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落内円は落ちている  作者: 七風


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勇者会議雑談16

# 第11話 ゴールの土地所有者と、町の本当の運営者


『リゼット【エキドナ公式】:さて、ほかに聞きたいこともないのなら、質問はまたあとで配信にしてちょうだい。さすがに今日は、あなたたちの話が長すぎるわよ?』


リゼットは、少し呆れたような口調でそう告げた。


今日の会議は、当初の予定からすっかり脱線していた。


勇者同士の話し合いだったはずが、いつの間にか三百年以上前の知人との再会があり、エキドナへの依頼の話があり、さらにはオリハルコンの在庫や大型飛空艇の建造計画にまで話題が広がってしまったのだ。


一つひとつの情報が大きすぎるうえに、どれも簡単に聞き流せるような話ではない。


『マドカ【エキドナ公式】:確かに! あははっ、今日はいろいろな話が出てきたもんね! 視聴者のみんなも、情報量が多すぎて頭が追いついてないかもしれないね!』


『いや、マドカ様が次から次へと情報を投下するからだろwww』

『三百二十年ぶりの再会から始まって、オリハルコンの在庫に大型飛空艇だぞ? 一回の配信で扱う情報量じゃないwww』

『これ以上聞いたら、俺たちの頭がパンクするわwww』


「……いや、待て」


コメント欄を眺めていたプライドが、ふと何かに気づいたように口を開いた。


「マドカがエキドナの内情を、ほとんど暴露していた気がするんだが……あれ、大丈夫なのか?」


『マドカ【エキドナ公式】:えっ? あはは、言われてみればそうかも?』


「そうかも、じゃねえだろ!」


プライドは思わず声を張り上げた。


「オリハルコンが倉庫に入りきらないとか、大型飛空艇を作ってるとか、エキドナにどんな人材がいるとか……普通、組織の内部事情って、そんなに気軽に話していいものなのか?」


『エキドナの情報公開基準、マドカ様の気分次第説www』

『いや、本人が代表に怒られてないなら大丈夫なんじゃないか?』

『リゼット様がいるんだから、さすがに駄目な情報は止めるだろ……たぶん』

『今のところ止める気配がないんですが、それはw』


『リゼット【エキドナ公式】:ああ、それ? 別に問題ないわよ』


リゼットは、プライドが心配していたことなど大した問題ではないとでもいうように、あっさりと答えた。


『リゼット【エキドナ公式】:わたしたちは、別に隠すようなことをしているわけではないもの。もちろん、何でもかんでも公開していいという話ではないけれど、少なくとも、今マドカが話したような内容については困らないわ』


「……そ、そうなのか?」


『リゼット【エキドナ公式】:ええ。そもそも、ゴールの町だってそうでしょう?』


「ゴール?」


突然話題が変わり、プライドは首を傾げた。


『リゼット【エキドナ公式】:エキドナの初期メンバーが活動するための土地を必要として、マドカが契約した場所よ。怠惰大陸の領土とは独立した土地だということは、もう知っているでしょう?』


『マドカ【エキドナ公式】:うんうん! 最初は、エキドナのみんなが活動するための場所が必要だったんだよね! それで土地を契約したんだけど、私たちと合流した村人さんたちが、そこをどんどん発展させていったんだよ!』


「……待て。つまり、ゴールの町って、最初からあんなに大きかったわけじゃないのか?」


プライドは、改めて確認するように尋ねた。


『マドカ【エキドナ公式】:そうだよ! 最初から今みたいな町だったわけじゃないからね。私たちが土地を用意して、そこに合流した村人さんたちが暮らし始めて……気がついたら、あそこまで大きくなっていたんだよね!』


「気がついたらって……町が発展するのは、そんな簡単な話じゃないだろう!?」


『マドカ【エキドナ公式】:あはは、私たちが全てやってたら私達の時間が取れないじゃん!村から町へ発展したとこで運営は任せたよ。』


『村人たちの行動力がすごかったってことか』

『エキドナが土地を用意して、そこから住民が町を作っていったのか』

『それなら、ゴールってエキドナの所有地にある町なのか?』

『待てよ、土地が独立してるって話も気になるんだが……』


『リゼット【エキドナ公式】:そういうことよ。わたしたちが土地を用意したのは事実だけれど、町の規模をあそこまで大きくしたのは、合流した村人たち自身なのだから』


リゼットは、ゴールの発展を自分たちの功績として誇る様子もなかった。


土地を用意したことと、そこに町ができたことは別の話。


エキドナは活動拠点を必要として土地を契約した。そこに人々が集まり、生活を始め、必要な施設を整え、暮らしやすい場所へと変えていった。


その積み重ねが、現在のゴールにつながっている。


『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! だから、ゴールについても誤解している人がいるんだよね。たまに「ここは俺の土地だぞ!?」って言ってくる人がいるんだけど……』


「……は?」


プライドが、思わず間の抜けた声を漏らした。


『マドカ【エキドナ公式】:いや、もちろん、その人が家を建てて暮らしていること自体は問題ないんだよ? でも、土地そのものを自分が所有していると思い込んでいる場合があるんだよね』


『土地を借りて家を建てたのに、自分の土地だと思ってるってことか?』

『土地の所有者と、家を建てて暮らしている人は別ってことだな』

『町が大きくなってくると、その辺の認識も人によって違ってくるのか……』


「あら? 違いますの? ゴールで暮らしている方々は、ご自分の土地に家を建てていらっしゃるのだと思っていましたわ」


アナスイが、不思議そうに尋ねた。


ゴールの町で人々が暮らし、家を建て、日々の生活を営んでいることは知っていた。しかし、土地の所有権がどのように扱われているかまでは、詳しく意識していなかったらしい。


『マドカ【エキドナ公式】:うん、そこは少しややこしいんだよね! 確かに、正式に土地を売っている人もいるよ。契約して、土地そのものを購入してもらった場合は、その人の土地になるからね!』


『マドカ【エキドナ公式】:でも、ゴールの町の土地そのものの売買、基本的に町長さんたちに運営を任せているんだよ。町のことは町長さんたちが中心になって決めていくけど、最終的な土地を売るかの決定権は私にあるんだ』


「……なるほど。町長たちが町を運営しているが、土地の所有者はマドカ、ということか?」


プライドが確認すると、マドカは画面の向こうで頷いた。


『マドカ【エキドナ公式】:そういうこと! もちろん、町長さんたちが勝手に何も決められないって意味じゃないよ? 普段の町の運営は任せているし、私がいちいち細かいことまで決めているわけじゃないからね!』


『町長が日々の運営を担当して、マドカが最終決定権を持ってるのか』

『土地の所有と町の運営は別なんだな』

『そりゃ、町が大きくなったらマドカ一人じゃ管理しきれないよなw』

『いや、それでも最終決定権を持ってるのはすごいけどな……』


『マドカ【エキドナ公式】:それに、ゴールに引っ越してきた人たちは、町から貸し出されている土地に家を建てて暮らしている場合が多いんだよね。家は自分のものでも、土地そのものは私のもの、という形になるわけだよ!』


「……ああ、そういうことか」


プライドはようやく納得したように頷いた。


「つまり、家を建てたからといって、その下の土地まで自動的に自分のものになるわけじゃないんだな。町から土地を借りているなら、あくまで借りている土地の上に自分の家を建てているだけ、と」


『マドカ【エキドナ公式】:そうそう!まずは土地をレンタルから正式に買いとらないとダメなわけ。それから家を建てるなら好きにすればいい レンタルしてるだけで土地を主張されても契約違いなんだ』


「なるほど……。ゴールの住民がみんな、マドカの土地を借りているわけではないのですね」


シルヴァも、話を整理するように口を開いた。


「土地そのものを購入した人もいれば、町から借りている人もいる。町の運営は町長たちに任されていて、最終的な決定権はマドカさんにある……そういう仕組みなのですね」


『マドカ【エキドナ公式】:うん! シルヴァ、その理解で合ってるよ!そしてゴールにいる人の家賃が町の運営費になってるわけだね。』


『リゼット【エキドナ公式】:まぁ、そういうことね』


リゼットは、簡潔に話を締めくくった。


『リゼット【エキドナ公式】:土地を用意したのはマドカ。町を発展させたのは、そこに集まった人々。そして、日々の運営は町長たちに任せている。そして日々の家賃が運営費、ゴールについては、それだけ理解していれば十分でしょう』


『なるほど、ようやく整理できた』

『町を作った人、土地を所有している人、運営している人が、それぞれ別なんだな』

『マドカが町のことを全部やってるわけじゃないのか』

『でも、最後に決める権限はマドカにある、と……』

『「ここは俺の土地だぞ!」って言う人は、契約内容を勘違いしてるわけねwww』


「……何だか、聞けば聞くほどゴールの町が気になってきたな」


プライドは、呆れたように呟いた。


最初は観光の話だったはずなのに、今ではエキドナの内情だけでなく、町の成立経緯や土地の所有権、運営体制まで聞かされている。


しかも、マドカもリゼットも、これを特別な秘密だとは考えていないらしい。


『マドカ【エキドナ公式】:あはは! 実際に来てみたら、もっといろいろ分かると思うよ! ゴールもエキドナも、話で聞くのと実際に見るのとでは、けっこう違うからね!』


『リゼット【エキドナ公式】:そうね。だからこそ、興味があるのなら、いずれ自分の目で確かめに来ればいいわ』


「……そうだな。こうなったら、実際に見てみないと分からねえことも多そうだ」


プライドがそう答えると、キシリアも勢いよく頷いた。


「当然よ! ゴールの町も、エキドナも、私の目で確かめてみたいわ! 土地の話は少し難しかったけれど、実際に行けばもっと分かりやすいでしょう?」


『マドカ【エキドナ公式】:ふふっ、そうだね! みんなが来るのを楽しみにしてるよ!』


こうして、勇者たちの間では、エキドナへの訪問だけでなく、ゴールの町そのものへの関心も高まっていった。


エキドナが用意した土地を、人々が暮らしやすい町へと発展させたゴール。


土地の所有者であるマドカが、町の運営を町長たちに任せながら、最終的な決定権を持っている場所。


その仕組みは、外から話を聞くだけでは分かりにくい部分もある。


けれど、マドカたちにとっては、何も隠す必要のない、ごく当たり前のことだった。


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