勇者会議雑談15
『リゼット【エキドナ公式】:そうね。それから、装備について相談したいのなら、エキドナの屋敷には様々な分野の天才がいるわ。あなたたち専用の装備だって、作れるでしょうね』
「……専用装備?」
プライドが聞き返した。
装備の相談に乗ってもらえるという話は聞いていた。しかし、専用装備まで作れるとなると、話の規模が変わってくる。
『リゼット【エキドナ公式】:ええ。武器や防具に限らず、それぞれの能力や戦い方に合わせたものを考えることもできるでしょう。もちろん、実際に何を作るかは本人の希望と、製作を担当する者たちとの相談次第だけれど』
『マドカ【エキドナ公式】:うん! エキドナには発明や製作が得意な人たちもいるからね! 得意分野もそれぞれ違うし、相談してみたら面白いものができると思うよ!』
『専用装備!?』
『勇者ごとの能力に合わせて作ってくれるってことか!』
『それ、普通に考えたらとんでもない話では?』
『いや、エキドナには天才が集まってるんだっけ……』
『でも、材料がなかったら作れないんじゃないか?』
『リゼット【エキドナ公式】:素材についても、そこまで心配はいらないと思うわよ。オリハルコンなんかも、在庫が倉庫に入りきらないものだから、わたしのインベントリに入れたまま、在庫として死んでいるくらいだし』
「…………オリハルコン?」
プライドの声が裏返った。
「お、おい……今、オリハルコンって言ったか?」
『リゼット【エキドナ公式】:ええ。オリハルコンよ。それがどうかしたのかしら?』
「どうかしたのかって……!」
プライドは思わず立ち上がりかけた。
「オリハルコンもあるのかよ!? いや、あるっていうか、倉庫に入りきらないって何だよ! 普通、そんな素材が大量に余るなんてことあるか!?」
「ちょっと待ちなさいよ!」
今度はキシリアが声を上げた。
「私のレイピアだって、相当な素材を使っているのよ!? それなのに、オリハルコンなんて私の武器に使われている素材の数倍は価値があるものじゃない! それが倉庫に入りきらないって……エキドナ、いったいどうなっているのよ!?」
『嫉妬様のレイピアより上の素材が在庫扱いwww』
『オリハルコンが倉庫に入りきらないって、どういう状況なんだよ!』
『インベントリに入れたまま在庫として死んでる、で笑ったw』
『普通なら国宝級の扱いでもおかしくない素材じゃないのか!?』
『エキドナの物資管理、どうなってるんだ……』
『リゼット【エキドナ公式】:オリハルコンなんて、そこまで珍しくもないわよ』
「「「珍しい!!」」」
プライドとキシリア、そして会議場にいた何人かの勇者たちの声が重なった。
『マドカ【エキドナ公式】:あははは! そうだよね! 普通は珍しいよね!』
『リゼット【エキドナ公式】:そうなの? エキドナでは、必要になれば使う素材のひとつというだけなのだけれど』
「その感覚がおかしいんだよ!」
プライドが即座に突っ込む。
「いや、俺だってオリハルコンがどれだけ貴重なのかくらい知ってるぞ!? それを必要になれば使う素材のひとつって……お前ら、いったい普段どんなものを作ってるんだよ!」
「私も知りたいわよ! そんな素材が余っているなら、専用装備どころか、伝説級の武器だって作れてしまうじゃない!」
キシリアは興奮した様子で身を乗り出した。
『リゼット【エキドナ公式】:ふふっ。素材があることと、それを使って優れた装備を作れることは別の話よ。だからこそ、エキドナにいる天才たちの出番なのだけれどね』
『素材だけじゃなくて、加工できる人材も揃ってるのか……』
『そりゃ専用装備の話もできるわけだ』
『オリハルコンが余ってる組織、エキドナ』
『もうその一言だけで情報量が多すぎるwww』
『マドカ【エキドナ公式】:あ、そういえば、オリハルコンで思い出した! 色欲大陸でダンジョンをクリアしたときの話なんだけどね!』
「……色欲大陸?」
プライドが首を傾げた。
『マドカ【エキドナ公式】:うん! ダンジョンを初攻略制覇したとき、ダンジョンマスターに言われたんだよ!』
マドカは、当時のことを思い出したのか、楽しそうに話し始めた。
『マドカ【エキドナ公式】:「初攻略だ! 望みの褒美を授けよう!」って!』
「そんなこともあるのかよ!?」
プライドが目を丸くする。
「ダンジョンを攻略したら、ダンジョンマスターが望みの褒美をくれるの!?」
「いや、初攻略だから特別だったのかもしれねぇけど、そんな話、俺は聞いたことがないぞ!」
「嫉妬大陸でもあるのかしら……?」
キシリアも興味津々だった。
「もしあるのなら、私も挑戦してみたいわね! 初攻略の褒美なんて、冒険者としては見逃せないじゃない!」
『マドカ【エキドナ公式】:ふふっ! それでね、面白かったのはここからなんだよ! ダンジョンマスターが、伝説級の武器や装備を与えることもできるって言ってきたの!』
『伝説級!?』
『ダンジョンマスターが直接くれるのか!?』
『初攻略の報酬としては豪華すぎるだろ!』
『マドカ、いったい何をもらったんだ……?』
『リゼット【エキドナ公式】:ああ、あったわね、そんなこと』
リゼットが、何でもないことのように相槌を打った。
『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! 私もワクワクしちゃってさ! どんな武器や装備がもらえるんだろうって、すごく楽しみにしてたんだよ!』
『マドカ【エキドナ公式】:そしたら、ダンジョンマスターがすっごく得意そうな顔をして、「どうだ! ダマスカス製だぞ!?」って!』
「…………ダマスカス?」
ジークフリートが、ぽつりと呟いた。
「オリハルコンより下位の素材だな……」
『マドカ【エキドナ公式】:そうなんだよ!』
マドカは、待ってましたと言わんばかりに答えた。
『マドカ【エキドナ公式】:もちろん、ダマスカス自体が悪い素材ってわけじゃないんだよ? でも、私たちがすでにヒヒイロカネ製の武器を持っているって伝えたら、ダンジョンマスターがすっごく落ち込んじゃってさ!』
『ああああwww』
『初攻略の褒美でドヤ顔したのにwww』
『ダンジョンマスター、完全に自信満々だったんだろうな……』
『伝説級の武器を用意したつもりが、相手はすでにそれ以上の装備を持っていたわけか』
『そりゃ落ち込むわwww』
「いや、ちょっと待て!」
プライドが頭を抱えた。
「ダンジョンマスターが落ち込むほどの素材を、もう持ってたのかよ!? しかも、それがヒヒイロカネって……!オリハルコンより上じゃねぇか!」
「それなら、ダンジョンマスターの気持ちも少し分かるわね……」
キシリアも、さすがに同情したような顔をした。
「せっかく伝説級の報酬を用意したのに、相手はもっと上の素材を使った武器を持っていたんでしょう? 自信作を披露した側としては、複雑でしょうね……」
『マドカ【エキドナ公式】:うん。それで結局、武器をもらう代わりに素材のセットをもらって終わったんだよね!』
『素材セットで済んだwww』
『いや、それも十分すごい報酬では!?』
『ダンジョンマスター、最後はちゃんと別のものを渡してくれたんだな』
『伝説級の武器より素材セットのほうがありがたい場合もあるんだな……』
『リゼット【エキドナ公式】:その素材セットの中に、大型飛空艇を作るための重要な素材が含まれていたのよ』
「……え?」
今度は、シルヴァが反応した。
『リゼット【エキドナ公式】:それがきっかけで、追加で必要になった素材を集めるために、強欲大陸で手に入るアイテムも集めることになったわね』
「なるほど……!」
シルヴァは、納得したように頷いた。
「そういう経緯だったのですね! 大型飛空艇の計画自体は知っていますが、色欲大陸のダンジョン攻略で得た報酬が、そのきっかけのひとつになっていたとは……そこまでは聞いていませんでした」
『マドカ【エキドナ公式】:ふふっ! そういうこと! ダンジョンマスターから素材をもらって、それを調べてみたら大型飛空艇に必要なものがあってね! そこから足りない素材を探して、強欲大陸のアイテムも集めて……今の飛空艇計画につながってるわけ!』
『ダマスカス製の武器から大型飛空艇につながるとはwww』
『ダンジョン攻略の報酬が、まさか飛空艇計画の重要素材だったとはな』
『ダンジョンマスター、結果的には大きな計画に貢献してるじゃないか!』
『本人は武器でドヤ顔するつもりだったんだろうけどw』
『オリハルコンが在庫扱いのエキドナだからこそ、報酬の素材を活用できたのかもしれないな』
「……なんつうか、話を聞けば聞くほど、エキドナの規模が分からなくなってくるな」
プライドは、呆れたように呟いた。
最初は装備の相談と転移アイテムのレンタルという話だったはずだ。
それが、オリハルコンの在庫、伝説級の武器、ダンジョンマスターからの報酬、そして大型飛空艇の建造計画へとつながってしまった。
しかも、リゼットとマドカにとっては、どれも特別な話というわけではないらしい。
「……私、ますますエキドナに行きたくなってきたわ」
キシリアは、目を輝かせながら宣言した。
「専用装備を相談できるうえに、オリハルコンまであるなんて! 実際にどんな場所なのか、自分の目で確かめないと気が済まないじゃない!」
『リゼット【エキドナ公式】:ふふっ。来るのなら歓迎するわ。ただし、装備の製作を依頼するのであれば、きちんと希望をまとめておくことね。素材があるからといって、何でもすぐに完成するわけではないのだから』
『マドカ【エキドナ公式】:そうだね! せっかくなら、自分に合った装備を作ってもらいたいもんね!』
「分かっているわ! 私のレイピアにふさわしいものを考えておくわよ!」
キシリアは、すっかりその気になっていた。
一方、プライドはまだオリハルコンが倉庫に入りきらないという話を引きずっているようだった。
「……なあ、リゼット殿。本当に、オリハルコンがそんなに余ってるのか?」
『リゼット【エキドナ公式】:ええ。だから、在庫として保管しているだけでは使い道がなくて困っているのよ』
「困る方向がおかしいだろ……!」
『マドカ【エキドナ公式】:あははは! でも、せっかくある素材なんだから、使えるところで使ったほうがいいよね!』
『その結果が大型飛空艇計画なのか……』
『エキドナ、資材の規模も発想の規模も桁が違うwww』
『勇者たちの専用装備も、どんなものになるのか楽しみだな!』
こうして、勇者たちのエキドナ訪問には、新たな目的が加わった。
ただ装備の相談をするだけではない。
エキドナに集う天才たちが、どのような素材を使い、どのような発想で、それぞれの勇者に合った装備を作り上げるのか。
そして、その豊富な素材の一部が、今まさに進められている大型飛空艇計画にもつながっている。
勇者たちは、エキドナという組織が自分たちの想像をはるかに超える場所なのだと、改めて思い知らされることになった。




