勇者会議雑談5
『マドカ【エキドナ公式】:いやー、こうして改めて見ると、勇者ってみんな個性的だよね。アナスイは大人の女性って感じで素敵だし、キシリアさんは大人っぽい美人なのに、なんだかかわいいところもあるし。ジークさんは渋くてかっこいいし、シルヴァは知的な雰囲気があって、頭がいいしね!』
勇者会議場での様子を配信越しに眺めながら、マドカは楽しそうに感想を口にした。
シルヴァとアナスイは、エキドナのメンバーとして以前から知っている。一方、キシリア、ジーク、プライドの三人については、今回の勇者会議の配信で初めて顔を見ることになった。
それぞれ違った魅力があるのが面白い。そんな素直な感想だったのだが、突然始まった品評会に視聴者たちも反応している。
『いきなりイケメン品評会が始まったぞwww』
『アナスイさんの大人の余裕、わかる』
『シルヴァさんは確かに知的なイケメン』
『ジークさんは渋い。わかる』
『キシリア様は美人だし、かわいいところもある』
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
キシリアが勢いよく口を挟んだ。
「私は美人で、かわいくて、しかも強いのよ! なのに、どうして私だけかわいいところがある、みたいな言い方なの!? もっとこう……かっこいいところだってあるでしょう!?」
『褒められてるのに怒る女www』
『美人でかわいくて強い、全部盛りじゃん』
『キシリア様、かっこいいって言ってほしいんだなw』
『実際かなり美人だと思うぞ』
『マドカ【エキドナ公式】:えー? だって、キシリアさんって大人っぽくて綺麗なのに、褒められると嬉しそうにするところとか、かわいいじゃん?』
「そ、それは……褒められたら嬉しいに決まっているでしょう!? 別におかしくないじゃない!!」
『マドカ【エキドナ公式】:いや、別におかしくないよ? かわいいって言われるのも嬉しいんでしょ?』
「そ、そうよ! かわいいと言われるのは嬉しいわ! でも、私はかわいいだけじゃないの! 美人だし、強いし、かっこいいところだってあるでしょう!?」
『かわいいって言われるのも好きだけど、かっこいいとも言われたいんだな』
『自分が美人なのを一切疑ってないの、好き』
『キシリア様は自信満々なくらいがちょうどいい』
『マドカ【エキドナ公式】:あはは、なるほどね。キシリアさんは、かわいいだけじゃなくて、かっこいいとも言われたいんだ』
「当然でしょう! 私は自分の魅力をちゃんと理解しているだけよ!」
キシリアは胸を張った。
褒められているのだから喜んでもよさそうなものだが、彼女としては「かわいい」という評価だけで終わらせられるのが気に入らないらしい。
もっとも、視聴者からのコメントを確認する表情は、先ほどよりもずいぶん明るくなっていた。
『機嫌の直り方が早すぎるwww』
『美人でかわいくてかっこいい、本人の希望全部入り』
『結局、褒められるのは嬉しいんだなw』
「ふふっ、皆さん、楽しそうですわね」
アナスイが口元に手を添えて、上品に微笑んだ。
「マドカちゃんに褒めていただけるのは嬉しいですけれど、こうして皆さんの前で一人ずつ評価されるとなると、少し照れてしまいますわね」
『マドカ【エキドナ公式】:えっ、アナスイは普通に素敵だと思ってるよ? 落ち着いてるし、大人っぽいし、余裕があるし。私にはない魅力だよね』
「あら。マドカちゃんにも、マドカちゃんらしい魅力がちゃんとありますわよ?」
『マドカ【エキドナ公式】:おお、アナスイ、大人の返し!』
『アナスイさん、余裕が違う』
『褒められても慌てない大人の女性』
『この二人のやり取り、安心感あるな』
「ふん。随分と楽しそうじゃねぇか」
プライドが腕を組んだまま口を挟んだ。
「お前、さっきから一人ずつ褒めてるみてぇだが、俺の評価はどうなってんだ?」
『マドカ【エキドナ公式】:えっ、プライドさん?』
マドカは画面に映るプライドの顔を、改めてじっと見た。
今回の配信で初めて見る顔だ。体格もよく、鋭い目つきにはかなりの迫力がある。黙っているだけでも、なんだか怖そうな印象を受ける。
『マドカ【エキドナ公式】:うーん……プライドさんも、かっこいいんじゃない? 知らんけど』
「おい!! なんで最後に自信をなくしてんだ、てめぇは!!」
『マドカ【エキドナ公式】:いや、だって……顔が怖そうだし、迫力あるじゃん?』
「それはかっこいいって評価なのか!?」
『マドカ【エキドナ公式】:えー? 強そうだし、頼りになりそうだし、いいと思うよ?』
「だったら最初からそう言いやがれ!!」
『顔が怖そうwww』
『褒めてるんだろうけど、言い方!』
『プライドさん、評価を気にしてるのかわいいなw』
『「かっこいいんじゃない? 知らんけど」はひどいw』
「おい、コメントまで好き勝手言いやがって……!」
プライドは不満そうに顔をしかめた。
しかし、マドカが自分をかっこいいと評価した部分まで否定する気はないらしい。
「……ふん。まあ、強そうって評価は間違ってねぇがな」
『マドカ【エキドナ公式】:おっ、そこは認めるんだ?』
「うるせぇ!」
『マドカ【エキドナ公式】:ふふっ。プライドさん、意外と褒められたいタイプなのかな?』
「違ぇよ!! お前が他の連中ばっか褒めてやがるから、俺の評価も聞いただけだろうが!」
『マドカ【エキドナ公式】:はいはい。かっこいいかっこいい』
「雑に済ませるんじゃねぇ!!」
『めちゃくちゃ評価を気にしてるwww』
『最初から褒めてほしかっただけじゃねぇか』
『マドカの扱いが雑すぎる』
『プライドさん、完全に遊ばれてる』
『マドカ【エキドナ公式】:いやー、でも本当に、勇者って見た目も雰囲気もいろいろなんだね。強そうな人もいれば、知的な人もいるし、大人っぽい人もいる。話し方や性格も全然違うし、得意なこともそれぞれだし。強い人が勇者として集まるなら、自然と見た目もかっこいい人が多くなるのかな?』
「見た目まで強さに関係あるとは限らないだろうが」
プライドがすぐに突っ込む。
『マドカ【エキドナ公式】:それはそうだけど、実際にこうして見ると、みんなそれぞれ魅力があるなって思ってさ』
「ふむ。外見だけでなく、本人の振る舞いや実力も含めて評価しているということか」
ジークが落ち着いた様子で口を開いた。
「それならば、単純に容姿の優劣を決めるよりも、個々の魅力を見つけるという話なのだろうな」
『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! ジークさん、話がわかるね!』
『ジークさんのまとめが大人』
『渋い人が言うと説得力ある』
『イケメン品評会が急に真面目になったぞ』
「でも!」
キシリアが、ここぞとばかりに胸を張った。
「その中でも、私が美人であることは間違いないわ! 美しい女性もいれば、渋い男性もいるし、知的な男性もいる! そのうえで、私は美しさと強さを兼ね備えているのよ!」
『マドカ【エキドナ公式】:キシリアさん、すぐ自分を基準にするね?』
「何か問題でもあるの!?」
『マドカ【エキドナ公式】:いや、ないけど……自信がすごいなって』
「自分の魅力を理解しているだけよ!」
『自分を基準にするの強いwww』
『でも実際に美人だから困る』
『キシリア様、かわいいだけじゃなくて美人なのは間違いない』
『この自信満々なところも魅力なんだろうな』
「ふふん! ようやく正しく理解されてきたわね!」
キシリアは満足そうに頷いた。
『マドカ【エキドナ公式】:うんうん。キシリアさんは美人だし、かわいいし、かっこいいところもあると思うよ』
「……っ! そ、そうよ! 最初からそう言いなさいよね!」
『マドカ【エキドナ公式】:最初から褒めてたつもりなんだけどなー』
「かわいいだけじゃ足りないのよ!!」
『マドカ【エキドナ公式】:はいはい。美人でかわいくてかっこいいキシリアさん、っと』
「よろしい!!」
『結局全部褒められて満足してるwww』
『扱い方を完全に理解したマドカ』
『キシリア様、チョロ……いや、素直でかわいい』
『美人でかわいくてかっこいい、本人の希望全部入り』
『マドカ【エキドナ公式】:いやー、やっぱり勇者って面白いね。みんな強いだけじゃなくて、こういうところも個性的でさ』
「マドカちゃん、すっかり楽しんでいらっしゃいますわね」
『マドカ【エキドナ公式】:うん! こういう話もいいね。次の配信では、もっとたくさんの人に見てもらえるといいなあ』
その言葉を聞いたキシリアの笑顔が、ぴたりと止まった。
「……マドカ?」
『マドカ【エキドナ公式】:ん?』
「今、なんて言ったのかしら?」
『マドカ【エキドナ公式】:え? 次はもっとたくさんの人に見てもらえるといいなって』
「あなた、わざと私をからかっているでしょう!!」
『マドカ【エキドナ公式】:ええっ!? なんでそうなるの!?』
「さっきから私のことをかわいいかわいいと言っておいて、最後にそういうことを言うからよ!!」
『マドカ【エキドナ公式】:いやいや、配信を見てくれる人が増えるのはいいことじゃん!』
「そういう問題じゃないわよ!!」
『マドカの煽り性能が高すぎるwww』
『キシリア様、また怒ったw』
『褒められて喜んで、からかわれて怒る。忙しいなw』
『勇者会議で何をやってるんだwww』
「マドカぁぁぁ!!」
『マドカ【エキドナ公式】:わー! キシリアさんが怒ったー!』
「逃げるなぁぁぁ!!」
勇者会議場に、キシリアの声が響き渡る。
配信の向こうでは、マドカが楽しそうに笑っていた。




