キシマド配信
「はい、こんばんはー! マドカ・ノイティスです! みんな、よろしくー!」
トライアングルの公式配信が始まった。
いつものように元気いっぱいのマドカが画面に向かって手を振る。コメント欄には、配信開始を待っていた視聴者たちの言葉が次々と流れていった。
『こんばんはー!』
『マドカちゃん、待ってた!』
『今日は特別ゲストが来るんだよね?』
『告知を見てから楽しみにしてたぞ!』
「そうそう! 今日は特別ゲストが来てくれてまーす!」
マドカが隣に視線を向ける。
「嫉妬大陸の勇者、キシリアさんでーす!」
「私を知らない人は、はじめましてね!」
キシリアは優雅に微笑み、堂々と胸を張った。
「嫉妬の勇者、キシリア・ブラックパールとは私のことよ! キシラーのみんな、よろしく頼むわね!」
『キシリア様きたー!』
『本当にトライアングルとコラボしてる!』
『キシラーって何だwww』
『初見です! よろしくお願いします!』
『いきなりファンの呼び名まで宣伝していくスタイル』
「ちょっと待って! いきなり配信を乗っ取られそうなんだけど!」
マドカが慌てて口を挟んだ。
「これ、トライアングルの公式配信なんだけど!?」
「マドカ、それは私の美しさが悪いのよ!」
キシリアはまったく動じない。
「視聴者のみんなには罪はないわ。どうか許してちょうだい!」
『自分の美しさのせいwww』
『謝ってるようで全然謝ってない!』
『マドカちゃん、ゲストに主導権を握られてるぞ!』
「いやいや、まだ配信始まったばっかりだからね!?」
マドカは笑いながらツッコミを入れた。
「でも、勇者って言えばアナスイもそうなんだよね。キシリアさんはアナスイとはまた違うオーラがあるよねー」
「ほう? どう違うのかしら?」
キシリアが興味深そうに尋ねる。
「アナスイは、なんかエロい!」
『直球すぎるwww』
『マドカちゃん、それ本人の前でも言える?』
『否定できないのが困る』
「ふふっ。マドカらしいわね!」
キシリアは楽しそうに笑った。
「それで、私は?」
「キシリアさんは、なんていうか……ダークヒロインみたいな感じ!」
「黒いからでしょうね!」
キシリアは即答した。
「私、黒って大好きなの! 何者にも染められないという意思表示よ!」
『かっこいい!』
『黒を選ぶ理由までキシリア様らしい』
『ダークヒロイン、確かに似合う』
『赤い瞳と黒いドレスの組み合わせがいいんだよな』
「なるほどねー。我が道を行くって感じなんだ!」
マドカは納得したように頷いた。
「それに、綺麗だしかっこいいよ! でも、たまに照れたりするところはかわいいよね!」
「も、もう! マドカったら!」
キシリアの頬が、ほんのりと赤くなる。
「正直すぎるのよ!」
「えー? 褒めてるんだからいいじゃん!」
「そ、それは……そうだけど!」
『照れたwww』
『ダークヒロイン、かわいい』
『キシリア様、褒められると弱い?』
『マドカちゃん、初対面でも距離の詰め方がうまいな』
「ちょっと! そこのコメント!」
キシリアは画面を指差した。
「誰が褒められると弱いですって! 私はただ、マドカがあまりにも正直だから驚いただけよ!」
「はいはい、そういうことにしておこうねー!」
「マドカ!」
二人のやり取りに、コメント欄がさらに賑やかになる。
『もう仲良しで草』
『この二人の掛け合い、ずっと見ていられる』
『アナスイとはまた違った勇者同士の空気感だな』
『キシリア様、トライアングルに馴染むの早くない?』
マドカは満足そうに頷くと、改めてカメラに向き直った。
「はい! というわけで、今日はキシリアさんと一緒に、ダンスをしたり、みんなからの質問に答えたりしていきまーす!」
「ええ! せっかくの機会だもの。存分に楽しみましょう!」
キシリアは優雅に髪を払い、カメラに向かって微笑んだ。
「怠惰大陸のみんな! そして、ほかの大陸のみんなも!」
彼女は自信満々に胸を張る。
「しっかり見て、キシラーになるのよ!?」
『最後まで勧誘してるwww』
『トライアングル公式配信でファン獲得活動』
『キシラーになるかは、これからの配信次第だな!』
『ダンス配信、楽しみにしてるぞ!』
「ふふん! その意気よ!」
「いや、だからここはトライアングルの公式配信なんだってば!」
マドカのツッコミと、キシリアの高笑い。
賑やかなコラボ配信は、始まったばかりだった。




