キシマド配信キ5
# 第○話 トライアングル公式配信! エキドナ新機能と勇者会議の裏側!
マドカは、視聴者からの質問に答えていた配信をいったん区切ると、ぱんっと手を叩いた。
「さて、ここからエキドナ新情報~!」
「な、なによぉ……! 私とマドカの配信でしょ~!? 何の情報公開なのよ!」
「いやいや、キシリアさんにも関係ある話だから!」
「本当でしょうねぇ……?」
『急に新情報!?』\
『トライアングル公式配信、情報量が多いw』\
『キシリア様にも関係あるってことは、嫉妬大陸にも関係するのかな?』
「あー、ほら、こないだの勇者会議! めっちゃ長かったでしょ?」
「そうね。あれほど長い勇者会議は初めてだったわ……」
キシリアは、あの会議を思い出して少し遠い目をした。
勇者たちが集まり、次々と議題が提示され、いつ終わるとも知れない話し合いが続いた。あれだけ長時間の会議に参加したのは、キシリアにとっても初めての経験だった。
「まあ、勇者会議場の中にいた勇者たちは、読むだけだったから楽だったと思うよ?」
「読むだけって……まあ、確かにそうね?」
「私とお姉ちゃんなんて、EVを見ながらずーっとコメント書いてたんだから! 質問が来たら返事して、説明が必要なら文章にして……すっごい疲れたわけ!」
「た、確かに……。私たちは話を聞いていたけれど、あなたたちはEVを見ながら文字を打っていたのよね……」
キシリアは、マドカたちの苦労を思い出してうなずいた。
勇者会議では、会議場にいる者たちは普通に声を出して話せる。
一方、離れた場所からEVを通じて参加しているマドカたちは、画面越しに会話をするため、基本的には文字でやり取りするしかなかったのだ。
『会議の内容を聞きながらコメント入力か……』\
『それは確かに大変そうw』\
『会議場の勇者と遠隔参加組で、そんな違いがあったのか』\
『長時間の文字入力は指が疲れそうだな』
「そう! そこで!」
マドカは、待ってましたと言わんばかりに人差し指を立てた。
「もう面倒だから、話したいゲストが現場にいないときでも、視聴者のEVを配信者の画面に呼び出して、直接話ができる機能を付けることに決定したんだ!」
「……えっ?」
「つまり、離れた場所にいる人のEVを、配信者側の画面に表示できるようにするってこと! もちろん、声でやり取りできるようにするよ!」
キシリアは目を丸くした。
「あら? それって……例えば、私の配信にマドカがゲストで来てくれた場合は、小さいマドカが画面に映って、今していることを見せながら声でやり取りできるってこと!?」
「そうそう! そんな感じ!」
「便利じゃない!」
「でしょー!」
『エキドナ新機能きた!』\
『遠隔ゲスト機能!?』\
『画面に小さいマドカちゃんが出てくるのかw』\
『大陸が違ってもコラボできるってこと?』\
『これは配信の可能性が広がるな!』
「えっ、待って! それって、私が嫉妬大陸に帰ったあとでも、マドカをゲストに呼べるってことよね!?」
「うん! お互いにEVが使える環境ならね。わざわざ同じ場所に集まらなくても、コラボ配信ができるようになるわけ!」
「すごいじゃない! それなら、ゴールにいる間だけじゃなくて、帰ったあともマドカと一緒に配信できるのね!」
「そういうこと! まあ、細かい仕様はこれから詰めるところもあるけどね」
「ふふふ……なるほど。つまり、私が嫉妬大陸に戻ってからも、マドカと踊ってみたの配信ができる可能性がある、と……!」
「あっ、そこに繋がるんだ?」
「当然でしょう! せっかく仲良くなったのに、離れたら一緒に配信できません、なんて困るじゃない!」
「あはは! 確かに、それはもったいないね!」
『新機能の使い道が決まるの早いw』\
『キシリア様、もう帰ったあとのコラボまで考えてる』\
『遠隔ゲスト機能、踊ってみたにも対応できるのか』\
『嫉妬大陸に帰っても二人の配信が見られるのは嬉しい!』\
『技術の話から次の企画が生まれてるw』
「いやー、今までが不便すぎたわけさ。こっちは相手の言葉をそのまま聞けるのに、反対側は文字で返すしかないって、欠陥すぎるでしょ!」
「じゅ、充分便利なのよおおおおおおおおおおおおお!!」
「ええー? そうかなぁ?」
「そうよ! 離れた場所にいる相手と文字で会話できるだけでも、十分すごい技術でしょう!? 普通なら手紙を送るか、直接会いに行くしかないのよ!?」
「まあ、それはそうなんだけどね?」
「それに、EVで映像まで見られるのよ!? 遠くにいる相手の姿を見ながら会話できるだけでも、ものすごいことじゃない!」
「うんうん。だから、もっと便利にしようって話!」
「話を聞きなさいよおおおおおおおおおおおお!!」
『キシリア様、必死のEV擁護www』\
『便利なのは間違いないんだよな』\
『ただ、声で返事できたらもっと便利なのも事実w』\
『マドカの「もっと便利にしよう」が強いw』\
『今ある技術を褒めながら改善点も見逃さないスタイル』
「だってさー、勇者会議のとき、私が質問を打ち込んでる間も会議は進んでいくんだよ? 話題が変わっちゃったら、せっかく書いた質問を出すタイミングも難しいし!」
「ああ……それは確かに大変そうね」
「でしょ? しかも、返事が来ても、その内容を確認して、また返事を書いて……。会議場にいる人たちは普通に話してるのに、こっちはずっと文字入力!」
「うっ……。そう聞くと、確かに改善する余地はあるわね……」
「でしょでしょ!」
「でも、今回の機能があれば、そういう問題も解決できるわけね!」
「そう! 会議だけじゃなくて、普通の配信でも使えるようにする予定だよ!」
「なるほど……。これは大きな進歩ね!」
「うん! 離れた場所にいる人とも、今まで以上に気軽に話せるようになる。エキドナとしても、いろんな使い方ができると思うんだ!」
『遠隔コラボが当たり前になるのか』\
『大陸間の距離が配信の障害じゃなくなるな』\
『会議だけじゃなくて、遠くの友達との雑談にも使えそう』\
『これ、勇者以外にも需要がありそうだよね』\
『マドカ、また世界を便利にしてしまうw』
「……ふふっ。そういうことなら、私も楽しみになってきたわ!」
「おっ、やっと納得してくれた?」
「ええ! だって、これがあれば嫉妬大陸に帰ってからも、マドカと一緒に配信できるんでしょう?」
「そこは本当に楽しみだね! 今夜の踊ってみたが実現したら、その次は遠隔コラボもできるかもしれないし!」
「いいわね! そうなったら、今度は嫉妬大陸からマドカをゲストに呼ぶわ!」
「あはは! そのときはよろしくね!」
「ふふん! キシラーのみんなも、楽しみにしていなさい! 嫉妬大陸に帰ってからも、私の配信はどんどん進化していくんだから!」
『キシリア様、すっかり遠隔コラボに乗り気w』\
『新機能の発表から次の企画まで決まったぞ』\
『エキドナの技術発表がキシリア様の活動計画になってるw』\
『嫉妬大陸からの配信、絶対見たい!』\
『マドカとのコラボ、これからも見られるのは嬉しいな!』
「よーし! というわけで、これがエキドナの新情報でしたー!」
「便利な機能が増えるのはいいことよ! ……ただし!」
「ん? まだ何かあるの?」
「勇者会議のときに、私たちが文字を読んでいる間も、あなたたちがずっと文字を打っていたというのなら……次の会議までには、ちゃんと使えるようにしておきなさいよ!」
「あはは! 頑張るけど、開発には時間がかかるからね!?」
「そこはエキドナの技術力に期待しているわ!」
「期待が重いなぁ!」
『キシリア様、急にユーザー代表みたいになったw』\
『開発チームへのプレッシャーw』\
『便利な機能ほど早く使いたくなるよな』\
『でも早く実装してほしい!』\
『次の勇者会議がどうなるか楽しみだな』
「ふふん! これで次の勇者会議は、私もマドカと直接話せるかもしれないわね!」
「会議のためだけじゃなくて、配信でも使ってね!」
「もちろんよ! マドカとのコラボは、これからも続けるんだから!」
「うん! 私も楽しみにしてるよ!」
二人は顔を見合わせて笑った。
エキドナの新機能は、まだ開発が始まったばかり。
けれど、離れた場所にいる人とも、まるで隣にいるかのように話せる未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれなかった。
「まぁ、そもそも勇者会議って、私たちのことを話してるよって聞かなかったら、見る気もなかったしね!」
「見なさいよ!!」
「えー? だって、私とお姉ちゃんが参加しなかった場合ってさ……」
マドカは少し考えるように視線を上に向けた。
「憤怒のジークさんは、ずーっと『うむ……』って言ってるだけの、うむおじさんだったわけでしょ?」
「うっ……!」
「しかも、エキドナの配信を追いかけてるガチファンだって、誰も知らなかったわけじゃん?」
「そ、それはそうね!」
「いやー、危なかったね! 危うくジークさんが、ただ寡黙で何を考えてるのか分からない人のまま終わるところだったよ!」
「うむおじさんって呼び方はどうなのよ!?」
『ジークさん、うむおじさん扱いwww』\
『本人が聞いたらどんな顔するんだろうw』\
『エキドナのガチファンだと判明した歴史的会議』\
『マドカとお姉ちゃんがいなかったら、あの話は出てこなかったのか』\
『「うむ……」だけで終わる勇者会議、ちょっと見てみたいw』
「でも、実際に会議で話してみたら、エキドナの配信にめっちゃ詳しかったんだよ? あれは面白かったなぁ!」
「確かに……あのときは驚いたわね。普段はあんなに口数が少ないのに、エキドナのことになると、ずいぶん詳しいんだもの!」
「でしょ? やっぱり、直接話してみないと分からないことってあるんだよ!」
『推しの話になると急に語彙が増えるタイプw』\
『普段のジークさんも気になるな』\
『勇者会議で人物紹介コーナーをやったら、意外な一面が次々出てきそう』\
『うむ……の裏にそんな情熱が隠れていたとはw』
「でも、それを言うなら、傲慢のプライドもそうじゃない!」
「あー、プライドさんね!」
「エキドナが何をしているのか分からない、装備ばかりに力を入れている、とか言っていたわりには……」
「モンバト、めっちゃやり込んでそうだったよね!?」
「そうなのよ! エキドナのことを怪しいだの、よく分からないだのと言っているくせに、ガッツリ使っているじゃない!」
「いや、ほんとそれ! 何だかんだでモンバトのことも詳しそうだったし!」
「そうでしょう!? だったら、最初から使っていると言えばいいじゃない!」
「まあ、本人にもいろいろ考えがあるんだろうけどね。でも、あの様子を見ると、エキドナの製品をまったく知らないわけじゃないんだよねぇ」
「それはそうよね!」
キシリアは勢いよくうなずいた。
「私だって、EVもヒロバトもモンバトも、ちゃんと有効活用しているんだから!」
「うんうん。キシリアさん、EVを使い始めてから配信もしてるしね!」
「そうよ! 便利なものは便利だもの! 使わない理由なんてないでしょう!?」
「だよねぇ!」
『プライドさん、エキドナに厳しいのにモンバトは遊んでるのかw』\
『使ってるなら、もうちょっと素直になればいいのにw』\
『キシリア様はEVもゲームも配信も使いこなしてるな』\
『便利なものは便利、正論すぎるw』\
『勇者たちのエキドナ製品の使い方を聞くだけでも面白い』
「それなのに……!」
キシリアは、ぐっと拳を握りしめた。
「それなのに、アナスイとシルヴァは、私が行けない場所で面白いことをしているじゃない!!」
「あはははは!」
「何よそれ! 私だって一緒に楽しみたいじゃない! エキドナの人たちと交流したいし、いろいろなものを見てみたいし! なのに、私だけ知らないところで話が進んでいるなんて、ずるいでしょう!?」
「あー、なるほどねぇ!」
マドカは、ようやく合点がいったという顔でうなずいた。
「キシリアさん、勇者会議でエキドナのことをいろいろ言ってたけど、結局は自分も一緒に遊びたかったんだね!」
「そ、そうよ! 何か文句でもあるの!?」
「ないない! むしろ、そういうことなら、これからいっぱい一緒に遊ぼうよ!」
「……っ!」
キシリアの頬が、ほんの少し赤くなった。
「ふ、ふん! 最初からそう言っているでしょう! 私は別に、寂しかったとか、仲間外れにされた気分だったとか、そういう話をしているわけじゃ……!」
「うんうん! 分かってる分かってる!」
「絶対分かっていないでしょう!?」
『マドカ、キシリア様の扱いがうまいw』\
『キシリア様、結局エキドナと遊びたかったんだな』\
『強気なのに、こういうところは素直じゃないw』\
『マドカに一緒に遊ぼうって言われて嬉しそう』\
『プライドさんもジークさんも、会議で印象が変わったな』
「でも、勇者会議って、配信そのものは毎回そんなに面白くなさそうじゃない?」
「ちょっと!?」
「だって、基本的には勇者たちが集まって、議題について話し合うんでしょ? 真面目な話が多いだろうし、知らない人からしたら、何を話しているのか分からないことも多そうだし」
「そ、それは……まあ、そうかもしれないけれど!」
「だったら、何かやったらいいんじゃない?」
「何かって、何よ?」
「うーん……例えば、会議の前後にちょっとした企画をするとか? 勇者たちが普段どんなことをしているのか紹介するとか、質問コーナーを作るとか!」
「なるほど……?」
『勇者紹介コーナーは見てみたい!』
『会議前に各勇者の近況報告とか?』
『勇者たちが普段何をしてるか、確かに知らないな』
『会議の前後なら本題の邪魔にもならなそう』
「あとは、会議で決まったことを、視聴者にも分かりやすく説明するとかね! ただ議事録を読むだけじゃなくて、実際に参加した勇者が自分の言葉で話すとか!」
「それなら、確かに分かりやすくなりそうね!」
「でしょ? 勇者会議って、世界のいろんな問題を話し合っているわけじゃん? 内容自体は重要なんだから、伝え方を工夫すれば、興味を持つ人も増えると思うんだよね!」
「ふむ……。確かに、勇者たちが何を考えているのか、普段どんな活動をしているのか、知りたい人もいるでしょうね」
「そうそう! まあ、そもそも勇者会議の配信って、ほとんど見られてないんじゃないかな?」
「言い切ったわね!?」
「だって、私もお姉ちゃんも、キシリアさんたちの話題が出るって聞かなかったら、見る気なかったし!」
『主催者じゃないからセーフwww』
『関係者ですら見ようとしていなかった勇者会議』
『会議の内容は重要なのに、配信の見せ方が問題なのか』
『真面目な議論だけだと、初見には難しいのかも』
『勇者紹介コーナーなら、会議を知らなくても楽しめそう』
『まずは「うむ……」以外のジークさんを見せてくれw』
「ほら! こういうコメントも来てるよ!」
「うっ……! 確かに、勇者たちの普段の姿を知る機会って、あまりないのかもしれないわね……」
「勇者会議って、ただ集まって話すだけじゃなくて、各大陸の勇者がどんな人なのか知る機会にもなるはずなんだよね。せっかくEVで配信できるんだから、もうちょっと見せ方を考えたら面白くなると思うよ!」
「なるほど……。そういうことなら、私も次の勇者会議では、もっと積極的に参加してみようかしら!」
「おっ、いいね!」
「もちろん、会議の内容を真面目に聞くのは当然よ! そのうえで、私も勇者の一人として、視聴者に楽しんでもらえるようなことができればいいのでしょう?」
「そうそう! せっかく配信してるんだからね!」
「ふふん! それなら、嫉妬の勇者キシリアに任せなさい! 次の勇者会議では、私の魅力をたっぷりと……!」
「あっ、会議の邪魔はしないでね?」
「しないわよおおおおおおおおおお!!」
『そこは釘を刺されるのかwww』\
『キシリア様、何か企画を始めそうで怖い』\
『会議の進行役より目立つ気満々じゃないかw』\
『次の勇者会議、ちょっと見たくなってきた』\
『エキドナ新機能と合わせて、配信が変わるかもしれないな』
「あはは! まあ、まずは今回のコラボを楽しもうよ!」
「ええ、もちろんよ! せっかくマドカと一緒に配信しているんだもの!」
「じゃあ、次の質問に行こうか!」
「いいわ! キシラーのみんな、どんどん質問しなさい!」
『キシラー、質問コーナー続行!』\
『勇者会議の配信改善案も期待してます』\
『ジークさんの「うむ……」以外の発言、もっと見たいw』\
『プライドさんのモンバト事情も詳しく聞きたいw』\
『次の会議ではどんな一面が見られるのか楽しみ!』
こうして、勇者会議の配信についても盛り上がり始めた二人のコラボ。
会議そのものは真面目な場だが、その裏側には、参加者たちの意外な一面や、まだ知られていない話題がいくつもある。
それをどう伝え、どう楽しんでもらうか。
エキドナの新機能だけでなく、勇者会議の配信にも、まだまだ工夫の余地がありそうだった。




