勇者会議雑談3
『マドカ【エキドナ公式】:それに、モンバトのマニアにとっては、別の大陸の高レベルモンスターなんて相当なレア物でしょ? カード化して売るだけで、金貨一枚出してもいいって人がいっぱいいるんだよね』
『金貨一枚!?』
『ただのカードに!?』
『いや、マニアなら出す』
『他大陸の高レベルモンスターとか、資料すらないのもいるだろ』
『カードの性能次第ではもっと出すぞ』
マドカの発言に、配信のコメント欄が一気にざわついた。
『マドカ【エキドナ公式】:モンバトって、倒したモンスターの魔力から本体にデータを吸収して、それをカードにする仕組みなんだよ。カードには生息地やレア度、HP、MP、所持スキルや魔法なんかが記録されるの』
『へえ、カードにモンスターの情報が入ってるのか』
『同じ種類でもスキルや魔法の構成が違うんだよな』
『だから理想の構成を求めて厳選するわけだ』
『なるほど、強いモンスターを集めるだけじゃないんだな』
『マドカ【エキドナ公式】:カードのデータを使えば、モンスターをホログラムみたいに出現させて戦わせることもできるよ。最初に軽い命令を出したあとは、基本的にオートバトルだね』
『ああ、そういうゲームなのか!』
『本物そっくりのモンスターが戦うんだよな』
『しかもスキルや魔法まで再現されるから、見てるだけでも面白い』
「ふふん、今さら説明するまでもないけれど、そういうことよ!」
キシリアは得意げに胸を張った。彼女たちにとっては当たり前の話でも、配信を見ている全員がモンバトに詳しいわけではない。
『マドカ【エキドナ公式】:もちろん、ホログラムだから触れることはできないし、スキルや魔法を使っても周囲に影響はないよ。でも、姿や動きは本物そっくりだから、鑑賞用としても人気なんだよね』
『鑑賞用にもなるのか!』
『高レベルモンスターを安全に目の前で見られるのはすごいな』
『本物は近づくことすら危険な相手もいるもんな』
『冒険者や研究者にとっても貴重な資料になりそうだ』
『マドカ【エキドナ公式】:そうなんだよ。冒険者なら、強敵がどんな攻撃をしてくるのか、どんな魔法を使うのか知りたいこともあるでしょ? 研究者だって、実物を観察するのが難しいモンスターを、安全に詳しく見られるなら興味があると思うよ』
『なるほど、戦闘の研究にも使えるのか』
『ゲームだけじゃなくて、実際の冒険にも役立つわけだ』
『珍しいモンスターなら、コレクションとしても欲しいよな』
「つまり、強いモンスターほど情報が少なく、実物を見に行くのも難しい。だからこそ、カードにする価値があるわけですね」
シルヴァは納得したように頷いた。
『マドカ【エキドナ公式】:そういうこと。珍しいモンスターなら、観光のお土産どころじゃない値段がつくかもしれないよ』
「……ちょっと待ちなさい」
キシリアは何かに気づいたように、ぱっと顔を輝かせた。
「そうよね! じゃあ、嫉妬のモンスターもゴールに行けば高く売れるかもしれないのよね!?」
『マドカ【エキドナ公式】:うん。怠惰大陸では珍しいモンスターなら、欲しがる人はいると思うよ』
「ふふん、いいことを聞いたわ! 嫉妬大陸のモンスターの価値を、怠惰大陸の連中に思い知らせてやるんだから! 誰も知らないような珍しいモンスターを見つけて、一番詳しくなってやるわ!」
『嫉妬様、完全に観光の目的が変わってるwww』
『観光じゃなくて現地調査になってるぞ』
『でも他大陸限定カードは欲しい』
『自分の大陸じゃ普通のモンスターでも、別の大陸じゃレアなんだよな』
「おいおい、嫉妬だけの話じゃねぇだろ。傲慢大陸にもレアなモンスターはいるぜ? そいつらのデータだって売れるってか。いいじゃねぇか!」
プライドもすっかり乗り気になったようだ。
「確かに、他の大陸では知られていないモンスターもいるでしょうね。自分の大陸では珍しくなくても、別の大陸では貴重な情報になる。そう考えると、各大陸の情報を集める意味は大きいですね」
シルヴァも商業的な価値を認めたようだった。
『嫉妬だけじゃなくて傲慢も参戦www』
『各大陸のモンスター情報を持ち寄ったら面白そうだな』
『これ、観光の話だったよな?w』
『他大陸のモンスターカードを集める旅、普通に楽しそう』
「……待て。そうなると、どのモンスターのデータを持っていくか、よく考えたほうがいいな」
それまで話を聞いていたジークフリートが、真剣な顔で口を挟んだ。
「お前、なんでそんなに真面目なんだよ?」
プライドが不思議そうに振り返る。
「当たり前だろう! モンバトでは、モンスターの種類だけでなく、スキルや魔法の構成も重要なんだ。珍しいモンスターだからといって、必ずしも使えるカードになるとは限らん! それに、鑑賞用としての価値を考えるなら、姿や動きに特徴のあるモンスターも需要があるはずだ!」
『……ん?』
『今の説明、妙に詳しくないか?』
『ジークフリート、お前もしかして……』
「……なんだ、その目は?」
『憤怒の勇者、モンバトもやってるのか!?』
『配信を見るだけのガチ勢じゃなかったのかwww』
『モンスターのスキル構成まで考えてるぞwww』
『絶対、自分でも厳選してるだろ!』
「や、やっていて何が悪い! モンバトは戦略性も奥深さもある、実に優れたゲームだぞ!」
『認めたwww』
『やっぱりプレイヤーだったwww』
『憤怒の勇者、まさかのモンバトガチ勢!』
『配信を見てるだけじゃなく、自分でもやり込んでたのかよ!』
ジークフリートは咳払いをひとつしたが、今さら取り繕っても遅かった。
『マドカ【エキドナ公式】:あはは、ジークフリートさんもモンバトをやってるんだね。今度、対戦してみる?』
「……ふっ。望むところだ!」
『言ったなwww』
『相手はモンバトチャンピオンだぞ!?』
『憤怒の勇者、配信視聴だけじゃなくて本人とも対戦することになりそうで草』
「チャンピオンだからって、勝負する前から勝ったつもりになるなよ!」
『マドカ【エキドナ公式】:ふふ、もちろん。対戦するなら手加減はしないよ?』
「望むところだと言ったはずだ!」
『ジークフリート、思った以上に本気だwww』
『これ、普通に対戦配信が見たいんだが』
『観光の話から、モンバト対戦まで話が広がってるぞ!』
『マドカ【エキドナ公式】:いや、私は別に商売しようって話をしたわけじゃないんだけど……。まあ、面白いモンスターが見つかったら、モンバトの参考にはなるかもね』
マドカは、少し困ったように笑った。
もともとは、ゴールでの観光を楽しむための話だったはずだ。それがいつの間にか、他大陸のモンスターを調査し、モンバトのデータを集める計画へと変わりつつある。
他大陸では珍しくないモンスターでも、怠惰大陸では貴重なデータになる。強さやスキル、魔法の構成だけでなく、その姿や動きを安全に観察できることにも価値があるのだ。
ゲームで使うために。冒険の参考にするために。研究の資料として。そして、珍しいモンスターを鑑賞するために。
一枚のカードを欲しがる理由は、人によって違う。
そして今、キシリアとプライドは自分たちの大陸のモンスターにも商機があると気づき、ジークフリートは隠していたモンバト好きまで露呈させてしまったのだった。




