勇者会議雑談17
『リゼット【エキドナ公式】:ただ、あなたたち、お金はあるのかしら? 今回はうちのメンバーの弟子を通り越して、いきなり特注することになるのだけど』
エキドナには優秀な職人や研究者が揃っている。勇者それぞれの戦い方に合わせた装備を作ること自体は可能だろう。
しかし、特注品となれば話は別だ。材料費はもちろん、設計や製作にかかる手間も相応のものになる。
「もちろん、私の個人財産はかなりあるもの! 余裕で依頼できるわ!」
キシリアは胸を張り、自信満々に言い切った。
「ふっ……長年貯め込んだ不要な財産など、腐るほどあります!」
ジークフリートも、特に問題はないとばかりに頷く。
『勇者って、やっぱりお金持ちなんだな……』
『長年貯め込んだ不要な財産って言い方がすごいw』
『金貨何枚くらいあるんだろうな』
「え、あ……」
一方、プライドは妙に歯切れが悪かった。
『マドカ【エキドナ公式】:ん? プライドさん、どうしたの?』
「ふふっ、マドカ! かわいそうよ! どうせ『俺はいつ死ぬかわからねぇからな!』とか言って、その日暮らしをしているのよ!」
「う、うるせぇな!」
キシリアに図星を突かれたのか、プライドは不機嫌そうに顔をしかめた。
「いや、別に金がねぇってわけじゃねぇぞ。ただ……例えばだ。怠惰で獲れない素材を持っていけば、その分、割引してもらうとかはどうだ?」
「それは少し情けないかもしれませんわね」
アナスイが、困ったように微笑む。
「おい! 別に悪い案じゃねぇだろ!」
『素材で支払うのは普通にありじゃない?』
『エキドナにとっても珍しい素材なら、喜ばれそうだけどな』
『プライド、現金払いを避けようとしてるように見えるぞw』
「僕の装備を作ってもらったときも、強欲大陸の固有素材で必要そうなものは自分で用意しましたし、そういう形もありなのでは?」
シルヴァが落ち着いた口調で口を挟んだ。
「なるほど。シルヴァさんも、そうやって特注装備を作ってもらったんだね!」
『マドカ【エキドナ公式】:そうだよね! 怠惰にない珍しい素材をお土産に持ってくれば、技術班も面白がって、ガチな装備を作ってくれるかも!』
『お土産っていう規模じゃないだろw』
『珍しい素材を渡したら、職人たちが本気を出すのか』
『素材を見た瞬間、研究が始まりそうだなw』
「それだったら、憤怒でもレア素材を持っていこうか」
ジークフリートも、興味を持ったようだった。
「それなら、嫉妬でも集めてから持っていくのも面白そうね!」
キシリアも、さっそく自分の大陸で手に入る素材を思い浮かべ始める。
「傲慢のダンジョンにも、結構いい素材がありそうな感じがすんな!」
プライドも、いつの間にか前向きになっていた。
『リゼット【エキドナ公式】:そこは、うちの開発に相談なさいな。面白ければ、あっちが勝手に余計な効果までつけるわよ?』
『余計な効果www』
『便利な効果ならいいけど、何がつくか分からないのが怖い』
『エキドナの技術班、面白そうと思ったら止まらないタイプなのか?』
『マドカ【エキドナ公式】:あー、やりすぎじゃない? ってとき、あるよね! お母さんの魔法銃とか。レベル三十くらいのときに、オークの大群を全部氷漬けにしてたし!』
「ああ、あの配信か」
ジークフリートが、懐かしそうに頷いた。
「なかなか面白かったな。あの配信は『お母さんシリーズ』だろう?」
『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! お母さんが魔法銃を使ってみる配信! 最初は試し撃ちのつもりだったのに、気がついたらオークの大群がまとめて凍ってたんだよね』
『試し撃ちで大群を全滅させるなwww』
『レベル三十でその威力なのかよ!』
『お母さんシリーズ、毎回何かしら大変なことになってない?』
『職人が面白がって効果を盛った結果がこれか……』
「……特注装備を頼むときは、効果をちゃんと確認したほうがよさそうだな」
プライドは少しだけ不安そうに呟いた。
「何を言っているのよ! せっかく作ってもらうのだから、強いほうがいいに決まっているでしょう!」
「強いのと、扱いきれるのは別の話だろうが!」
『確かにw』
『装備の性能が上がっても、使いこなせなきゃ意味ないからな』
『でも自分の大陸のレア素材を持ち込んで特注装備、夢があるな!』
『リゼット【エキドナ公式】:素材があるなら、まずは開発に相談してみなさい。どんな装備にできるかは、素材と本人の希望次第ね。面白いものができるかもしれないわよ』
『マドカ【エキドナ公式】:じゃあ、みんなで素材探しをするのも楽しそうだね! 観光のついでに集めて、お土産にしてもいいし!』
「ふっ……なるほど。自分の大陸では使い道の少ない素材でも、エキドナなら別の価値を見出してくれるかもしれないわけか」
ジークフリートが納得したように頷いた。
「そういうことね! なら、嫉妬の大陸でしか手に入らない素材を探してみるわ!」
「僕も、強欲大陸の素材で何か新しい装備が作れるか、また相談してみるのも面白そうですね」
シルヴァも穏やかに笑った。
こうして、特注装備の話は、いつの間にか各大陸で珍しい素材を集める計画へと発展していった。
そしてエキドナの技術班が、その素材を見てどこまで本気を出すのか――それは、まだ誰にも分からなかった。




