↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落内円は落ちている  作者: 七風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
589/606

終わらないダンジョン拡張計画



 ダンジョンマスタールーム。


 室内の大型モニターには、氷に覆われた洞窟を進む五人の姿が映し出されていた。


 キシリア、プライド、シルヴァ、アナスイ、ジャスティス。


 彼らは現在、二十四階層を攻略している最中だった。


「おっ、また壊したぞ」


 ゲンナイがモニターを見ながら笑った。


 画面の中では、キシリアが何かに腹を立てた様子で氷の壁を叩き壊している。


「キシリアさん、さっきからずっと怒ってるね!」


 マドカが楽しそうに笑った。


「……あの勇者……なんか怒ってる……」


 チヨがぽつりと呟く。


「氷の反射を利用した仕掛けでしたね。自分の自信を揺さぶるような言葉が聞こえるのでしたか」


 ガイルが丁寧に確認すると、リゼットが頷いた。


「ええ。あの五人がどう受け取るかは、それぞれでしょうけれど」


「ふむ。精神を揺さぶる仕掛けか。おもしろそうではないか!」


 ムサシが腕を組み、感心したように声を上げた。


「ムサシ、実際に自分がやられたらどうなるか分からないよ~?」


 ニコラがのんびりと言う。


「なに、ワシなら問題ない!」


「そうかな~?」


「なんだ、その疑わしそうな顔は!」


 そんなやり取りを聞きながら、ゲンナイは椅子の背もたれに寄りかかった。


「さて。ちょうどいい機会だし、そろそろ話しておくか」


「何をだ?」


 グレタが振り返った。


「このダンジョンの今後についてだ。今の三十階層で終わりにするつもりはねえ。四十階層まで拡張する計画が進んでる」


「……は?」


 グレタが固まった。


「四十階層だと!?」


「ちょ、ちょっと待ってください! 今まで三十階層が最深部だったはずですよね!?」


 エジソンが身を乗り出した。


「今まではな。これから先を作るんだよ」


 ゲンナイはあっさりと答えた。


「まだまだ先があるってことだ。しかも、ただ階層を増やすだけじゃねえ」


「なるほど……。新しい階層に、新しいモンスターや仕掛けを用意するということですか?」


 ガイルが尋ねる。


「そういうことだ。宝箱だって置くし、攻略する楽しみも用意する。お前らが普段やってる、何もない原っぱで適正モンスターを倒すだけの修行とは違うぜ」


「おお! それはいいな!」


 グレタが声を弾ませた。


「ただ敵を倒すだけじゃなくて、探索もできるってことか!」


「そうだ。普通に修行するより面白いだろう?」


 ゲンナイがマドカに目を向ける。


「もちろん!」


 マドカは満面の笑みで頷いた。


「だって、ゲンナイがネタバレなしで作ってくれるんだよ! 私たちだって初見で攻略できるんだから!」


「おう。俺が作るのは本気のダンジョンだ。お前らのレベルに合わせたモンスターも用意する。手加減してやるつもりはねえぞ」


「最高じゃん!」


 マドカは楽しそうに拳を握った。


「どんな階層になるのか分からないし、宝箱だって何が入ってるか分からない! 普通に修行してるより、ずっと面白そうだよね!」


「……マドカ」


 ゲンナイがじろりと睨んだ。


「お前、計画を立てた側だろうが。何を今さら初めて聞いたような顔をしてやがる」


「あはは! 楽しみなのは本当だよ!」


「誤魔化すんじゃねえ!」


 その隣で、ニコラもにこにこと頷いていた。


「私も楽しみだよ~。マドカと一緒に考えた計画だもんね~」


「ニコラ、お前もだぞ!」


「えへへ~」


「お前らなあ……」


 ゲンナイが呆れたように息を吐く。


 その様子を見て、ナナリーが勢いよく立ち上がった。


「ちょっと待ってください、マドカちゃん!」


「ん? どうしたの?」


「知ってて黙ってたの!?」


「うん、知ってたよ?」


「そこは普通に認めるんですか!?」


 ナナリーが頭を抱えた。


「四十階層まで拡張するなんて、聞いたら絶対に驚くじゃないですか!」


「だって、まだ計画を立ててる途中だったし、話す段階じゃなかったんだもん」


「それは分かりますけど……!」


「それに、まだ完成してないんだから、今から楽しみにしておけばいいじゃない!」


「そういう問題じゃないです!」


 ナナリーの抗議に、マドカは困ったように笑った。


「ごめんごめん。次からは、話せる段階になったらちゃんと教えるよ!」


「本当ですよ?」


「本当!」


 今度はアリシアが、少し頬を膨らませた。


「……マドカ、私にも最初に言っておいてくださいよ」


「あれ? アリシアも聞いてなかったっけ?」


「聞いていません!」


 アリシアはぷいっと顔を背けた。


「以前、三十一階層を見に行ったときだって、何が何だか分からなかったんですよ! あのときも驚かされたのに、今度は四十階層まで拡張するなんて!」


「三十一階層を見せたときは、まだ今回の計画を詳しく話す段階じゃなかったからね」


「だったら、今は話してくれてもいいじゃないですか!」


「うん。そこはごめんね!」


 マドカは素直に謝った。


「でも、アリシアもナナリーも、完成したら楽しめると思うよ!」


「……それは、そうかもしれませんけど」


 アリシアはまだ少し拗ねた顔をしていたが、興味がないわけではなさそうだった。


「私も、新しい階層は気になります。どんな仕掛けがあるのか、実際に攻略してみたいですし」


「でしょ!」


 マドカが嬉しそうに頷く。


「ただし、誰でも同じ条件で入れるわけじゃねえぞ」


 ゲンナイが話を引き継いだ。


「ダンジョンは、これからノーマルモードとハードモードに分ける。ノーマルは一般の冒険者向け。今までどおり、少しずつ攻略できるようにする」


「では、ハードモードは?」


 カトリーヌが尋ねた。


「エキドナの修行用だ。より強いモンスターを配置して、実力に見合った訓練ができるようにする。ただし、ハードに入るには、それ相応のレベルと実力が必要になる」


「なるほど! つまり、エキドナのメンバーなら誰でも入れるというわけではないんですね!」


 エジソンが確認する。


「そういうことだ。修行のための場所なんだから、入っただけで手も足も出ねえようじゃ意味がねえだろ」


「確かに、実力に応じて段階を踏む必要がありますね」


 ガイルも頷いた。


「アリシアとナナリーは、レベル六百を超えているから問題ないわ」


 リゼットが二人を見て言った。


「ただし、レベル二百から三百程度の者たちは、まだハードモードに挑戦する資格はないわね。まずは自分の実力を磨くことよ」


「六百超え……」


 グレタが二人を見比べた。


「改めて聞くと、やっぱりすげえな」


「でも、レベルだけで判断するわけではありませんよね?」


 アリシアが尋ねた。


「ええ。実際の戦闘能力も含めて判断するわ。レベルが条件を満たしていても、必要な実力がなければ認めるわけにはいかないもの」


「分かりました。そういうことなら、私も問題ないと認めてもらえるように頑張ります!」


 ナナリーが元気よく頷いた。


「うんうん! せっかくのハードモードなんだから、しっかり鍛えないとね!」


 マドカも楽しそうに笑う。


「もちろん、ノーマルモードも今までどおり残す。一般の冒険者が攻略を楽しめる場所まで、エキドナの都合で難しくするつもりはねえよ」


「それなら安心ですね」


 カトリーヌがほっとしたように微笑んだ。


「一般の冒険者にとっても、これから先の目標が増えるわけですから」


「そうだな。三十階層を攻略した冒険者が、次は四十階層を目指せる。ダンジョンの楽しみも広がるだろうよ」


 ゲンナイは満足そうに頷いた。


 そして、再びモニターへ視線を戻す。


「ところで……画面のあいつらはどうする?」


 氷の洞窟を進む五人の姿が映っていた。


「キシリア、プライド、シルヴァ、アナスイ、ジャスティス。この五人は、今のところノーマルでいいんだよな?」


「ええ。今回はノーマルでいいでしょう」


 リゼットはあっさり答えた。


「まだ弱すぎるもの」


「……リゼット様、容赦ないですね」


 アリシアが苦笑した。


「事実でしょう? まずはノーマルを攻略して、実力をつけてもらえばいいのよ。ハードモードは、その先の話だわ」


「ふむ。確かに、いきなり高難度に挑ませるより、段階を踏ませるほうがよいな!」


 ムサシが大きく頷いた。


「ワシも、強い相手と戦う前には準備が必要だと思うぞ!」


「おっ、ムサシも分かってるじゃねえか」


 ゲンナイが笑った。


「当然であろう!」


 ムサシは胸を張った。


 マドカはモニターを眺めながら、楽しそうに足を揺らしていた。


「いやあ、早く完成しないかなあ。私たちも初見で攻略するんだから、絶対に面白いよ!」


「まだ設計も終わってねえぞ」


「分かってるって! だから楽しみなんじゃない!」


「ははっ! そうかよ!」


 ゲンナイも豪快に笑った。


「よし。四十階層まで完成したら、次は五十階層まで拡張してやるからよ!」


「おおっ! いいね!」


 マドカが即座に食いついた。


「四十階層を攻略したら、次は五十階層! 目標が増えるのはいいことだよね!」


「……お前ら、もう次の話をしてるのか?」


 グレタが呆れたように呟いた。


「まだ四十階層すら完成していないのですが……」


 ナナリーも苦笑する。


「いいじゃない! 先の楽しみがあるんだから!」


 マドカはまったく気にしていなかった。


 ニコラも、そんなマドカを見てくすくすと笑っている。


「マドカとゲンナイが一緒だと、どんどん話が大きくなるね~」


「お前も一緒に計画を立てただろうが!」


 ゲンナイのツッコミが飛んだ。


「えへへ~」


「笑って誤魔化すな!」


 そのやり取りに、室内から笑い声が上がった。


 だが、話はまだ終わらなかった。


「……ところで、飛空艇計画はどうするんだ?」


 グレタが、ふと思い出したように尋ねた。


「ダンジョンの拡張にばかり気を取られて、そっちが止まるのは困るぞ」


「ああ、それも進めるさ」


 ゲンナイは腕を組んだ。


「素材なら、俺がダンジョンポイントを使って呼び出してやってもいい。必要なものを全部揃えることだってできるだろうよ」


「なら、すぐに建造を進められるんじゃないか?」


「だがな、なんでもかんでも俺が出してやっても面白くねえだろう? 自分たちで素材を集めて、それを使って飛空艇を造る。そういうのも醍醐味ってもんだ」


「おう、そのほうがいいな!」


 グレタはすぐに賛同した。


「ダンジョンで素材を集めれば、レベル上げにもなるしな。建造と修行を並行して進められる!」


「そうそう! 必要な素材を集めるために、いろんな階層を攻略するのも楽しそうだよね!」


 マドカも頷いた。


「もちろん、どうしても手に入らない素材はゲンナイに頼ればいいわ。全部を自力で集めることにこだわって、計画が止まってしまっても困るもの」


 リゼットが資料を確認しながら補足する。


「それと、技術班は毎日の進捗を確認して、必要な指示を出してくれ。あとは自分の研究や設計を進めてもらって構わねえ。工員の人工モンスターは、基本的に自動で作業させておけば問題ねえからな」


「なるほど! 僕たちは一日の作業結果を確認して、必要な調整をすればいいんですね!」


 エジソンが納得したように頷いた。


「それなら、新しい設備の設計にも時間を使えますね。僕としては、そちらも楽しみです!」


「建造作業そのものは、かなり効率化できそうですね」


 ガイルも感心したように言った。


「よし! じゃあ、素材集めも建造も、みんなで進めていこう!」


 マドカが元気よく声を上げる。


「ダンジョンを攻略して、素材を集めて、飛空艇も造る! 忙しくなるけど、絶対に面白いよ!」


「……マドカちゃんが一番楽しそうなのが、なんだか複雑です」


 ナナリーがぼそりと呟いた。


「えー、いいじゃん!」


「よくないです!」


 ナナリーが即座に返す。


 その様子を見て、ニコラがくすくすと笑った。


「でも、まだまだ楽しみは増えそうだよね~」


 その言葉に、リゼットがふと思い出したようにモニターを見た。


「そういえば、キシリアは芸能デビューさせたら光ると思うのよね」


「……え?」


 グレタが目を瞬かせた。


「芸能デビュー?」


「ええ。あの子、目立つことが好きでしょう? 配信でも存在感があるし、舞台に立たせたら面白そうだわ」


「確かに~。キシリアはカメラの前でも堂々としてるもんね~」


 ニコラが頷いた。


「だったら、あの五人でユニットでもやらせたらどうかしら?」


 リゼットがさらりと続けた。


「キシリアさんたち五人で!?」


 マドカの目が輝いた。


「いいね、それ! ライブもできるし、飛空艇のライブ会場を使う理由も増えるじゃない!」


「……待て。ダンジョン拡張に飛空艇の建造、それに芸能ユニットまで増えるのか?」


 グレタが額を押さえた。


「おう、忙しくなるな!」


 ゲンナイは豪快に笑った。


「いや、誰が忙しくなると思ってるんだよ!」


 グレタのツッコミが、マスタールームに響き渡った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。