勇者パーティー22層クリア
# キシリア様のダンジョン配信!――砂漠遺跡と頑丈なゴーレム
海の上に伸びる木橋を進みながら、五人は次々と現れる魔物を片付けていた。
海中から飛び出してくる魚型の魔物も、慣れてしまえば対処は難しくない。シルヴァが水面の変化を見極め、アナスイが風魔法で敵の軌道をずらす。その隙を突いて、キシリアとプライドが攻撃を叩き込む。
ジャスティスも炎をまとった剣で魔物を迎え撃ち、順調に進んでいた。
「ふふん! 海の魔物なんて、私にかかればこんなものよ!」
キシリアは細剣をくるりと回し、配信カメラへ向かって胸を張った。
「最初は驚いたけれど、もうすっかり慣れたわね!」
「慣れるの早すぎないか?」
プライドが笑う。
「何よ。強いんだから当然でしょう?」
「いや、さっきまで海が広すぎるって騒いでたじゃないか」
「それとこれとは別よ!」
『キシリア様、さっきまで大興奮だったのにw』
『海の階層は初見でも慣れると楽しいよな』
『順調そうで何より』
『この調子なら二十二階層もすぐかな?』
やがて、長い木橋の先に石造りの入口が見えてきた。
「あそこですね。二十二階層への入口です」
シルヴァが指差す。
「ようやく着いたか。海を渡るっていうから、もっと時間がかかると思ってたぜ」
プライドが肩を回した。
「まあ、途中で魔物が出てきたくらいでしたものね」
アナスイは微笑みながら、長剣を鞘に収めた。
「それでは、先へ進みましょうか」
五人が入口をくぐると、周囲の景色が一変した。
「……暑っ!」
プライドが思わず声を上げた。
目の前に広がっていたのは、どこまでも続く砂漠だった。
頭上には強い日差しが照りつけ、乾いた風が砂を巻き上げている。遠くには崩れかけた石造りの建造物が点在し、砂に半ば埋もれた遺跡が、長い年月を経た姿をさらしていた。
「へえ……今度は砂漠か」
プライドは周囲を見回した。
「海の次が砂漠って、ずいぶん極端だな」
「そうね。さっきまで水に囲まれていたのに、今度は水が恋しくなりそうだわ」
キシリアも額に手をかざし、遠くを眺めた。
「でも、遺跡があるのはいいわね! こういう場所なら、宝物の一つや二つくらい眠っていそうじゃない!」
「そういう期待をしていると、魔物に襲われますよ」
シルヴァが穏やかに釘を刺した。
「この階層は砂漠と遺跡が中心です。遺跡の内部には魔物が潜んでいることもありますから、探索するときは注意しましょう」
「分かっていますわ。砂に足を取られないようにするのも大切ですわね」
アナスイが周囲を見渡す。
「ところで、二十三階層への入口は遺跡の奥でしたわね?」
「ええ。先へ進むには、奥にいるゴーレムを倒す必要があります」
シルヴァの説明に、プライドが反応した。
「ゴーレムか。そいつを倒せば次へ行けるんだな?」
「そういうことです。頑丈な相手ですから、攻撃を受け止めようとするより、動きを見て隙を突くほうがいいでしょうね」
「ふふっ、頑丈な相手なら、私の魔法で粉々にしてあげるわ!」
キシリアは自信たっぷりに言い切った。
「よし、じゃあ行こうぜ。いつまでも暑い場所にいるのも嫌だしな」
「ちょっと! 砂漠の景色を楽しむ余裕くらい持ちなさいよ!」
「暑いんだから仕方ないだろ!」
『二十二階層、砂漠遺跡だ!』
『この階層は景色もいいんだよな』
『遺跡の中に入るなら足元に注意だぞ』
『ゴーレム戦、初見組がどう戦うか楽しみ』
『プライドさん、暑さに弱そうw』
五人は砂漠を進み、遺跡の入口へと向かった。
崩れた石柱の間を抜けると、ひんやりとした空気が流れてくる。外の強い日差しとは違い、遺跡の内部は薄暗く、壁には古い装飾が刻まれていた。
「おお……こういうの、ちょっとワクワクするな」
プライドが壁の模様を眺める。
「分かるわ! いかにも冒険って感じがするもの!」
キシリアも楽しそうに頷いた。
「でも、宝箱を見つけても勝手に開けないでくださいね。罠が仕掛けられている可能性がありますから」
シルヴァが先回りして注意する。
「分かっているわよ! 私だって、それくらい知っているわ!」
「本当かなあ……」
「プライド、何か言ったかしら?」
「いや、何も?」
そんなやり取りをしながら進んでいくと、やがて広い石造りの空間へ出た。
その奥には、巨大な石像のようなものが立っていた。
全身を厚い岩石で覆われ、太い腕と大きな拳を備えた巨体。頭部には赤い魔力の光が灯り、五人が近づくと、ゆっくりと動き始めた。
ゴゴゴゴ……。
「おっ、あれがゴーレムか?」
プライドが大剣を構える。
「かなり大きいわね……!」
キシリアも細剣を抜いた。
ゴーレムは重々しい足音を響かせながら、一歩、また一歩と近づいてくる。
「見た目どおり、かなり頑丈そうですね」
シルヴァは相手の身体を観察した。
「正面から攻撃しても、簡単には倒れないでしょう。関節部分を狙うか、動きを止めてから攻撃するのがよさそうです」
「では、まずはわたくしが動きを崩しますわ」
アナスイが長剣を構えた。
「風よ、道を開きなさい!」
鋭い風がゴーレムの脚部を打つ。
巨体がわずかに傾いた。
「今です!」
「よし、任せろ!」
プライドが一気に踏み込んだ。
大剣を振り下ろし、ゴーレムの胴体へ叩きつける。
ガァンッ!
金属を打ったような硬い音が響いた。
「おおっ!?」
プライドは一瞬だけ目を見開いた。
確かな手応えはあった。だが、ゴーレムの身体には大きな亀裂が入ったものの、それだけで倒れる様子はない。
「……おっ、こいつちょっと硬ぇな?」
「でしょうね。普通の魔物より頑丈そうですわ」
アナスイは落ち着いた様子で答えた。
「でも、傷はついています。攻撃を続ければ問題ないでしょう」
「なるほどな!」
プライドは大剣を握り直した。
「なら、もう一発いくか!」
今度はゴーレムの腕が振り下ろされた。
プライドは後ろへ跳んで攻撃をかわす。巨大な拳が床を叩き、石片が周囲に飛び散った。
「うおっ、こっちはなかなか迫力あるな!」
「感心している場合じゃないわよ!」
キシリアが声を上げる。
「次は私の番!」
細剣を構え、ゴーレムの胴体へ狙いを定めた。
「闇よ、貫きなさい!」
黒い魔力が刃に集まり、鋭い一撃となって放たれる。
ゴーレムの胸部に直撃し、岩石の表面が大きく砕け散った。
「……え?」
キシリアは自分の剣を見つめた。
「今ので、あんなに壊れたの?」
「かなりの威力でしたね」
シルヴァが感心したように言う。
「ゴーレムの防御力は高そうですが、キシリアの攻撃なら十分に通用します。プライドと連携すれば、早く倒せそうですね」
「そ、そう……。まあ、当然よね!」
キシリアは咳払いをした。
「私の攻撃が強いのは、最初から分かっていたことだもの!」
『ゴーレムは硬いけど、ちゃんとダメージ入ってるな』
『キシリア様、今ちょっと驚いたよね?w』
『プライドさんも一撃で亀裂を入れてるのすごい』
『この二人の新装備、火力が高いな』
「よし、今度は俺もいくぞ!」
ジャスティスが剣に炎をまとわせる。
「燃え盛る炎よ、我が刃に宿り、堅牢なる岩を打ち砕け――!」
「また長いのが始まったわね……」
キシリアが呟く。
「いや、今回は短いほうだって!」
ジャスティスは詠唱を終えると同時に踏み込み、ゴーレムの脚部へ炎をまとった剣を叩き込んだ。
岩石が砕け、ゴーレムの膝がわずかに沈む。
「よし、効いてるな!」
「脚部の損傷が進んでいます。そこを狙えば、体勢を崩せそうですね」
シルヴァが魔道具を取り出した。
「では、僕が動きを止めます。二人は攻撃の準備を!」
小型の魔道具が起動し、青い光がゴーレムの足元へ広がった。
その瞬間、ゴーレムの動きが鈍る。
「今ですわ!」
アナスイが風魔法を放ち、巨体を横から押す。
ゴーレムが大きく傾いた。
「もらったわ!」
キシリアの闇魔法が胸部へ直撃する。
「おおおっ!」
続いてプライドが大剣を振り下ろした。
ゴーレムの胴体に亀裂が走り、巨体がぐらりと揺れる。
そして、轟音とともに床へ倒れ込んだ。
ゴゴォン!
しばらく石片が転がる音だけが響いていたが、やがてゴーレムの赤い光が消え、完全に動かなくなった。
「……倒した、か?」
プライドが確認する。
「ええ。もう動かないようですわ」
アナスイが頷いた。
「思ったより頑丈でしたけれど、問題ありませんでしたわね」
「そうだな。最初の一撃はちょっと驚いたけど、連携すれば普通に倒せる相手だったな」
プライドは大剣を肩に担いだ。
「それにしても……」
キシリアは自分の細剣を見下ろした。
「硬い相手にも、これだけ攻撃が通るなんて。新しい装備、やっぱりすごいわね……」
「今さら気づいたのか?」
「うるさいわね! 実際に戦ってみて、改めて実感しただけよ!」
『ゴーレム撃破!』
『少し硬かったけど、五人なら余裕だったな』
『シルヴァさんの足止めからの連携が綺麗』
『アナスイさんの風魔法も効いてた』
『ジャスティスさん、詠唱が短めだったのにちゃんと格好いいw』
『キシリア様とプライドさん、新装備の火力にまだ驚いてるな』
ゴーレムが倒れたことで、その奥にあった石造りの扉がゆっくりと開き始めた。
扉の向こうには、さらに奥へ続く通路が見える。
「これで二十三階層への道が開いたわけですね」
シルヴァが確認する。
「ええ。ここを抜ければ、次の階層へ進めますわ」
アナスイが答えた。
「よし! じゃあ、次へ行こうぜ!」
プライドが元気よく歩き出す。
「待ちなさいよ! 次の階層でも私が一番活躍するんだから!」
キシリアもすぐに後を追った。
「いや、別に競争じゃないだろ……」
「配信では大事なのよ!」
「はいはい、分かった分かった」
ジャスティスが苦笑しながら続き、シルヴァとアナスイもその後に続いた。
『二十三階層へ!』
『砂漠遺跡の攻略、順調だったな』
『次は森の階層だっけ?』
『キシリア様、次も主役宣言してるw』
『五人の連携もだいぶよくなってきたな!』
こうして五人は、砂漠遺跡のキーボスを撃破した。
少し硬い相手ではあったものの、五人の力を合わせれば大きな問題にはならない。
そして、二十三階層へ続く扉の向こうには、また違った景色が待っている。
キシリアとプライドにとっては、まだまだ初めて見る場所ばかりだ。
新装備の力を実感しながら、二人はさらにダンジョンの奥へと進んでいくのだった。




