勇者会議雑談7
『マドカ【エキドナ公式】:そういえば、お姉ちゃんもなんちゃって勇者だったね。今の話を聞いてたら、「黙りなさいな」とか言ってそう』
配信画面の向こうで、マドカがふと思い出したように口を開いた。
その名前が出ると、勇者会議場にいるジークは懐かしそうに笑い、アナスイも思い当たる節があるのか、上品に口元を緩めた。
「言いそうですね。リゼット様なら」
「……ああ、よく言っていたな。リゼット様は」
『マドカ【エキドナ公式】:えっ、そんなに? 今の、適当に誰でもあしらってるお姉ちゃんとは違うの?』
「そうだな。彼女は誰にも頭を下げないからな」
『リゼット様、そんなにすごい人なの?』
『お姉ちゃんって、あのリゼット様だよね?』
『適当にあしらってるって言われてるんですがwww』
「王にも、『たまには動いたら? そろそろ死ぬわよ?』などと言っていたものだ」
『王様相手にそれ言うの!?www』
『忠告なのか脅迫なのかわからんw』
『いや、王様の健康を心配してる可能性も……』
『言い方ァ!』
『マドカ【エキドナ公式】:いやいやいや、王様だよね!? 普通、もうちょっと言い方ってものがあるでしょ!』
「リゼット様ですから」
ジークがあまりにも当然のように言うので、マドカは思わず画面の向こうで声を上げた。
『マドカ【エキドナ公式】:いや、ジークさんは昔から知ってるから納得できるのかもしれないけど!』
「ええ。僕はまだ、リゼット様とそれほど長くご一緒しているわけではありませんからね。弟子として認めていただいたことは光栄ですが、こうした昔のお話を聞くと、まだまだ知らない一面があるのだと感じます」
シルヴァは真面目な顔でそう答えた。
エキドナの正式メンバーになってから、まだ三週間も経っていない。リゼットを尊敬しているのは間違いないが、ジークのように長年の付き合いがあるわけではなかった。
「私も、リゼット様がどういうお方なのかは少しずつわかってきたつもりですけれど……王様にそんなことまでおっしゃっていたとは、初めて聞きましたわ」
アナスイも、どこか感心したように頷く。
『エキドナの長ってすげえ……』
『王様も苦労してそうだなwww』
『シルヴァさん、弟子として認められてるのに、まだ知らないことだらけなのか』
『マドカ【エキドナ公式】:でも、そういうところがお姉ちゃんらしいんだよね。誰が相手でも態度を変えないというか、必要なら相手が王様でも遠慮なく言うというか』
「そうそう。あの方は、自分が正しいと思ったことを、相手の身分など気にせず口にするからな」
『マドカ【エキドナ公式】:……お姉ちゃん、昔からそんな感じだったんだ』
「今のお話を聞く限り、昔から変わらない部分は多そうですわね」
「昔からだな」
『マドカ【エキドナ公式】:だから、なんでジークさんはそんなに即答なの!?まぁ お姉ちゃん興味ない人には対応適当だしね。あり得るかな。』
『リゼット様の昔話、もっと聞きたい』
『王様に「そろそろ死ぬわよ?」はパワーワードすぎる』
『なんちゃって勇者って言ってるけど、実際かなり大物なのでは?』
『マドカ【エキドナ公式】:まあ、お姉ちゃんはお姉ちゃんだからね。今だって、私が何か言ったら「勝手になさいな」で終わらせそうだし』
「ふふっ、目に浮かびますわね」
「まったくだ。あの方は昔から、他人にどう思われるかなど気にしていないのだろうな。」
『リゼット伝説、開幕www』
『王様にまで遠慮なし。さすがです』
『これは本人に配信を見られてたら怒られるやつ?』
「……ところで、マドカ。今の話、リゼット様に伝えるつもりはありませんよね?」
『マドカ【エキドナ公式】:えっ、なんで?』
「いえ。もしご本人が聞いていたら、余計なことを話した者が誰なのか、気になさるかもしれませんので」
『マドカ【エキドナ公式】:……あ』
「……そうだな」
『急に静かになるなwww』
『本人が見てる可能性を忘れてたw』
『リゼット様、今すぐコメント欄に降臨してほしい』
『マドカ【エキドナ公式】:というか、あのおじさん誰だっけ。協会長さん? 私、リアタイしてなかったけど、後から配信を見たらすごくかわいそうだったんだけど』
『あのおじさんwww』
『勇者協会長です』
『あの人、偉い人なんだよな……』
『偉い人なのにあんなに小さくなってたの草』
「確かに、あれは現場にいた僕たちでも不憫でしたよ?」
シルヴァが少し同情するように言う。
「見たわ! なんか、すごく小さくなってたわね!」
キシリアも思い出したように声を上げた。
「ふふっ。あの配信はまだまだ序の口だぞ? リゼット様は現役時代、口説いてくる男に水魔法をかましていたからな!」
『水魔法!?』
『口説いただけで!?』
『いや、何を言ったかにもよるだろwww』
『マドカ【エキドナ公式】:あー、それよく食らったよ? 九歳の頃』
『九歳!?!?』
『ちょっと待って、子供の頃から!?』
「寝てるのが悪いのよ、ってさ」
『マドカ【エキドナ公式】:寝てるのが悪いのよ、ってさー!理不尽すぎない!?』
『寝てたら水魔法をかけられる世界www』
『何がどうなったらそうなるんだよ!』
『九歳のマドカ様、何してたの……』
「いや、マドカ。お前だって好きで寝ていたわけではなかったんだろう?」
ジークが、今度はマドカの記憶を確かめるように尋ねた。
『マドカ【エキドナ公式】:そうだよ! ちょっと休んでただけなのに、いきなり頭から水をかけられたんだから!』
「……それは、なかなか厳しい教育ですわね」
アナスイは苦笑する。
「リゼット様には、そうするだけの理由があったのかもしれませんが……九歳の子供にそれをなさるとは」
『マドカ【エキドナ公式】:いや、理由があったとしても水魔法はおかしいでしょ!』
『マドカ様が被害者だったwww』
『九歳からリゼット様の洗礼を受けてるのか……』
「ふふふっ。まあ、リゼット様に目をつけられたら、相手が誰だろうと関係ないからな。王だろうが協会長だろうが、寝ている子供だろうが容赦はない」
『マドカ【エキドナ公式】:最後だけ対象がおかしいんだよ!』
『寝ている子供が一番かわいそうwww』
『マドカ様、よく今まで生き残ったな……』
『リゼット様の昔話、掘れば掘るほど出てくるじゃん!』
『マドカ【エキドナ公式】:……お姉ちゃん、私の知らないところで何やってるの?』
「いつものことですわね」
「いつものことだな」
『マドカ【エキドナ公式】:だから、なんでそんなに平然としてるの!?』
「リゼット様はな、騎士団の憧れだったのだ。気高く美しい、誰も寄せ付けない孤高の存在。それでいて、俺たちにはしっかりと命令を下してくださる。それがまた、かっこよくてな」
キシリアは、その話を聞くと少しだけ目を輝かせた。
「……気高く美しい、誰も寄せ付けない孤高の存在……。なんだか、すごく気になるわね」
「怖いもの見たさ、というやつですか?」
アナスイが微笑みながら尋ねると、キシリアは少しだけ頬を膨らませた。
「怖いもの見たさだけじゃないわよ! そんなにすごい人なら、一度くらい会ってみたいじゃない! もちろん、ちょっと怖いとは思うけれど……でも、気になるものは気になるのよ!」
『マドカ【エキドナ公式】:あははっ。キシリアさん、会ってみたいんだ?』
「それはそうよ!配信でもかっこよかったし!」
『リゼット様に興味津々のキシリア様www』
『怖いけど会いたいのわかる』
『憧れの人に会う前の緊張感みたいになってるw』
「ちなみに、他の者にはどうしていたかというと、紙一枚の指令書をドアに貼って帰ることもあったな」
『マドカ【エキドナ公式】:それ、機密、大丈夫なの!?』
『扱いの差がすごいwww』
『騎士団には直接命令、他はドアに紙一枚w』
『気に入られてるかどうかで対応が違いすぎる』
「まあ、彼女が宛てた人物にしか読めない魔法がかかっていたからな。第三者が見ても、ただの白紙にしか見えん」
『マドカ【エキドナ公式】:そういう問題なのかなあ……?』
「問題ないだろう。情報が漏れる心配はないのだから」
『マドカ【エキドナ公式】:いや、でも、ドアに貼られた紙を見つけた人はびっくりするでしょ!』
「それはそうかもしれんが、リゼット様は気にしないだろうな」
『絶対気にしてないwww』
『用件が伝わればいいという合理主義』
『王様にも容赦ない人だしな……』
「僕のところにも、指令書が届くことはありますけど、ちゃんと便箋入りですよ?」
シルヴァがそう言うと、ジークは意味ありげに笑った。
「強欲はまだまだ新人だからな。彼女に気に入られるのは結構かかるぞ?」
「……なるほど。便箋入りなのは、まだ新人だからですか」
「そういうことだ」
「いえ、僕は別に、リゼット様に気に入られたいわけでは……」
「ふっ、そう言っていられるのも今のうちだ」
「何なんですか、その先輩風は!?」
「経験者の言葉だ。覚えておくといい」
『新人判定www』
『シルヴァさん、弟子なのに新人扱いw』
『便箋入りなら十分優遇されてるのでは?』
『ジークさんの基準が古参すぎるwww』
『マドカ【エキドナ公式】:……あの、私のお姉ちゃんって、もしかしてものすごく面倒くさい人?』
「面倒くさいというより、筋が通っているのだ。認めた相手には相応の信頼を置く。そうでない相手には、必要なことだけ伝える。それだけだ」
『マドカ【エキドナ公式】:……それ、本人に言ったら「当たり前でしょう」って返されそう』
「間違いないな」
『本人の声で再生されたwww』
『リゼット様の「当たり前でしょう」は強い』
『マドカ様、今度お姉ちゃんに昔話を聞いてきてください!』
『マドカ【エキドナ公式】:えー、聞いても「昔のことなんて覚えてないわよ」って言われそうなんだけど……』
「それもありそうですわね」
「間違いないな」
『マドカ【エキドナ公式】:だから、なんでみんな即答なの!?』
「……というか、あのお姉ちゃん、料理とか家事は全部私にやらせてたんだけど?」
マドカは、今度は別の意味で遠い目をした。
『マドカ【エキドナ公式】:「焦げたわ」って言いながら、自分の魔法でフライパンに火をかけてるんだもん。それは焦げるよね!!』
『自分で火を強くして焦がしてるwww』
『料理下手とかそういう次元じゃないw』
『マドカ様、家事担当だったのか……』
『魔法が使える人の料理風景、これでいいの?w』
「ふふっ。遠征でも、すべて女性騎士にやらせていたな」
「『それはあなたの仕事なの』が決まり文句でな」
「……あー、言いそうですわね」
アナスイは、今のリゼットの姿を思い浮かべたのか、苦笑しながら頷いた。
『マドカ【エキドナ公式】:でも、仕事をもらえるだけ優秀だったんだね。興味ない人はすぐ帰れっていうんだけど』
『仕事を任されるのが評価の証www』
『リゼット様基準だと、仕事を振られるだけで名誉なのか』
『興味ない相手は即帰宅www』
「それは変わらんな。まず、気に入らん奴には重力魔法でわからせる。それを十分ほど続けるな」
『マドカ【エキドナ公式】:わからせるって、何を!? しかも十分って長いよ!』
「それで、ようやく『それで?』からすべてが始まるのだ」
『マドカ【エキドナ公式】:待って待って! 話を聞く前に十分間も重力魔法をかけるの!?』
『「それで?」が怖すぎるwww』
『相手を床に沈めてから話を聞く女』
『リゼット様との面談、難易度が高すぎる』
「……ねえ、マドカ! リゼット様に気に入られるコツってないの!?」
キシリアが、とうとう我慢できなくなったように身を乗り出した。
「さっきから聞いていると、怖い話ばかりじゃない! でも、そんなに実力があって、誰にも媚びない人なら……やっぱり、一度はお話ししてみたいのよ!」
『マドカ【エキドナ公式】:んー……舐めた口を聞くと、凍らせるかもしれないよね』
「コツを聞いているのに、対策を教えられた気がするわよ!?」
『攻略法じゃなくて生存法www』
『まずは凍らされないことから始めよう』
『リゼット様、難易度高すぎない?』
「ああ、実際に凍って放置される魔法師が多かったぞ?」
「怖いわよ! でも……そういう相手だからこそ、認められたら嬉しいのかもしれないわね」
キシリアはそう言いながらも、少しだけ緊張した顔をしていた。
「いや、俺も詳しい事情までは知らんが、リゼット様に無礼な口を利いた者が、気づいたら氷漬けになっていたことは何度もあったな」
『何度も!?』
『魔法師が凍らされて放置って、日常風景なの?』
『誰か解凍してあげてwww』
「そりゃ何百年も生きているお方だ。見た目はまだ二十代に届くか届かないかという美貌だろう? 同じくらいの年齢に見える男から、最初は『女のくせに』などと絡まれることもあったんだ」
『マドカ【エキドナ公式】:あー、そういうのいるよね。死ねばいいのに』
「わかるわ! 私も女だからって、よく下に見られたもの!」
キシリアは勢いよく同意した。
『急に意気投合したwww』
『キシリア様も苦労してるんだな』
『相手の実力も知らずに女だからって絡むの、最悪だな』
「まあ、そいつはすぐに辞めた」
『マドカ【エキドナ公式】:だろうね』
『でしょうねwww』
『凍らされたのかな?』
『退職理由:上司が強すぎた』
『マドカ【エキドナ公式】:でも、リゼット様って、見た目だけで判断して絡んでくる相手には容赦ないんだよね。強い弱い以前に、相手を見下してくる人が嫌いなんじゃないかな』
「それはあるかもしれんな。リゼット様は、相手が誰であろうと態度を変えない。だからこそ、相手にも余計な虚勢を張らず、実力と態度で示すことを求めていたのだろう」
「じゃあ、気に入られたいなら、変に取り入ろうとしないで、ちゃんと実力を見せればいいの?」
『マドカ【エキドナ公式】:そうかもしれないね。でも、実力を見せようとして喧嘩を売るのはやめたほうがいいと思うよ』
『大事な注意事項www』
『実力を見せるのと挑発するのは違う』
『結局、普通に礼儀正しくしてるのが一番なのでは?』
「……なんだか、リゼット様に気に入られる方法より、怒らせない方法のほうが詳しくなってきたわね」
『マドカ【エキドナ公式】:それはいい傾向だと思うよ?』
「よくないわよ!!」
『リゼット様攻略、難易度最高クラスwww』
『気に入られる前に生き残る必要がある』
『攻略本の最初のページが注意事項だらけ』
「それだと、傲慢が一番危険かもしれんな」
ジークが何気なく言った瞬間、プライドが勢いよく振り向いた。
「なんでだよ! 俺、何もしてねぇだろうが!」
『マドカ【エキドナ公式】:あー……お姉ちゃん、嫌いそう……』
「わかりますわ」
「おい、何を納得してんだよ!」
「何ていうか、プライドさんって強いのでしょうけど、かませ犬くさいんですわよ」
「わかるわ! なんか、きゃんきゃんうるさいのよね!」
「お前ら好き放題言いやがって!!」
『ボロクソで草www』
『強いのにかませ犬扱いw』
『プライドさん、配信で散々な言われよう』
『でも本人が反論するほど、それっぽくなるのやめてwww』
「……いや、待て。俺だって、ここまでの話はちゃんと聞いていたぞ」
プライドは腕を組み、珍しく少しだけ考え込んだ。
「リゼットって奴が、とんでもなく面倒な相手だってことくらいはわかった。王だろうが何だろうが遠慮しねぇし、気に入らなければ魔法で凍らせる。そんな相手にわざわざケンカを売るほど、俺だって馬鹿じゃねぇよ」
『マドカ【エキドナ公式】:うんうん。そこはちゃんとわかってるんだね』
「当たり前だろうが! エキドナで取引禁止だの、永久追放だの、そんなことになったら面倒だろうが!」
「そこを心配するのですね」
シルヴァが思わず口を挟む。
「いや、重要だろうが! わざわざ問題を起こす必要なんかねぇだろ!」
「それはそうですわね。リゼット様がどういう方かを知ったうえで、余計な問題を起こさないようにする。それ自体は賢明な判断ですわ」
アナスイは穏やかに同意した。
「……ただし」
「ただし、何だよ!」
「プライドさんは、相手に偉そうな態度を取られたり、自分の誇りを刺激されたりすると、つい言い返してしまいそうなんですわよね」
「……は?」
「そうね。リゼット様に『あなた、少し黙りなさいな』って言われたら、黙るどころか『誰に向かって言ってやがる!』って言いそうだわ!」
「言わねぇよ!!」
『マドカ【エキドナ公式】:今の反応を見てると、ちょっと心配になってくるんだけど……』
『本人も危険性は理解してるらしいwww』
『でも態度で地雷を踏みそうなのがプライドさん』
『頭ではわかっていても、口が勝手に動くタイプ』
『リゼット様に「黙りなさいな」と言われて黙れる未来が見えないwww』
「俺は相手が誰だろうと、筋の通らねぇことを言われたら反論する。それだけだ!」
「ほら、そういうところですわよ」
「だから何がだよ!」
『マドカ【エキドナ公式】:いや、でもさ。お姉ちゃんって、そういうところは本当に容赦ないと思うんだよね。自分が強いからって、相手を威圧したり、偉そうに振る舞ったりする人は嫌いそうだし』
「俺は別に偉そうになんかしてねぇ!」
「今も結構きゃんきゃんしてますわよ?」
「キシリア、お前まで乗るな!」
『本人は何もしてないと思ってるのがまたwww』
『マドカ【エキドナ公式】:ひどい言われようだけど、実際、エキドナで暴れたら多分取引禁止よ』
「……は?」
『マドカ【エキドナ公式】:お姉ちゃんだったら、「あなた、出ていきなさいな。ゴールから永久に」とか、普通に言うと思うからね』
『永久追放きたwww』
『取引禁止だけじゃなくて出禁までつくのか』
『エキドナの経済圏から締め出されたら困りそう』
『リゼット様、判断が早い』
「ちょっと待て! なんで俺がエキドナで暴れる前提なんだよ!」
『マドカ【エキドナ公式】:今のところ、暴れてないから大丈夫だよ?』
「今のところって何だ!」
「でも、リゼット様に目をつけられたら、言い訳する前に退場させられそうですわね」
「だから、俺は何もしてねぇって言ってんだろうが!」
『プライドさん、エキドナ入国前から審査落ちしてるwww』
『まだ何もしてないのに危険人物認定』
『リゼット様に会うときは静かにしていような……』
『マドカ【エキドナ公式】:まあ、プライドさんが普通にしてれば問題ないと思うよ。普通にしてればね?』
「その念押しが一番腹立つんだよ!!」
『あっ、また声が大きくなったwww』
『リゼット様、今の聞いてたらどうするんだろうな』
『「うるさいわね。出ていきなさいな」まであと一歩www』
「……でも、私はやっぱり一度会ってみたいわね」
キシリアが、ふと真面目な顔で呟いた。
「怖い人なのはわかったわ。でも、誰に対しても態度を変えず、自分の信念を曲げない人なのでしょう? だったら、どんな方なのか、この目で確かめてみたいじゃない」
「会うのはいいが、余計なことは言わないほうがいいぞ」
ジークが忠告すると、キシリアは胸を張った。
「私だって、相手を見て話すくらいできるわよ!」
「……その言葉、プライドさんにも聞かせてあげたいですわね」
「なんで俺に振るんだよ!」
『マドカ【エキドナ公式】:あははっ! でも、みんなで会いに行ったら面白そうだね。お姉ちゃん、どんな顔するかなあ』
『マドカ様、絶対に面白がってるwww』
『キシリア様は会いたい、プライドさんは会いたくないけど売られたケンカは買いそう』
『リゼット様が登場した瞬間のプライドさんを見たいwww』
『お願いだから、初対面で重力魔法十分コースだけはやめてあげて』
『マドカ【エキドナ公式】:いやいや、プライドさんが普通にしてれば大丈夫だって! ね?』
「だから、その言い方をやめろっつってんだろうが!!」
勇者会議場には、プライドの怒声と、それを面白がる面々の笑い声が響いていた。
リゼットの昔話を聞けば聞くほど、彼女がどれほど規格外の人物なのかが見えてくる。
そして、キシリアは怖さと好奇心を抱きながら、いつか本人に会う機会を楽しみにするようになった。
一方のプライドは、リゼットを怒らせるのが危険だということを十分に理解していた。
理解している。理解しているのだが――。
「……俺は、会っても普通にしてるからな」
「その宣言が一番信用できないんですわよ」
「お前らなぁぁぁ!!」
『あっ、もうダメそうwww』
『本人が一番自分の危険性を理解してない説』
『リゼット様に会う前から、全員の心配を集める男』
『次回、プライドさんは本当に大人しくできるのか!?』
勇者会議は今日も平和だった。
ただし、リゼット本人がこの配信を見ていないことを、誰も保証できないのだった。




