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落内円は落ちている  作者: 七風


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勇者パーティー 竜狩り!


 二十四階層の氷の洞窟を抜け、五人は二十五階層へと足を踏み入れた。


 そこで待っていたのは、これまでの階層とはまるで違う光景だった。


 広大な空間のあちこちに、竜、竜、竜。


 地上を歩く竜もいれば、翼を広げて飛び回る竜もいる。遠くでは、ひときわ大きな影が悠々と首をもたげていた。


「……うわっ! なんだこれ!?」


 プライドが思わず声を上げた。


「竜がこんなにいるのかよ! おいおい、すげぇな!」


「ちょっと、ちょっと! 画面にちゃんと映しなさいよ!」


 キシリアも目を輝かせ、配信カメラを竜たちへ向けた。


「見て! あっちにもいるわ! こっちにも! ちょっと、どこを映しても竜ばっかりじゃない!」


『うおおおおお!』

『竜だらけじゃねえか!』

『二十五階層きたー!』

『キシリア様とプライド、初見の反応がいいなw』

『これは素材集めが捗りそう』

『モンバトのデータも期待できるぞ!』


「おい、あの翼のあるやつ、かなりでかいぞ!」


 プライドが遠くを指差す。


「なあ、ああいうのも戦っていいんだよな!?」


「もちろんです。ただ、種類によって素材も戦い方も違いますから、まずは手近な相手から確認しましょう」


 シルヴァは落ち着いた口調で答えながら、周囲の竜を観察していた。


「この階層は、以前も通りましたね。確か、飛行する竜の素材が欲しくて、何体か相手にしたはずです」


「ええ。ここは竜の種類が多いので、目的に合わせて相手を選びやすいんですの」


 アナスイも頷いた。


「ただ、前に来たときは先を急いでいましたから、じっくり素材を集める余裕はありませんでしたわね」


「俺も覚えてるぜ。ここは変な仕掛けを気にするより、竜を相手にしたほうがいい階層だったな!」


 ジャスティスは剣を抜き、楽しそうに笑った。


「よし! 今回はゆっくり戦えるってわけだ!」


「ちょっと待って!」


 キシリアが三人を振り返る。


「つまり、竜を倒せば素材が手に入って、モンバト用のデータも集められるってこと?」


「そういうことですね。もちろん、データの採取方法や素材の状態にもよりますが、戦闘記録を集めるにはうってつけです」


 シルヴァが答えた瞬間、キシリアの顔がぱっと輝いた。


「最高じゃない!!」


 彼女は勢いよく配信カメラへ向き直った。


「皆様! ご覧なさい! これが二十五階層よ! 竜がいっぱい! 素材もいっぱい! そして戦い放題!」


『最後だけちょっと物騒w』

『キシリア様、完全にテンション上がってるw』

『素材集めとモンバトの研究が同時にできるのはおいしい』

『プライドも戦いたくて仕方なさそう』

『今日は大規模戦闘回か!?』


「さあ、誰から行く!?」


 キシリアが勢いよく尋ねる。


「俺が行く!」


 プライドが即座に手を挙げた。


「せっかくなんだから、でかいやつと戦わせてくれよ!」


「いきなり大物を狙うのか?」


 ジャスティスが笑う。


「いいじゃねえか。初めて見る竜なんだ。どれくらい強いのか、試してみたいだろ!」


「気持ちは分かりますけど、相手の大きさだけで強さを判断しないでくださいね」


 シルヴァはそう言いながら、手元の魔導具を起動した。


「まずは周囲の反応を確認しましょう。近くにいる竜から戦闘データを集めていけば、無理なく進められます」


「そうですわね。せっかくですから、皆で連携して戦いましょう」


 アナスイが長剣を抜く。


「では、最初の相手はあちらにしましょうか」


 彼女が示したのは、岩場の近くでこちらを警戒している中型の竜だった。


 竜は五人の姿を認めると、喉の奥から低い唸り声を上げた。


「よし、来るぞ!」


 ジャスティスが前へ出る。


 竜が地面を蹴り、鋭い爪を振り下ろした。


「おっと!」


 ジャスティスは横へ跳び、爪を紙一重でかわす。そのまま剣を振り抜くと、炎をまとった斬撃が竜の前脚をかすめた。


 竜が体勢を崩した瞬間、プライドが一気に踏み込んだ。


「そこだぁっ!」


 身体強化で加速し、大剣を両手で振り下ろす。


 轟音。


 竜の巨体が地面へ叩きつけられ、周囲の砂埃が一気に舞い上がった。


「おおっ! やった!」


 プライドが歓声を上げる。


「今の、結構いい手応えだったぞ!」


『いきなり大剣の一撃!』

『プライド、パワーがすごいな!』

『ジャスティスが先に崩して、プライドが仕留めた!』

『連携もいい感じだぞ!』


「ふふっ。いいじゃない!」


 キシリアは満足そうに笑った。


「でも、まだまだこれからよ! 次は私の番!」


 彼女は竜へ向き直ると、細剣を構えた。


 その刃に、黒紫色の魔力が集まっていく。


「せっかくの配信なんだから、もっと派手にいかなくちゃね!」


 竜の身体から魔力が吸い上げられ、キシリアの周囲に赤黒い光が渦巻いた。


「さあ、私の力を見せてあげる!」


 彼女が踏み込む。


 細剣が閃き、闇の斬撃が竜の胴体を横切った。


 続けて、地面から黒紫色の魔力が噴き上がる。竜の足元を包み込み、その動きを封じた。


「今よ!」


「任せてください!」


 シルヴァが魔導具を投げる。


 装置が竜の頭上で光を放ち、動きを拘束する魔法陣が広がった。


「アナスイさん、お願いします!」


「ええ。参りますわ!」


 アナスイが風をまとって跳び上がる。


 長剣が美しい弧を描き、鋭い風の刃が竜の背中を斬り裂いた。


 竜は大きく吠え、地面へ崩れ落ちる。


「よしっ! 今の連携、最高じゃない!」


 キシリアが満面の笑みを浮かべた。


『キシリア様の闇魔法からシルヴァの拘束、アナスイさんの一撃!』

『五人の連携がどんどんよくなってる!』

『素材も取れてデータも取れて、戦闘も派手!』

『これは確かにボーナスステージだなw』


「待ってください。まだ終わっていませんよ」


 シルヴァが竜のそばへ歩み寄り、魔導具をかざした。


「戦闘記録の取得を開始します。魔力の反応、身体の構造、攻撃の特徴……よし、記録できています」


「素材の状態も確認しておきましょう。傷つけすぎると、使いにくくなるものもありますからね」


 アナスイが竜の身体を調べ始める。


「なるほどな。倒すだけじゃなく、あとで使うことまで考えるわけか」


 プライドが感心したように頷いた。


「そうです。戦闘の結果を、次の装備やモンバトのデータに活かせますから」


 シルヴァは魔導具を操作しながら説明した。


「ただ強い相手を倒すだけでは、もったいないですからね」


「ふふん。つまり、派手に戦って、素材もデータも集めればいいのね!」


 キシリアは胸を張った。


「分かりやすくていいじゃない!」


「キシリア、それだけだと少し雑じゃないか?」


 ジャスティスが苦笑する。


「何よ! ちゃんと戦い方も考えてるわよ!」


「はいはい。では、次の相手で見せてもらおうか」


「言ったわね!?」


 キシリアが振り返った、そのときだった。


 遠くの岩場で、巨大な竜がゆっくりと翼を広げた。


 その翼が風を巻き起こし、周囲の竜たちが一斉に動き始める。


 地面を走る竜。


 岩場から飛び立つ竜。


 遠くからこちらへ向かってくる竜。


 まるで、五人の戦いを見て集まってきたかのようだった。


「……おい。なんか、増えてないか?」


 プライドが目を丸くする。


「増えてますね……。戦闘の音に反応したのでしょうか」


 シルヴァが周囲を見渡した。


「なるほど。こちらから探し回らなくても、向こうから来てくれるというわけですわね」


 アナスイは剣を構え直した。


「ちょっと、ちょっとちょっと!」


 キシリアは配信カメラを竜たちへ向け、声を弾ませた。


「これ、全部相手にしていいのよね!?」


「数が多いぞ! 無理はするなよ!」


 ジャスティスが注意を促す。


「分かってるわよ! でも、せっかく集まってくれたんだもの!」


 キシリアの笑みが、ますます深くなった。


「皆様、ここからが本番よ! 今日の配信、最後まで見逃さないでちょうだい!」


『うおおおおお!』

『竜の群れきたー!』

『これは派手になるぞ!』

『キシリア様、完全に楽しんでるw』

『素材回収班とデータ収集班も忙しくなりそうだ』

『五人とも頑張れー!』


 竜たちの咆哮が、二十五階層に響き渡る。


 五人はそれぞれの武器を構え、迫りくる竜の群れへと向き直った。


 特殊な仕掛けも、複雑な謎解きもない。


 ただ、数多くの竜がいる。


 だからこそ、力を試し、連携を磨き、素材とデータを集めるには絶好の場所だった。


 そしてキシリアにとっては――。


「さあ、派手にいくわよっ!!」


 自分の配信を最高に盛り上げる、絶好の舞台だった


 二十五階層に、竜たちの咆哮が響き渡る。


 ジャスティスたちが竜を倒し、シルヴァが戦闘データを記録し、アナスイが素材の状態を確認する。その一方で、キシリアとプライドは、次々と現れる竜との戦闘にすっかり夢中になっていた。


「よっしゃあ! 次はあっちだ!」


 プライドが大剣を担ぎ、岩場の向こうにいる竜を指差した。


 先ほど倒した竜の素材を回収し終えたばかりだというのに、もう次の相手を探している。


「ちょっと、プライド! そっちはさっきの竜より大きいわよ!」


「だからいいんだろ!」


 プライドは豪快に笑った。


「せっかくこんなに竜がいるんだぞ? 戦わないともったいねえだろ!」


「ふふっ、確かにそうね!」


 キシリアも細剣をくるりと回した。


「これだけ相手がいるなら、いろんな戦い方を試せるもの! 配信的にも最高じゃない!」


『プライド、めちゃくちゃ楽しそうw』

『キシリア様も完全に狩りモードだ!』

『竜が次々出てくるの、見てるだけでも楽しいな』

『素材もデータも集まるし、これはいい階層』

『この二人、まだまだ戦い足りなさそうw』


「それにしても、ここは本当に竜が多いですね」


 シルヴァは魔導具の表示を確認しながら、感心したように呟いた。


「先ほどから記録を取っていますが、種類ごとに身体の構造も魔力の性質も違います。モンバト用のデータを集めるには、かなり都合がいいですね」


「素材の種類も豊富ですわね。同じ竜でも、鱗や爪、角など、それぞれ用途が違いますもの」


 アナスイは回収した素材を確認しながら微笑んだ。


「装備の製作にも役立ちそうですわ。これだけあれば、いろいろな用途を検討できるでしょうね」


「だろ? だったら、もっと狩ろうぜ!」


 プライドがすぐに反応した。


「次はあの竜だ! さっきのやつとは体格も違うし、攻撃の仕方も違いそうじゃねえか!」


「待ってください。せっかくですから、先に種類を確認しましょう」


 シルヴァが魔導具を向ける。


「記録を取りながら戦えば、あとで比較できますからね」


「分かった分かった! 確認が終わったら、俺が行くぞ!」


「はいはい。分かりましたから、少し落ち着いてください」


 シルヴァは苦笑しながら、竜の姿を記録していった。


 その間にも、別の竜が岩場から姿を現す。


 大きな翼を持つ竜が上空を旋回し、地上では太い尾を持つ竜がゆっくりと歩いていた。さらに離れた場所では、複数の竜が互いに距離を取りながら動いている。


 まさに竜の宝庫だった。


「……ねえ、キシリア」


 プライドが、ふと真面目な顔で声をかけた。


「ここ、かなり稼げるんじゃねえか?」


「ええ?」


「だってよ、素材はたくさん手に入るし、戦闘データも集められる。俺たちの装備だって、まだまだ強化できるだろ?」


 プライドは自分の大剣を見下ろした。


 新しい装備のおかげで、以前よりもずっと戦いやすくなっている。だが、これから先の階層を考えれば、もっと強くなっておきたいという気持ちもあった。


「だったら、ここでガッツリ稼いでおこうぜ! 素材を売るなり、必要なものを確保するなりすれば、装備代金だって貯められるだろ!」


 その言葉を聞いたキシリアの目が、ぱっと輝いた。


「……それ、いいわね!」


 彼女は勢いよくプライドへ向き直った。


「装備代金もここで稼げると思うわよ! せっかく稼ぎやすい場所があるんだもの。次へ進むことばかり考える必要はないわ!」


「だよな!」


「いい素材を確保して、余った分は売却する! それでお金を貯めて、もっといい装備を揃える! 最高じゃない!」


「うまいとこでガッツリ稼ごうぜ!」


「ええ! 大賛成よ!」


 二人は勢いよく拳を合わせた。


『急に金策の話になったwww』

『プライド、装備代金まで考えてるの偉いな』

『確かに、稼げる階層で稼ぐのは大事』

『キシリア様、こういう話になると乗り気になるの早いw』

『竜狩りがいつの間にか金策配信になってるぞ!』


「ちょっと待ってください。素材を全部売るわけではありませんよね?」


 シルヴァが、すかさず口を挟んだ。


「研究用の素材も必要です。それに、今後の装備製作に使えそうなものは、ある程度確保しておいたほうがいいでしょう」


「もちろんよ! 必要なものは残すに決まってるじゃない!」


 キシリアは胸を張った。


「研究用、装備製作用、売却用! ちゃんと分ければいいのよ!」


「それなら問題ありませんね」


「素材の状態も確認しておきましょう。傷みが少ないものや、希少な部位は、安易に売らずに保管したほうがよさそうですわ」


 アナスイも賛成した。


「そうだな。せっかく倒したんだから、無駄なく使いたいところだ」


 ジャスティスが頷く。


「データも、相手の種類ごとに整理しておけば、後から役立つはずだ。俺も記録の手伝いをするぜ!」


「よし、決まりね!」


 キシリアは配信カメラに向かって、堂々と宣言した。


「皆様! 本日の方針を変更します!」


『おっ、何が始まるんだ?』

『まさかの方針変更w』

『キシリア様、何をする気だ!?』


「二十五階層で、稼げるだけ稼ぎます!」


『ですよねーwww』

『竜狩り祭り、延長のお知らせ』

『装備代金を自分たちで稼ぐ勇者たち』

『これは長時間配信の予感!』


「ふふっ。いい反応ね!」


 キシリアは満足そうに笑った。


「それじゃあ、まずは素材集めを優先しましょう! プライドは戦闘、ジャスティスは周囲の警戒と援護、シルヴァはデータ収集、アナスイは素材の確認。私は全体を見ながら、必要に応じて加勢するわ!」


「おっ、役割分担か!」


 プライドが大剣を構え直した。


「いいぜ! それなら思いっきり戦えるな!」


「了解です。種類ごとに記録を分けておきますね」


「わたくしは、回収した素材の状態と用途を確認いたしますわ」


「俺も、戦闘が終わったら回収を手伝う。数が多いからな、手分けしていこうぜ!」


 ジャスティスもやる気十分だった。


 五人は竜たちのいる方向へと進んでいく。


 最初の一体を倒したときとは違い、今度は目的がはっきりしていた。


 ただ敵を倒して先へ進むのではない。


 戦闘を通じてデータを集め、素材を回収し、必要なものを確保し、余剰分を資金に変える。


 それぞれが役割を理解したことで、五人の動きにも自然とまとまりが生まれていた。


「じゃあ、次の相手を決めましょうか!」


 キシリアが竜たちを見渡す。


「まずは種類の違う竜を何体か相手にして、素材とデータを集めるわよ!」


「おう! 任せろ!」


 プライドが勢いよく飛び出した。


 目の前の竜が大きく咆哮し、鋭い爪を振り上げる。


 プライドは真正面から受け止めず、身体強化で一気に間合いを詰めた。


「よっしゃあっ!」


 大剣が横薙ぎに振るわれる。


 竜が大きく体勢を崩したところへ、ジャスティスが炎をまとった剣で追撃した。


「そら、こっちも忘れるなよ!」


 竜が反撃しようと翼を広げる。


 その瞬間、キシリアの闇魔法が足元から絡みつき、動きを鈍らせた。


「逃がさないわよ!」


「今ですわ!」


 アナスイの剣が閃き、風の刃が竜の側面を捉える。


 その攻撃に合わせ、シルヴァが魔導具を起動した。


「記録開始。攻撃の反応、魔力の変化、身体の動き……よし、取れています!」


 竜が倒れる。


「よしっ! 次!」


 プライドは休む間もなく次の竜へ目を向けた。


「おいおい、もう次かよ!」


 ジャスティスが笑う。


「当たり前だろ! ここで稼ぐって決めたんだからな!」


「ふふっ、そうね。今日は簡単には帰らないわよ!」


 キシリアも笑顔で応じた。


 そこから先は、まさに竜狩り祭りだった。


 五人は種類の違う竜を見つけるたびに、戦闘と記録を繰り返していく。


 プライドが前線で大剣を振るい、ジャスティスが剣と炎魔法で援護する。キシリアは闇魔法で敵の動きを封じ、アナスイが剣と風魔法で隙を突く。そしてシルヴァは、戦闘の流れを見ながら魔導具で記録を取り、必要に応じて仲間を援護した。


 戦いが終われば、素材の回収と確認。


 その次には、また別の竜との戦闘。


 同じ作業の繰り返しではあるが、相手が変われば戦い方も変わる。得られる素材も、記録できるデータも違っていた。


『この連携、かなり安定してきたな』

『プライドが前線で暴れて、ジャスティスが援護するのいいね』

『キシリア様の闇魔法、拘束にも使えるのか』

『アナスイさんの剣技、何度見ても綺麗だな』

『シルヴァさん、戦いながらデータ整理までしてるのすごい』

『これ、素材の売却額もかなり期待できるんじゃないか?』


「ふう……!」


 ひと区切りついたところで、プライドが額の汗を拭った。


「いやあ、いいな、ここ! 戦ってて楽しいし、稼げるし、最高じゃねえか!」


「でしょう?」


 キシリアは得意げに笑った。


「焦って先へ進むより、こういう場所でしっかり準備するのも大事なのよ!」


「キシリアがまともなことを言ってる……」


 ジャスティスが思わず呟いた。


「ちょっと! どういう意味よ!?」


「いや、だってお前、配信が盛り上がるとすぐ突っ走るだろ!」


「今日はちゃんと考えてるじゃない!」


「そこは認めるけどさ!」


 そんな二人のやり取りを聞きながら、シルヴァは回収した素材の一覧を確認していた。


「皆さん、かなり集まりましたよ。研究用と装備製作用に必要な分を確保しても、まだ売却できる素材が残っています」


「本当ですの?」


 アナスイが覗き込む。


「ええ。もちろん、すべてを売却するかどうかは後で検討する必要がありますが、装備代金の足しには十分な量になりそうです」


「よっしゃあ!」


 プライドが拳を握る。


「これなら、もっと強い装備を目指せるな!」


「ええ! それに、モンバトのデータも着実に集まっているわ!」


 キシリアも嬉しそうに頷いた。


「これだけ成果が出るなら、まだまだ続ける価値があるわね!」


「ただし、素材の持ち運びや保管場所も考えましょう。増えすぎると整理が大変になりますから」


 アナスイが落ち着いて指摘する。


「そうですね。一定量を確保したら、いったん整理する時間を取るのもよさそうです」


 シルヴァが同意した。


「分かったわ。じゃあ、もう少し狩ったら一度整理しましょう!」


 キシリアは再び配信カメラへ向き直った。


「皆様! まだまだ竜狩りは続きますわよ! 装備代金を稼ぎ、研究用の素材を集め、モンバトのデータも充実させる! 一石三鳥の大サービスです!」


『一石三鳥w』

『キシリア様、商売人みたいになってきたなw』

『プライドの装備代金、ちゃんと貯まりそうでよかった』

『稼げる階層でしっかり稼ぐ、これぞ冒険者』

『二十五階層、今日の配信だけで終わらなさそうw』


 五人の前には、まだまだ多くの竜がいる。


 急いで先へ進む必要はない。


 ここで素材を集め、データを蓄え、装備を整える。それは、この先の攻略を楽にするためにも意味のある時間だった。


「さあ、次の竜はどれにする?」


 キシリアが楽しそうに尋ねる。


「俺はあの翼のあるやつだ!」


 プライドが即座に答えた。


「なら、飛行中の動きも記録できそうですね」


 シルヴァが魔導具を構える。


「わたくしは、素材を傷つけすぎないように気をつけますわ」


「俺も援護するぜ。空を飛ぶ相手なら、地上とは違う戦い方が必要だからな!」


 ジャスティスが剣を掲げる。


「ふふっ。いいわね!」


 キシリアは細剣を構え、赤い瞳を輝かせた。


「それじゃあ、次も派手にいくわよ!」


 竜の咆哮が響くなか、五人は再び戦闘へと踏み出した。


 二十五階層の竜たちは、素材とデータをもたらしてくれる格好の相手。


 そして五人にとっては、装備を強化するための資金を稼ぐ絶好の機会でもあった。


 この階層で、どれだけの成果を持ち帰れるのか。


 竜狩り祭りは、まだまだ終わりそうになかった。


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