キシマド配信4
# 第○話 トライアングル公式配信! キシリア様の勇者人物評!
「じゃあ、次のコメント! 『結局、キシリア様は勇者の中での付き合いってどうなんですか?』だって!」
「そうね。勇者といっても、全員が全員、気の合う相手というわけではないわね」
「おっ、キシリア様の勇者人物評だ!」
『これは聞きたい!』
『勇者同士って普段どんな関係なんだろう』
『キシリア様から見た勇者たち、気になるw』
「まず、シルヴァね。小難しいことばっかり言っている、おぼっちゃまの研究バカよ」
「言い方ぁ!」
「事実でしょう?」
『いきなり辛辣www』
『研究バカは否定できない』
『シルヴァさん、配信見てたら反論していいぞw』
「じゃあ、暴食の勇者は?」
「いつの間にかエキドナに就職しているグルメバカ」
「あははは! まあ、確かに!」
『エキドナへの就職扱いwww』
『食べ物につられて定住した男』
『本人も否定しなさそうなのがひどいw』
「傲慢は、強さを求める脳筋ね」
「こっちも容赦ないなぁ!」
『脳筋率高くない?w』
『勇者って個性が強すぎる』
『キシリア様の評価が容赦なさすぎる件』
「それから、憤怒!」
「おっ、憤怒の勇者!」
「あいつ、エキドナの配信を追いかけているガチ勢だってバレるまでは、ほとんど何もしゃべらなかったのよ!?」
「えっ、そうだったの!?」
「そうよ! 普段は『うむ……』とか、それくらいだったのに! それがマドカたちが勇者会議の配信に視聴者として現れた途端、急に饒舌になっちゃってさ!」
「あはははは! そんなに変わったんだ!?」
「変わりすぎでしょ!? 今までほとんどしゃべらなかった奴が、エキドナの話になった途端にあれよ!? こっちは別人かと思ったわよ!」
『憤怒さん、そんなキャラだったの!?』
『普段は寡黙なのに推しの話になると止まらないタイプwww』
『勇者会議配信が正体バレの瞬間だったのかw』
『ずっと配信を追ってたのに隠してたのかよ!』
『「うむ……」しか言わなかった男の覚醒』
『推しを目の前にしたオタクの末路www』
「でも、ずっと配信を見てくれてたんだよね? それは嬉しいなぁ!」
「そこは否定しないわよ! ただ、あの変わりようは反則でしょ……!」
「憤怒さんも、エキドナの配信を楽しみにしてくれてたんだねぇ」
『マドカちゃん、素直に喜んでるw』
『憤怒さん、今どんな顔で聞いてるんだろう』
『次の配信でもコメントしてくれないかなw』
「さて、次は……アナスイね」
「あっ、アナスイ!」
「まず認めておくけれど、あの女が美しいことは否定しないわ。私と同じくらい、美しいもの」
「自分で言った!」
『出た、自信満々キシリア様w』
『その自信、嫌いじゃない』
『アナスイさんと並ぶ美人枠!』
「でも、あの女の腹が立つところは、私がどれだけ努力しているかを理解していないことよ!」
「努力?」
「流行を調べて、服の組み合わせを考えて、アクセサリーにも気を配る。美しくあるためには、それなりの努力が必要なのよ!」
「なるほどねぇ。キシリア様、そういうところは本当に研究熱心なんだ」
「それなのに、あの女ときたら……!」
「美しいのは当然ですわ。努力? 特にしてませんわね」
「そう! それよ! その余裕が腹立たしいのよ!」
『アナスイさん、言いそうwww』
『努力してないと言い切れるのがすごい』
『キシリア様、完全にライバル視してるw』
「でも、私のお母さんも似たようなことを言うよ?」
「あなたのお母様も!?」
「うん。『どうしてみんな私に注目するのか、分からないんですもの』って」
「……なるほど。それが大人の余裕というものなのね」
「そうなのかなぁ?」
「ええ。自分の美しさを当然のものとして受け止めている……悔しいけれど、格好いいわね」
『マドカちゃんのお母様、相変わらず自信満々だなw』
『マドカちゃんも納得してるのが面白いw』
『キシリア様、ちょっと尊敬してるw』
「ただし、嫉妬大陸の貴族社会はそうはいかないわよ」
「えっ、そうなの?」
「ええ。社交の場では、服装ひとつで相手の力量を測られることもあるの。『まだその時代遅れのドレスを着ていらっしゃるの?』なんて言葉が飛び交うのよ」
「うわぁ……私、絶対に行きたくないなぁ」
「なんでよおおおおおおおおお!!」
『悲痛な叫びwww』
『マドカちゃん、貴族社会に興味なし!』
『キシリア様、宣伝する相手を間違えてるw』
「いやいや、今の話を聞いたら怖いって!」
「ま、まあ、あくまで貴族社会の話よ! 誰もがそんなことを言っているわけではないわ!」
「本当に?」
「……流行をめぐって、互いに牽制し合うことはあるけれど」
「やっぱり怖いよ!」
『フォローになってないwww』
『嫉妬大陸のファッション事情、想像以上に熾烈』
『キシリア様のお店、貴族社会でも流行りそうだな』
「だからこそ、私の店が必要なのよ! 流行に敏感な人々を満足させる商品を揃えてみせるわ!」
「おっ、ここでお店の宣伝につながった!」
『商売人の顔になったw』
『さすがキシリア様、抜け目がない』
『嫉妬大陸進出計画、応援してます!』
「そして、最後は……リゼット様ね」
「あ、お姉ちゃん!」
「リゼット様は、本当にすごい人よ。美しいし、強いし、何より自分の力をよく理解している」
「うんうん!」
「知識も豊富で、判断力もある。それなのに、自分の力を必要以上に誇示しないし、誰かに取り入ろうともしない。自分の価値を理解しているからこそ、あんな態度でいられるのでしょうね」
『リゼット様の評価、高い!』
『キシリア様、本当に尊敬してるんだな』
『強さだけじゃなくて、振る舞いも評価してるのがいいね』
「それに、今なら彼女が怠惰の勇者と呼ばれている理由もよく分かるわ」
「どういうこと?」
「興味のないことや、わざわざ自分が動く必要のないことには、本当に動かないのよ。でも、必要だと判断したことはきちんとやる。しかも、やると決めたら見事にやり遂げる」
「お姉ちゃん、興味がないことには本当に動かないんだよねぇ。でも、必要なことならちゃんとやるし、やるときはすごいんだよ!」
「でしょう? あれほどの力を持ちながら、無駄に振り回さない。あの姿勢は見習うべきところがあるわ」
「まあ、怠惰だからねぇ」
「そこは否定しないのね!?」
「だって、お姉ちゃんだもん!」
『マドカちゃん、即答www』
『身内の理解度が高すぎる』
『怠惰だけど必要なことはやる女、リゼット様』
『キシリア様、リゼット様への評価が本当に高いな』
「ふふっ……勇者というのは、本当に一人ひとり違うものね。考え方も、得意なことも、行動の基準も違う。だからこそ、付き合ってみると面白いのよ」
「うん! 配信を見ているだけじゃ分からないことも、実際に話してみると分かるんだよね!」
『こういう勇者同士の話、もっと聞きたい!』
『人物評だけで一本配信できそうw』
『キシリア様、観察眼が鋭い』
『アナスイさんへの対抗心だけは別格だったけどw』
「……アナスイの件は、別に対抗心ではないわよ?」
「えー? 本当に?」
「本当よ! ただ、あの女にはもう少し、美しくあるための努力というものを理解してほしいだけ!」
『それを対抗心って言うんだよwww』
『アナスイさん、今すぐ反論してくれ!』
『キシリア様、ファッション講座を開こう』
「いいわね。私が直接、美意識というものを教えてあげてもいいわ!」
「ファッション講座まで始めるの!?」
「当然でしょう? キシリア様の美意識講座。受講したい者は、いつでも歓迎するわ!」
『受講料はいくらですか!』
『キシリア様のファッション講座、普通に気になる』
『視聴者にも美意識を求めてくるスタイルwww』
「ファンにまで美意識を求めるんだ!?」
「美しくありたいと願う心に、身分も立場も関係ないもの!」
「おおー、今のはちょっと格好いい!」
『急に名言が出た!』
『キシリア様、応援してます!』
『嫉妬大陸進出もファッション講座も楽しみ!』
「ふふっ。期待していなさい。私の店も、これからの活動も、必ず成功させてみせるわ!」
「うん! 私も応援するよ!」
こうして、キシリアによる勇者たちの人物評は大盛況のうちに幕を閉じた。
……もっとも、配信終了後にアナスイがこの話を聞いたらどう反応するのか。
それを想像して、キシリアはほんの少しだけ、楽しそうに笑っていた。




