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落内円は落ちている  作者: 七風


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勇者会議雑談20



『リゼット【エキドナ公式】:さて、別に宣伝というわけではないのだけど……あなたたち、ヒロバトは知っているわね?』


リゼットが話題を切り替えると、会議場にいる勇者たちがそれぞれ反応した。


「配信では見たことがあるが、本物はまだだな」


プライドは腕を組んで答えた。


「私は取り寄せたわよ!」


キシリアが、待ってましたとばかりに声を上げる。


「ただ、データの問題なのよね……。私より強い相手って、なかなかいないじゃない?」


『マドカ【エキドナ公式】:あはは……キシリアさん、それ自分で言っちゃうんだね』


「事実なんだから仕方ないでしょう! 自分との戦闘訓練はできるから、自分の動きを確認できるのはいいのよ。でも、やっぱり自分より強い相手と戦いたいじゃない?」


キシリアは少し不満そうに頬を膨らませた。


ヒロバトの戦闘訓練機能は、登録された戦闘データをもとに相手を再現し、実際に戦っているかのような訓練を行えるものだ。


自分自身の動きを確認するには便利だが、強者と戦って技術を学びたいとなれば、相応の相手のデータが必要になる。


「俺も飛んで買いに行ったが、実に興味深いものだったぞ」


ジークフリートも、満足そうに頷いた。


「だが、キシリアと同じ悩みだな。強者のデータとなると、どうしても難しい。とはいえ、あの機能と技術を考えれば、値段には十分納得できる」


『おお、ジークも買ってたのか!』

『勇者がわざわざ飛んで買いに行くヒロバトw』

『でも、自分より強い相手がいないって悩みは贅沢だなw』


「そんなにすごいのか?」


プライドはまだ実物を見たことがないため、いまひとつ実感が湧かないようだった。


「エキドナでの戦闘訓練では、エキドナのメンバーを選択できますからね」


シルヴァが説明を引き継ぐ。


「剣聖であるムサシさんとも戦えますし、リゼット様とも戦えます」


「……は?」


プライドの表情が変わった。


『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! 普段なら、ムサシやお姉ちゃんと本気で戦う機会なんて、なかなかないでしょ?』


「しかも、怪我をする心配がありませんわ」


アナスイも穏やかに付け加えた。


「相手から攻撃を受けても無傷ですから、回避の練習にもなりますわね。実戦では危険な攻撃を、何度でも試せるのですもの」


『それはすごいな……』

『ムサシと何度でも戦えるってことか!?』

『しかも、負けても怪我なし?』

『剣士なら喉から手が出るほど欲しいだろ、そんな環境!』


『リゼット【エキドナ公式】:ただし、動きは本物とまったく同じというわけではないわ』


リゼットは、そこで注意を促した。


『リゼット【エキドナ公式】:あくまで記録された戦闘データをもとにしたものだから、本人はまだまだ成長してる。データを取った時の状態基準よ。そして常に同じ動きをするわけではないわね。最適な行動をするわ。」


「なるほどな。今の本人そのものではないが、技術や動きを学ぶための教材としては十分すぎるってことか」


プライドも、ようやくヒロバトの価値を理解し始めたようだった。


『マドカ【エキドナ公式】:うん! 動きを見たり、攻撃の癖を覚えたりするにはすごくいいんだよ!』


『リゼット【エキドナ公式】:あなたたちが使っている、そこの会場に限るのなら……わたしたちエキドナの戦闘データを置いてあげてもいいわ』


「…………は?」


プライドが固まった。


『マドカ【エキドナ公式】:えっ、いいの!? お姉ちゃん!』


『リゼット【エキドナ公式】:ええ。ただし、そこの会場以外で起動させたら爆発するようにするけれど』


「爆発って、そこまでするのかよ!?」


プライドが思わず声を荒らげた。


『爆発するの!?』

『データの持ち出し対策が物騒すぎるwww』

『いや、でもそれくらいの価値はあるのか……?』


「当たり前だろう?」


ジークフリートが、プライドの反応を不思議そうに見た。


「一流どころか、それ以上の戦士たちの戦闘データを参照できるのだぞ? しかも、実際には戦うことすら難しい相手だ。値段など、つけられるものではない」


「その通りよ!」


キシリアも力強く同意した。


「マドカのデータだけでも、剣術を極めたい人にとっては最高の教材なのよ!? 攻撃の組み立て方も、間合いの取り方も、実際に戦いながら学べるんだから!」


『マドカ【エキドナ公式】:えへへ……そう言ってもらえると嬉しいね!』


「実際、怠惰の冒険者ギルドでは、各地から三台ずつ注文が入っていたそうですわね」


アナスイが思い出したように言った。


『マドカ【エキドナ公式】:うん! 私とムサシとアリシアとお姉ちゃんのデータが使えるからね。みんな、ずっとギルドで冒険者と遊んでるみたいだよ!』


『冒険者と遊んでるwww』

『本人たちは遊び感覚でも、冒険者側は必死だろw』

『ムサシとリゼット様に挑めるなら、そりゃ注文も入るわ』

『各地に三台ずつって、需要がすごいな!』


「僕も稼働しているところを見に行きましたが……皆さん、ボコボコにされていましたね」


シルヴァが、少し苦笑しながら付け加えた。


「何度挑戦しても勝てない方もいましたし、逆に何度も挑戦して、少しずつ動きを覚えている方もいました。訓練としては、かなり有意義だと思います」


『負けても怪我しないなら、何度でも挑めるからな』

『勝てない相手に何度でも挑戦できるのは最高だろ』

『冒険者たち、強くなるために通い詰めそうw』


「そんなデータを、この会場限定で置いてもらえるというのなら……」


ジークフリートは真剣な顔でリゼットを見つめた。


「俺はここに住むぞ?」


『リゼット【エキドナ公式】:住まないでちょうだいな。わたしたちが、いつでも対応できるわけではないのだから。訓練したいからと毎日のように来られても困るのよ』


『ジーク、即決で移住宣言www』

『勇者会議場が剣術道場になっちまう!』

『会議より訓練が目的になりそうだなw』


『マドカ【エキドナ公式】:あー、なるほど! 本人が転移で訓練にエキドナに来るんじゃなくて、私たちの幻影に戦わせるわけだね!』


『リゼット【エキドナ公式】:そういうことね。本人が対応する必要がないから、訓練用のデータとして置いておけるわ』


「……それなら、俺も毎日通っていいのでは?」


ジークフリートは、まだ諦めていなかった。


『リゼット【エキドナ公式】:だから、訓練したいときはそこに行けばいいじゃない。わざわざ住まなくてもいいわよ』


『wwwww』

『リゼット様、ジークの扱いに慣れてるなwさすが元部下ww』

『三百年越しの再会前からこれかよw』


『マドカ【エキドナ公式】:でも、お姉ちゃん。実際に置いたら、みんな色々と聞きに来そうだよね?』


『リゼット【エキドナ公式】:ええ。特に、シルヴァのようにしつこく質問してくる人がいると、対応するのが面倒なのよ』


「僕ですか!?」


シルヴァが、思わず声を上げた。


「いえ、確かに気になることがあれば質問はしますが……しつこいとまで言われるとは思いませんでした!」


『マドカ【エキドナ公式】:あははは!でも、シルヴァ、気になったことはちゃんと調べたくなるタイプだもんね!』


「それは、正確な情報を得るためには必要なことです!」


「ほら、そういうところよ」


リゼットが淡々と指摘する。


『質問が止まらないシルヴァwww』

『戦闘データより、リゼット様への質問時間のほうが長くなりそう』

『勇者会議場、訓練施設としても研究施設としても大変なことになるぞw』


「……なるほどな」


プライドは、ようやく納得したように頷いた。


「ヒロバトの価値は分かった。だが、データを置いたら置いたで、別の問題が出てくるってわけか」


『リゼット【エキドナ公式】:そういうこと。利用するなら、ルールを決めればいいわ。転移でエキドナに通われるよりはマシなのよ。飛空艇計画まだ始まったばかりなのだから。』


『マドカ【エキドナ公式】:でも、みんなが強くなるために使ってくれるなら、私は嬉しいよ!』


会議場の勇者たちは、エキドナの戦闘データを利用できる可能性に、すっかり興味を引かれていた。


ただし、そのデータが本当に設置されるかどうかは、まだ決まっていない。


そして、もし実現すれば――勇者会議場が、会議よりも訓練を目的に集まる場所になってしまう可能性も、十分にありそうだった。


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