勇者会議29
「そういえば、マドカ。嫉妬のところには行かないのか?」
『マドカ【エキドナ公式】:嫉妬かー。許可が下りたら行きたいんだけどね。せっかくなら観光もしてみたいんだけど、嫉妬って聞くと、なんかそこら辺でキレてそうなイメージがあって、ちょっと怖いんだよね』
「まあ、嫉妬と聞いたら、そういうイメージはありますわね」
『旅行先で機嫌を損ねたら大変そう』
『観光する側も気を遣いそうだな』
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! なんで私の国がそんなふうに思われているのよ!? そんなことないわよ! 私のところには、私のように綺麗でかわいい子がいっぱいいるのよ!? 絶対に来なさいよ!」
『マドカ【エキドナ公式】:自分で言うんだ……』
「なによ! 事実でしょ!」
『マドカ【エキドナ公式】:まあ、それはともかく。まずね、私たちで色々と調べたんだよ。この世界って、明確に他国との付き合いがあるところがほとんどないんだ』
「どういうことだ?」
『マドカ【エキドナ公式】:大陸ごとに大きな国が一つあって、あとは爵位を持った人たちが治めてる領地がある、っていう形が多いんだよね。それに、みんなあまり領地の外に出ないんだよ。交通の便が悪いから』
『マドカ【エキドナ公式】:だから、街を歩いている外国人に「どこから来たんですか?」なんて、いちいち聞かないんだよね』
「た、確かにそうね……。遠くから来た人間なんて、そもそも滅多にいないもの」
『マドカ【エキドナ公式】:そうそう。だから、入国管理というか、身分確認が厳重なのは王都とか、伯爵以上の領地に入るときくらいなんだよ』
「それ以外はどうなっているんだ?」
『マドカ【エキドナ公式】:冒険者ギルドのカードがあれば、大体そのまま通れちゃうんだよね』
「……おい。それ、大丈夫なのかよ!?」
プライドが思わず声を上げた。国境を越えて移動する人間が少ないという事情は理解できる。だが、それと身分確認の甘さは別の話だ。移動する者が少ないからといって、確認を簡略化してしまって本当に問題はないのだろうか。
「確かに外国人が観光に来ることはほとんどないだろう。だが、身分の確認がそれだけで済むというのは、少々問題ではないか?」
『マドカ【エキドナ公式】:私もそう思うんだけどね。そもそも、国境を越えて人が移動すること自体が珍しいみたいなんだよ』
「しかし、冒険者ギルドのカードを持っていれば、素性の怪しい者でも簡単に通れてしまうのではないか?」
「強欲は、少し事情が違いますね。高価なレアアイテムなどが多く流通していますから、王都の出入りは厳しく管理していますよ?」
シルヴァは落ち着いた口調で補足した。大陸や国によって、人の出入りを管理する理由も、その厳しさも異なるらしい。
「価値の高い品を扱う場所は、それだけ盗難や不正の危険もありますからね。人の出入りについても、相応の対応が必要になります」
『マドカ【エキドナ公式】:なるほどねー。場所によって、警戒する理由が違うんだ』
『国境を越える人が少ないから、管理の仕組みも発達していないのか』
『でも、ギルドカードだけで通れるのは確かに不安だな』
『強欲は高価な品が多いから厳しい、と。納得ではある』
『これ、観光に行く以前に各大陸の常識が違いそうだな』
「そうですわね。国によって人の行き来も、守るべきものも違うのでしょう。ひとくくりにはできませんわね」
「ちょっと! 話が逸れてるじゃない! マドカ、嫉妬にも来なさいって言ってるのよ!」
ここまでの話を聞いていた嫉妬の勇者が、たまらず割って入った。自分の国の話をしていたはずなのに、いつの間にか大陸ごとの入国管理や治安の話になっている。肝心の観光については、まるで進展していない。
『マドカ【エキドナ公式】:あはは、はいはい。許可が下りたらねー』
「絶対よ! 約束だからね!」
『マドカ【エキドナ公式】:まだ許可も下りてないのに、約束になっちゃった……』




