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落内円は落ちている  作者: 七風


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勇者会議雑談18



# 第13話 勇者レベル999と、不老の条件


『リゼット【エキドナ公式】:それにしても、ジーク……あなた、エキドナの配信を見ているのね。意外だわ』


リゼットの言葉に、会議場にいる勇者たちの視線がジークフリートへと集まった。


『マドカ【エキドナ公式】:あっ、お母さんシリーズも見てくれたんだね! ありがとう!』


「お、おう……」


マドカからも嬉しそうに反応され、ジークフリートは少しだけ居心地が悪そうに咳払いした。


「そういや、お前、モンバトにも詳しいよな? エキドナの配信、ずっと見てるだろ?」


プライドが思い出したように口を挟む。


「ふっ……それは……」


ジークフリートは一瞬だけ言葉に詰まった。


そして、少しばかり照れくさそうに顔を背けながら、観念したように口を開く。


「それは……会えなかった方々の活躍を見るのは面白いだろう!?」


『マドカ【エキドナ公式】:あはは! そっか、そういうことだったんだね!』


「だが……見るだけで満足して、会いに行く勇気がなかったのだがな……」


最後のほうは、先ほどまでの勢いが嘘のように弱々しかった。


『あっ……』

『推しの配信を見て満足してたタイプかw』

『いや、本人に会うとなると緊張するのは分かる』

『三百年以上会えなかった相手だもんな……』

『でもリゼット様に命令されて、ついに会いに行くことになったわけかw』


「……別に、そこまで恥ずかしがることでもねぇだろ」


プライドも、さすがに少し気の毒に思ったのか、それ以上はからかわなかった。


『マドカ【エキドナ公式】:でも、ムサシシリーズとかも見てそう!』


「もちろんだ!」


今度は即答だった。


「ムサシ様は、昔以上の剣の腕前を身につけておられる。俺も過去には剣聖と呼ばれていたが……やはり、あの方は強い。成長が止まっていないようだ」


その声には、懐かしさだけでなく、純粋な剣士としての敬意がこもっていた。


かつて剣聖と呼ばれた男が、今なお自分より強いと認める相手。


しかも、その相手は昔から知っている人物なのだ。


『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! ムサシも、やればやるだけ強くなるって言ってたしね!』


『リゼット【エキドナ公式】:実際、そうよ。レベルが999で止まっていても、わたしとムサシは成長が止まっていないもの』


「……は?」


プライドが思わず聞き返した。


『リゼット【エキドナ公式】:表記上のレベルがカンストしているだけで、それ以上強くなれないという意味ではないらしいわ』


『えええええ!?』

『レベル999って上限じゃなかったのか!?』

『数字が止まってるだけで、中身は成長し続けてるってこと!?』

『じゃあレベル999同士でも、実力差がどんどん広がる可能性があるのか……』


「それも初耳なんだが……」


プライドは眉間にしわを寄せた。


これまで、レベル999といえば到達できる最高地点という認識だった。


そこに到達した者は、少なくともレベルという数字の上では、それ以上成長しない。


だが、リゼットの話が事実なら、実際にはそうではないらしい。


「レベルの数字が変わらなくても、鍛えれば強くなる……ってことか?」


『マドカ【エキドナ公式】:うん! ムサシもそう言ってたよ。レベルが上がらなくなったからって、修行する意味がなくなるわけじゃないんだって!』


「なるほど……。確かに、剣の腕前までレベルの数字だけで決まるわけではないからな」


ジークフリートは納得したように頷いた。


しかし、キシリアは別の部分が気になったらしい。


「ちょっと待ちなさいよ! じゃあ、レベルって何なのよ!?」


『マドカ【エキドナ公式】:えっ?』


「だってそうでしょう!? 999が上限じゃないのに、数字だけはそこで止まるなんておかしいじゃない! まさか、レベル1000を解放するクエストでもあるんじゃないでしょうね!?」


『レベル1000解放クエストwww』

『急にゲームのやり込み要素みたいになったぞw』

『でも実際、何か条件がある可能性はあるよな』

『レベル999の先に何があるのか、気になりすぎる……』


『リゼット【エキドナ公式】:それは、わたしも知りたい情報ね』


リゼットも、真面目な声で同意した。


『リゼット【エキドナ公式】:このままでは、レベル999が不老になるためだけにあるようなものじゃない?』


「不老……?」


プライドが呟く。


『リゼット【エキドナ公式】:まあ、実際に不老になった者が八人確認できているわけだから、無関係とも言い切れないのだけど』



『レベル999と不老って、やっぱり関係あるのか?』

『でも、999になれば全員が不老になるってわけでもないんだよな……?』


「ちなみに、俺も999だが」


ジークフリートが、さらりと付け加えた。


「…………は?」


今度はプライドだけでなく、キシリアまで固まった。


「ちょっと待ちなさい! あんたもレベル999なの!?」


「うむ」


「いや、うむ、じゃねぇよ! そんな大事なこと、今さら言うな!」


『マドカ【エキドナ公式】:あはは……! でも、ジークさんで九人目ってことになるのかな?』


「そこは少し分けて考えたほうがいいかもしれませんね」


シルヴァが冷静に指摘した。


「不老になった方が八人確認されていて、今回、ジークさんがレベル999だと判明しました。ただ、ジークさんは竜人化した経緯もあります。レベル999に到達した人間と、竜人化したジークさんは、別の事例として扱ったほうがよさそうです」


『マドカ【エキドナ公式】:あー、確かに。レベルだけじゃなくて、種族の変化も関係しているかもしれないもんね』


『リゼット【エキドナ公式】:そうね。現時点では、何を条件に不老になるのか、断定できるだけの情報がないわ』


「……なんだか、分からないことだらけだな」


プライドは腕を組んだ。


レベル999に到達することと、不老になること。


そして、レベルがカンストしたあとも成長できること。


それぞれに関係があるようにも思えるが、肝心の仕組みはまだ分かっていない。


『マドカ【エキドナ公式】:まあ、そのうちエキドナか勇者も不老になるんじゃないの?』


「随分と気楽に言うわね……」


キシリアが呆れたように呟く。


『マドカ【エキドナ公式】:だって、実際にレベル999でも成長できる人がいるんだよ? まだ分かってないことがあるなら、これから分かるかもしれないじゃん!』


「ふふっ、確かにそうですわね」


アナスイは微笑みながら頷いた。


「ただ、私としては……リゼット様のように美しい年齢で不老になりたいですわね」


『…………』

『そこは重要なのかw』

『不老になれるかどうかだけじゃなくて、なる年齢まで気にするのかw』


「誰だってそうよ!!」


キシリアが即座に同意した。


「どうせ不老になるなら、若くて綺麗な時期がいいに決まっているでしょう!? 年齢を重ねてから不老になったら、そこからずっとその姿なのよ!?」


「いや、まだ不老になる条件すら分かってねぇだろ……」


プライドのツッコミも、今度ばかりは正論だった。


『マドカ【エキドナ公式】:あはは! でも、確かに気になるよね! 不老になるタイミングって、自分で選べるのかな?』


『リゼット【エキドナ公式】:まあ、止めはしないわ。実際、レベル999になれば確実に不老になれるというわけでもないのだし』


リゼットは淡々と続けた。


『リゼット【エキドナ公式】:わたし自身、レベル999になったのは五百年以上前だから、今となっては当時のこともよく分からないわ』


『五百年以上前!?』

『レベル999になってから、そんなに経ってるのか……』

『本人にも条件が分からないんじゃ、調べるのも難しそうだな』

『レベル1000解放クエスト説、まだ捨てられないぞw』


「……結局、レベル999の先には何があるんだろうな」


プライドが呟くと、会議場にいた勇者たちも、それぞれ考え込むような表情になった。


レベル999は、本当に成長の限界なのか。


不老になるための条件は何なのか。


そして、もしレベル1000という領域が存在するのなら、そこへ至る方法はあるのだろうか。


今のところ、答えを知る者はいない。


ただ一つ確かなのは、少なくともリゼットとムサシは、レベルの数字が止まったあとも成長し続けているということだった。


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