第二王女、ガブリエルですわ!」
「いや、俺は初対面なんだから知らねえよ!」
『王女様だと知らずに文句言ってたw』
『プライド、相手の身分くらい確認しようぜw』
『ガブちゃん、堂々としてるなあ』
『そりゃ初対面なら知らなくても仕方ないw』
「まあまあ、プライド。落ち着いてください」
シルヴァが苦笑する。
その横から、アナスイが懐かしそうにガブリエルへ声をかけた。
「ガブリエル様、最近はお顔を拝見しておりませんでしたわね」
「あら、アナスイさん! お久しぶりですわ~」
ガブリエルは嬉しそうに手を振った。
「やっと三年生になりましたの! エキドナの正式メンバーになれるまで、あと一年もありますわ。長いですわね~」
「ふふっ。早く正式メンバーになりたいのですわね」
「そうなんですのよ~。早く皆さんと一緒に活動したいですわ!」
『ガブちゃん、今年から三年生なのか』
『あと一年かあ。本人としては待ち遠しいだろうな』
『正式加入したら、さらに忙しくなりそうw』
『それだけエキドナに入りたいんだね』
ひとしきり近況を話したガブリエルは、ふと思い出したようにシルヴァとアナスイへ視線を戻した。
「ところで?」
にっこりと微笑む。
「アナスイさんとシルヴァさんって、私とユニットを組むのではなくって?」
「ええと……その話なのですが」
シルヴァは少し困ったように頬をかいた。
「リゼット様のご命令で、急遽そういう話になりまして……」
「そうですの」
ガブリエルはにこにこと頷いた。
しかし、その目はまったく笑っていなかった。
「つまり、私がいない間に、別のユニットを組むことになったんですのね~?」
「い、いや、そういう言い方をされると、少し違う気もしますが……」
『ガブちゃん、笑顔なのに目が笑ってないw』
『シルヴァさん、説明がんばれ』
『これはちょっと気まずいw』
『別のユニットって言われると確かにそうなんだけどw』
「私はどこでも輝けますので、メンバーにこだわりはありませんわ」
アナスイは余裕たっぷりに微笑んだ。
「ただ、こうして改めて考えると、ユニットの組み合わせというのも、なかなか難しいものですわね」
「ええ。ですから、少し気になっていることがありますの~」
ガブリエルは、周囲を見渡してから、もったいぶるように口を開いた。
「最近の傾向ですと……なんと」
「傾向?」
キシリアが怪訝そうに眉をひそめる。
アナスイは興味を持ったらしく、ガブリエルへ身を乗り出した。
「まあ。いったい、どのような傾向ですの?」
ガブリエルは、にっこりと微笑んだ。
「同じユニットに所属している男女は、恋仲だと思われる可能性が高いそうですわ~」
「…………は?」
キシリアの動きが止まった。
『あー、そういう噂って出るよな』
『男女ユニットだとそう見られることもあるのか』
『ガブちゃん、いきなり何の話を始めたんだw』
『キシリア様の顔が止まったぞw』
「えっ、ちょっと待ちなさいよ。それって……」
キシリアは、ゆっくりと隣にいるプライドを見る。
続いて、シルヴァを見る。
「もしかして、私がプライドとかシルヴァと付き合っているように見られるってこと!?」
「……ああ、そういう問題もあるんです?」
シルヴァは、ようやく話の意味を理解したように頷いた。
「なるほど。確かに、配信で一緒に活動していれば、そういうふうに受け取る方もいるかもしれませんね」
「ちょっと! なんでそんなに冷静なのよ!」
「いえ、僕自身は特に気にしていませんので……」
「私は気にするわよ!」
キシリアが即座に叫ぶ。
『キシリア様、そこは気になるんだw』
『シルヴァさんは平常運転』
『プライドの名前が出た瞬間に反応してるの草』
『本人が嫌なら仕方ないけど、そんなに嫌なのかw』
その反応を見て、ガブリエルは満足そうに頷いた。
「そうでしょう? 最近、学園でも配信をご覧になっている方から、よく聞かれるんですのよ。エキドナの中では、どなたとどなたが恋愛関係なのか、と!」
「へー! そんなのあるんだ!」
マドカが、面白そうに目を輝かせた。
「ありますわぁ~!」
ガブリエルは、ここぞとばかりに指を立てた。
「例えば、ニコラ博士とエジソンさんが怪しいとか!」
「……えっ?」
マドカが瞬きをする。
『ニコラ博士とエジソン!?』
『そこを組み合わせるのかw』
『技術班の二人まで噂になってるのかよw』
『マドカの反応が気になるんだがw』
「シルヴァさんとアナスイさんは、お互いに満更でもなさそうとか!」
「アナスイさんは魅力的ですが、同僚ですからね。そういう関係ではありませんよ」
シルヴァは困ったように笑った。
「ええ。シルヴァさんは頼りになる仲間ですわ。それ以上でも、それ以下でもありませんの」
アナスイも穏やかに頷いた。
『シルヴァさん、褒めるところは褒めるんだなw』
『アナスイさんもきっぱり否定』
『仲がいいとすぐ恋愛の噂になるのか』
『本人たちの関係は本人たちにしか分からないよな』
「それから、ジャスティスさんとマドカは仲がいいとか!」
「えー……ないわー……。私とこいつがそういう関係とか、侮辱かも!」
「おい! どういう意味だよ!」
ジャスティスが即座に抗議した。
「だって、あんたロリコンだと思われてんだよ!?」
「……あっ! そういうことか!」
ジャスティスは、何かに納得したように手を打った。
「いや、俺はお姉さんタイプが好きだ!」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「いや、俺の好みは関係あるだろ!?」
「どっちにしても、私とジャスティスはありえないからね!」
「俺だって、マドカとはそういう関係じゃねえよ!」
『マドカ、容赦なくて草』
『ジャスティス、ロリコン疑惑を否定するために好みを暴露w』
『お姉さんタイプが好きって、今ここで言う必要あった?w』
『二人とも全力で否定してるw』
『ジャスティスはジャスティスだからなあw』
ジャスティスは不満そうにマドカを見た。
「そもそも、なんで俺がロリコンだと思われてるんだよ!」
「だって、あんたの言動を見てたらそう思われても仕方ないじゃん!」
「どの言動だよ!?」
「いちいち説明しなきゃ分かんないの!?」
「分かんねえから聞いてんだろうが!」
「はいはい、二人ともそこまでですわ~!」
ガブリエルが楽しそうに割って入った。
「まあ、そういう噂が出るくらいには、皆さんの配信が注目されているということですわね~」
「いや、注目されるのは嬉しいけどさ! 恋愛関係まで勝手に決められるのは困るよね!」
マドカは苦笑した。
「配信を見ている方々が、仲のいい人同士を結びつけて想像することはあるのでしょうね」
アナスイは落ち着いて言った。
「けれど、実際の関係は本人たちにしか分かりませんわ。仲がいいからといって、恋愛関係とは限りませんもの」
「そのとおりですね」
シルヴァも頷く。
「活動中の連携や普段の付き合い方を見て、視聴者の方々がいろいろ想像するのでしょう。面白がっているだけならともかく、本人が困るような決めつけは避けてほしいところですが」
『シルヴァさんの言うとおりだな』
『仲がいいのと恋愛関係なのは別だよね』
『噂を楽しむにしても、本人が嫌がるならほどほどに』
『それはそうとしてジャスティスとマドカのやり取りは面白いw』
「そうそう! 私とジャスティスなんて、そういうのじゃないからね!」
「だから、なんで俺だけそんなに否定されるんだよ!」
「だって、ジャスティスはジャスティスじゃん?」
「どういう意味だよ!?」
「そのままの意味!」
「ひどくないか!?」
ジャスティスの抗議に、ガブリエルは楽しそうに笑った。
そんなやり取りを眺めていたキシリアが、ふと何かに気づいたように顔を上げた。
「……ちょっと待ちなさいよ」
視線が、ゆっくりとプライドへ向く。
「つまり……私とプライドも、そういうふうに見られる可能性があるってこと?」
「…………」
プライドは固まった。
「……マジかよ」
『あっ、そこに気づいたw』
『キシリア様、今まで考えてなかったのかw』
『プライドも固まってるじゃんw』
『この二人が同じユニットになったら、噂は出そうだな』
キシリアは、勢いよくガブリエルへ向き直った。
「ちょっと! それ、本当なの!? 私がこいつとくっつけられるわけ!?」
「可能性のお話ですわよ~?」
「可能性でも嫌よ!」
「おい、キシリア! 俺だって、いきなりそんな話をされても困るんだが!?」
「あなたは黙ってなさい!」
「なんで俺だけ怒られるんだよ!?」
ガブリエルは二人の反応を見比べ、にっこりと微笑んだ。
「ふふふ。なるほど……お二人とも、恋愛関係だと思われるのは嫌なのですわね~?」
「嫌よ!」
「嫌に決まってんだろ!」
見事に声が重なった。
『いや、今のは息ぴったりだったw』
『否定するタイミングまで一緒なの草』
『キシリア様とプライド、相性いいんじゃない?』
『だから違うって言われるぞw』
『本人たちが全力で否定してるのがまたw』
その瞬間、マドカがぽつりと呟く。
「……あれ? 今の、息ぴったりじゃなかった?」
「マドカぁぁぁっ!」
「お前、余計なこと言うなぁぁぁっ!」
『マドカ、追撃やめたげてw』
『息ぴったりなのは事実なんだよなあ』
『二人とも、そこは否定しなくていいのかw』
『ガブちゃん、初対面から飛ばしすぎだろw』
「ちょっと! 誰よ、相性がいいとか言ってるのは!」
キシリアが配信カメラへ向かって叫んだ。
「俺に聞くな! 俺だって好きで息を合わせたわけじゃねえ!」
「そこは合わせなくていいのよ!」
「お前が合わせてきたんだろうが!」
「合わせてないわよ!」
「今も声が重なってるじゃねえか!」
「あなたが私に合わせてるんでしょうが!」
「だから違うって言ってんだろ!」
もはや何を否定しているのか分からなくなってきた二人を、ガブリエルは楽しそうに眺めていた。
「ふふっ。皆さん、ずいぶんと仲がよろしいんですのね~!」
「ガブリエルぅぅぅっ!」
「お前も煽るなぁぁぁっ!」
『ガブちゃん、完全に楽しんでるw』
『この二人、ずっと言い合ってるなw』
『恋愛関係はともかく、コンビとしては面白い』
『ユニットの審査より先に、相性の話で盛り上がってるじゃんw』
こうして、ガブリエルによるユニットの審査は、肝心の歌や演奏の話に入る前から、思わぬ方向へ盛り上がっていくのだった。




