キシリア様観光3
# 第21話 キシリア様の新作お菓子と、キシラー誕生!
キシリアはゴールの街を歩きながら、配信を続けていた。
勇者会議でマドカが落ちる直前に口にした言葉が、ずっと気になっていたのだ。
『そういえば、ミルフィーユの新作を作ったんだよね』
それだけ言い残して、詳しい説明もないままマドカは落ちてしまった。
エキドナの勇者から聞いた話では、ミルフィーユとはパイとクリームを使ったお菓子らしい。
キシリアは、そのお菓子をずっと楽しみにしていた。
「ミルフィーユ……いったいどんなお菓子なのかしら。パイとクリームを使うなんて、聞いただけでも期待してしまうわね!」
『ミルフィーユって、どんなお菓子なんだ?』
『パイとクリームってことは、甘いお菓子なのか?』
『新作ってことは、まだ食べられないのかな?』
「そこが気になるのよ! せっかく楽しみにしてきたのだから、ぜひ食べてみたいわ!」
『エキドナのお菓子って、すぐに売り出すわけじゃないんだよな』
『まずは試作して、ちゃんと認められてからレシピが出るんだっけ?』
「……認められてから?」
キシリアは、視聴者のコメントに目を向けた。
『新作のお菓子を作っても、すぐにレシピを公開するわけじゃないんだよ』
『試作を重ねて、味や作りやすさなんかを確かめるんだ』
『それで、きちんと認められてから販売したり、レシピを公開したりするんだよ』
「なるほど……作ったらそれで終わり、というわけではないのね」
『みんなが納得できるものになってから、ってことだな』
『コーヒーを使ったお菓子も、いろいろ試行錯誤してたらしいぞ』
「ふふっ、そういうことなら、今回のミルフィーユも期待できそうね!」
キシリアは、ますますミルフィーユを食べたくなっていた。
『シュークリームもおいしいぞ』
『エキドナのお菓子なら、そっちも気になるよな』
「シュークリームまであるの!? もう、これは食べるしかないじゃない!」
キシリアが楽しそうにコメントを眺めていると、ふと気づいたことがあった。
「そういえば、あなたたちのこと、いつまでも視聴者と呼ぶのも味気ないわね……」
『たしかに』
『じゃあ、なんて呼ぶんだ?』
『キシリア様のファンとか?』
『ファンって呼び方も普通すぎる気がするなw』
「ふむ……」
キシリアは少し考えるようにして、それからぱっと顔を上げた。
「キシリア……キシラーね!」
『キシラー!?』
『急に決まったwww』
『キシリアからキシラーか』
『わかりやすいけど、勢いで決めたなw』
『今日から俺たちはキシラーなのか?』
「当然でしょう! このキシリア様を応援する者たちなのだから、キシラーと呼ぶのがふさわしいわ!」
『本人が気に入ってるならいいかw』
『キシラー、語感はけっこう好き』
『キシラーの皆さん、よろしくお願いします』
『自分で名乗るの、ちょっと恥ずかしいなw』
「何を言っているの! 私が名前をつけてあげたのよ? 光栄に思いなさい!」
『はい、キシリア様!』
『急に忠誠心が試されてるw』
『キシラーの団結力が試される瞬間』
『キシリア様、今日も絶好調だな』
「ふふん、よろしい!」
キシリアは満足げに笑い、再び街を歩き始めた。
ミルフィーユを食べること。そして、エキドナの勇者たちが作るお菓子を味わうこと。
楽しみが増えたキシリアの配信は、まだまだ続くのだった。




