キシマド配信2
「まぁ、今日初めてキシリアさんと会ったわけなんだけど、もう仲良し!」
マドカがにこにこと笑いながら言った。
「ええ、そうね! マドカがこんなにいい子だなんて、もっと早く怠惰大陸に来られればよかったわ!」
キシリアも嬉しそうに頷く。
『初対面なのに距離が近いw』
『この二人、相性よさそうだな』
『キシリア様、マドカちゃんにすっかり懐いてる?』
『もう親友みたいな空気で草』
『初コラボとは思えないなw』
「まぁ、仕方ないよね。嫉妬大陸からここまで来るのって、数か月はかかるって話だし。私だったら絶対行かないよ」
「そんな悲しいこと言わないでちょうだい!?」
キシリアが思わず声を上げた。
「私だって、好きで遠くにいるわけじゃないのよ! でも、今回はエキドナから転移アイテムを借りることができたんだから!」
「うんうん!」
「まずは怠惰大陸のキシラーをゲットするのよ!」
『もう布教活動が始まってるwww』
『キシリア様、目的がはっきりしてるな』
『怠惰大陸にキシラーを増やす計画!』
『転移アイテムの使い道がファン獲得なの面白すぎるw』
『もっと別の目的もあるよね!? ……あるよね?』
「そういえばさ」
マドカがふと思い出したように首を傾げる。
「嫉妬大陸のEVって、私たちが把握してるだけでも一桁か二桁くらいかもしれないね!」
「そうなの……!」
キシリアは深刻そうな顔で頷いた。
「EVの視聴者が増えないのは当然よね! EVがない大陸なんだもの!」
『そもそもEVがないのかw』
『それじゃ配信を見てもらう機会も少ないな』
『キシリア様、開拓の余地しかない!』
『これはファンを増やすチャンス!』
『嫉妬大陸にもEVを普及させればいいのでは?』
『キシリア様、配信環境から開拓することになりそうw』
「だからこそ!」
キシリアはカメラに向かって、びしっと指を立てた。
「このキシリア様を気に入ってくれたら、全力で大切にしていくわよ! 怠惰大陸のキシラー第一号から、末永く応援してもらうんだから!」
「ふふっ、ファンを大事にするのはいいことだね!」
マドカは楽しそうに笑った。
「でも、キシリアさんなら本当にファンを大切にしそうだよね。コメントにもちゃんと反応してくれるし!」
「当然でしょう! 私を応援してくれる人たちは大切な仲間だもの!」
『おお、いいこと言う!』
『こういうところ好き』
『キシラーになろうかなw』
『もう半分くらいキシラーになってる気がする』
『マドカちゃん、キシリア様の宣伝を手伝ってない?w』
『トライアングル公式配信とはいったい……』
「ふふん! その調子よ!」
キシリアは満足そうに胸を張った。
「はいはい、ファン獲得はそのくらいにして……」
マドカは手を叩いて、配信を進行させた。
「まずは質問コーナーに行こうか!」
「そうね! 私のことを知ってもらわないといけないわ!」
『質問コーナーきた!』
『キシリア様への質問、いろいろあるぞ!』
『何を聞こうかな』
『好きな食べ物とか聞いてみたい』
『勇者会議のときの話も聞きたいなw』
マドカが届いた質問を確認し、ひとつ読み上げる。
「えーっと、最初の質問は……『前に見た勇者会議では、エキドナのことをボロクソに言ってましたが、大丈夫ですか?』だって!」
「……えっ?」
マドカの笑顔が、ぴたりと止まった。
「そうなの!? マジかー……。私たち、嫌われてたんだね……」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
キシリアは慌てて両手を振った。
「違うわよ! そういう意味じゃないの!」
『本人から弁明きたwww』
『あの会議、結構言ってたもんなw』
『マドカちゃん、ちょっとショック受けてて草』
『キシリア様、ちゃんと説明してあげて!』
『初コラボでいきなり過去の発言を掘り返される女w』
『質問者、いいところ突いてくるなw』
「まぁ、確かに、エキドナが何をしているのか把握しきれないところはあったわよ?」
キシリアは少し考えてから、正直に答えた。
「だって、マドカたちはダンジョンを攻略して、いろんな商品を作って、配信もしているでしょう? ほかの勇者とは活動の規模も違うし、何をどこまでやっているのか、私にはよく分からなかったのよ」
「うん……まぁ、それはそうかもね」
マドカは納得したように頷いた。
「エキドナって、やってることが多すぎるもんね。私たちも全部説明するのは難しいし」
「そうでしょう? でもね!」
キシリアは少し身を乗り出した。
「ちゃんとマドカや、勇者の二人――それにリゼット様の話を聞いていたら、思ったのよ」
『何を思ったんだ?』
『まさか、また文句が出るのかw』
『ここで第二波が来る?』
『マドカちゃん、逃げてw』
キシリアは胸を張った。
「……なんか、ズルくない!?」
「ええっ!? そこ!?」
マドカが思わず声を上げた。
「ちょっと待って! エキドナの何がズルいの!?」
「だって、そうでしょう!?」
キシリアは勢いよく説明を始めた。
「マドカたちは強いし、いろんな技術も持っているし、配信だって盛り上がっている! リゼット様もすごいし、ほかの勇者たちだって、エキドナと関わることでいろいろな経験ができるじゃない!」
「うん、まぁ……」
「それなのに、私は嫉妬大陸にいて、あなたたちのことを配信越しに見るばかり! こんなに楽しそうなことをしているなら、私だってもっと早く仲間に入れてほしかったのよ!」
『あっ、そういうことかwww』
『嫌いなんじゃなくて、羨ましかったんだ!』
『キシリア様、仲間外れにされた気分だったのかw』
『会議での発言、今なら意味が分かるな』
『つまり「私も混ぜて!」だったのかw』
『めちゃくちゃ素直な理由で草』
『嫉妬の勇者だから、エキドナが羨ましかったのかな?』
「仲間外れって……!」
マドカは目を丸くしたあと、くすくすと笑い始めた。
「キシリアさん、私たちと絡みたかったんだ!」
「そ、そうよ! 悪い!?」
キシリアは少し照れたように頬を膨らませる。
「私だって、あなたたちと一緒に配信したり、ダンジョンの話をしたり、いろんなことをしてみたかったのよ!」
「そっかぁ……!」
マドカは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、これからいっぱい絡もうよ! せっかくゴールまで来てくれたんだし!」
「本当!?」
「もちろん!」
『解決したwww』
『エキドナがズルいの正体、まさかの「私も混ぜて!」』
『キシリア様、素直でかわいいな』
『これはコラボして正解だった』
『勇者会議で言えなかった本音が、配信で明らかになるとはw』
『この配信、思ったより重要な回なのでは?』
「……ふふっ」
キシリアは満足そうに微笑んだ。
「そういうことなら、これから遠慮なく付き合ってもらうわよ、マドカ!」
「いいよー! 私もキシリアさんともっと仲良くなりたいし!」
二人は顔を見合わせ、楽しそうに笑った。
『初回コラボから仲良しすぎるw』
『キシラーとトライアングルのファン、両方得する配信だな』
『勇者会議の発言から、まさかこんな展開になるとはw』
『これからもコラボしてほしい!』
『キシリア様、次はダンジョン配信もお願いします!』
『マドカちゃん、約束だぞ!』
「よし! じゃあ、次の質問に行こうか!」
マドカが元気よく宣言する。
「ええ! 今日は私のことをたっぷり知ってもらうわ! 怠惰大陸のみんな、覚悟しておきなさい!」
キシリアは自信満々にカメラへ向かって笑った。
「そして、配信が終わるころには、あなたたちも立派なキシラーよ!」
「だから、トライアングルの公式配信なんだってばー!」
マドカのツッコミが響き、コメント欄は再び笑いに包まれた。




