踊ってみた
# 第○話 まさかの本人登場!? キシリア、夢のサプライズステージ!
「それじゃあ、次はこの曲だね!」
マドカの声に合わせて、スタジオに音楽が流れ始めた。
今日はマドカとキシリアのコラボ配信。二人でダンスを披露する、いわゆる「踊ってみた」企画だ。
カメラの前に並んだ二人は、音楽が始まるのを待っていた。
「キシリアさん、準備はいい?」
「もちろん! せっかくの配信なんだから、中途半端なものは見せられないでしょ!」
キシリアは自信たっぷりに笑う。
黒髪のロングヘアに深紅のドレス。赤い瞳には、これから始まるダンスへの期待が輝いていた。
普段は気が強く、怒ると迫力満点の怠惰の勇者。しかし、トライアングルの曲が流れれば話は別だ。
大好きなグループのダンスを披露できるのだから、気合いが入らないわけがない。
音楽が盛り上がると同時に、二人のダンスが始まった。
マドカの動きに合わせ、キシリアも軽やかにステップを踏む。
振り付けに迷いはない。細かな動きまでしっかり覚えており、マドカのパートも完璧に踊りこなしていた。
『キシリア、ダンスうますぎない?』
『マドカと息ぴったりじゃん!』
『動きが完全に頭に入ってる!』
『これ、相当練習してるだろ!』
曲が終わり、二人はそろってポーズを決めた。
「どう? なかなかよかったでしょ!」
キシリアは満足げに胸を張った。
「うん、すごくよかった! キシリアさん、振り付けも完璧だったね!」
「当然でしょう! 大好きなトライアングルのダンスだもん! マドカのパートだって、ちゃんと覚えてるわ!」
「えっ、キシリアさん、そこまで覚えてるの!?」
「そこまでって何よ! 好きな曲なら、細かいところまで覚えるに決まってるじゃない!」
キシリアは自信満々に言い切った。
『ガチファンで草』
『マドカのパートまで踊れるのは本物』
『好きなものには全力なんだなw』
『キシリアさん、めちゃくちゃ楽しそう!』
「ふふっ、ありがとう!」
マドカが笑顔で手を振った、そのときだった。
「マドカ、そろそろ私たちも入っていい?」
スタジオの入り口から声がした。
「うん、もちろん!」
マドカが振り返る。
そこに立っていたのは、アリシアとナナリー。そして、すでにキシリアとも顔なじみになっているDJニコラだった。
「……えっ?」
キシリアの目が大きく見開かれる。
アリシア。
ナナリー。
そして、ニコラ。
トライアングルのメンバーが、そろって目の前に立っていた。
一瞬、言葉が止まった。
だが、キシリアはすぐにマドカへと顔を向けた。
「ちょっとマドカ! どういうことよ!? 聞いてないんだけど!」
「えへへ、サプライズ!」
「サプライズの規模がおかしいでしょ!?」
勢いよく言い返したあと、キシリアは改めて三人を見た。
驚きは隠せない。だが、ここでいつまでも固まっているつもりはなかった。
キシリアは口元をつり上げ、堂々と笑った。
「……でも、いいじゃない! まさかトライアングル全員と踊れるなんてね! せっかく来たんだから、最高のステージにするわよ!」
「おおっ、やる気満々だね!」
ナナリーが嬉しそうに声を上げた。
「ふふっ、キシリアさん、よろしくね!」
アリシアも笑顔で手を差し出す。
「ええ、こちらこそ! 今日は遠慮なんてしないからね!」
キシリアはその手をしっかりと握った。
「私、アリシアさんと踊るのも楽しみにしてたんだ!」
「本当? 嬉しい!」
「ナナリーさんも! もちろんニコラもね!」
「うんうん、みんなで楽しもうね~」
ニコラがいつもの柔らかな笑顔でうなずいた。
『えっ、トライアングル全員集合!?』
『マドカだけじゃなくてアリシアとナナリーまで!』
『キシリア、さっきまで知らなかったのかw』
『驚いてるのに立ち直るの早くて草』
『このメンバーで踊るのは豪華すぎる!』
「さあ、次の曲にいこう!」
マドカが声をかける。
「待ってました!」
キシリアはすぐに立ち位置についた。
今度はマドカだけではない。アリシア、ナナリー、DJニコラも加わり、トライアングルのメンバーがそろった。
そして、その隣にはキシリアがいる。
音楽が流れ始めると、キシリアは迷いなく踊り出した。
何度も見て、何度も練習した振り付け。好きだからこそ覚えた動きが、今、本人たちと重なっていく。
「キシリアさん、すごい! 本当に振り付けを覚えてるんだね!」
アリシアが感心したように声を上げる。
「うん! マドカのパートも完璧だし、動きもきれい!」
ナナリーも嬉しそうに笑った。
「ふふん、だから言ったでしょ! 好きなものには全力なのよ!」
キシリアは踊りながら、得意げに答えた。
「キシリア、ほんとに練習いっぱいしたんだね~」
ニコラが楽しそうに言う。
「当たり前じゃない! 大好きなトライアングルの曲なんだから!」
その言葉に、三人が笑顔を交わす。
曲の中盤に差しかかったところで、ニコラが一歩前に出た。
軽快なビートに乗せて、ラップが始まる。
「黒髪ロングに深紅のドレス♪
赤い瞳も、ほんとにベスト♪
ちょっと怖そう、怒ると強烈♪
でも可愛いもの好き、そこが超キュート♪
薔薇に宝石、ゴシックな美貌♪
強気な姿も、もちろん魅力よ♪
だけど可愛いもの見つけたら夢中♪
そのギャップが、なんだか萌えちゃう~♪」
ニコラのラップに合わせて、アリシアとナナリーが楽しそうに踊る。
マドカも笑顔でリズムを刻んでいた。
一方、キシリアはというと――。
「ちょっとニコラ!? 何を歌ってるのよ!」
顔を赤くしながらも、キシリアは踊るのをやめなかった。
「えへへ~。キシリアの魅力を紹介してるんだよ~」
「魅力の紹介に、可愛いもの好きまで入れる必要ある!?」
「えー、そこがいいところなのに~」
「うっ……! そ、それは……!」
一瞬言葉に詰まったキシリアだったが、すぐにニコラを指さした。
「いいわ! そこまで言うなら、もっと私の魅力を伝えなさい! 中途半端な紹介で終わったら許さないんだから!」
「ふふっ、注文が多いな~」
ニコラは笑いながら、最後まで軽快にラップを続けた。
『ニコラのラップ最高w』
『キシリアのギャップ、わかる』
『怒りっぽいのに可愛いもの好きなの、いいよね』
『照れてるけど踊るのはやめないの草』
『本人が自分の魅力をもっと伝えろって言うの強いw』
曲が終わると、五人はそろってポーズを決めた。
「やったー! 楽しかったね!」
ナナリーが両手を上げる。
「うん! キシリアさん、本当に上手だったよ!」
アリシアも笑顔で拍手した。
「ありがとう! 私も最高に楽しかった!」
キシリアは満足げに笑った。
「また一緒に踊ろうね~」
ニコラが手を振る。
「もちろん! 次はもっと難しい曲でもいいわよ!」
「おおっ、頼もしいね!」
ナナリーが目を輝かせた。
「ふふん、怠惰の勇者だからって甘く見ないでよね! やると決めたら、とことんやるんだから!」
キシリアは胸を張った。
『怠惰とはwww』
『好きなことへの行動力がすごい』
『キシリアさん、かっこいい!』
『次のコラボも期待してる!』
「みんな、今日は本当にありがとう!」
マドカがカメラに向かって手を振った。
「また一緒に踊ろうね!」
「次も楽しみにしててよね!」
キシリアも視聴者へ向かって笑顔を見せる。
配信終了の合図が出ると、スタジオには楽しかった余韻が残った。
「いやー、本当に最高だったわ!」
キシリアは満足そうに腕を組んだ。
「キシリアさん、今日はすごく嬉しそうだったね!」
「当たり前でしょう! 大好きなトライアングル全員と一緒に踊れたのよ? こんな機会、そうそうないんだから!」
そう言ってから、キシリアは三人を順番に見た。
「でも、今日だけで満足するつもりはないからね! 次も絶対に一緒に踊るわよ!」
「ふふっ、いいね~。またやろうね、キシリア」
ニコラの返事に、キシリアは満面の笑みを浮かべた。
「約束だからね!」
驚きも、照れも、嬉しさもあった。
けれど、最後に残ったのは、次への期待と揺るぎない自信。
怠惰の勇者キシリアは、憧れのグループと踊れた喜びを胸に、早くも次のステージへと思いを馳せていたのだった。




