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落内円は落ちている  作者: 七風


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勇者会議27

『マドカ【エキドナ公式】:いやー、別に私たち商売人ではないからね?』


「……は?」


 プライドが、またしても間の抜けた声を出した。


『マドカ【エキドナ公式】:発明はするよ! でも、あとは商業ギルドに任せてるんだよね。なのに、個人的に売ってくれってエキドナに来る人が多すぎるんだよ!』


「えっ、そうなのですか?」


 シルヴァが意外そうに聞き返した。


『マドカ【エキドナ公式】:そうだよ! うちの鍛冶師とかニコラの弟子がゴールにお店を持ってるでしょ? 商品が欲しいなら、そこで買えばいいじゃん! 取引の相談なら商業ギルドに行けばいいし!』


『えっ、エキドナって商会じゃなかったのか?』


『あれだけ商品を出してるから、てっきり巨大商会だと思ってた』


『発明するところと、作って売るところが分かれてるのか?』


「……待て。じゃあ、なんでわざわざお前らのところに来るんだ?」


 プライドが眉をひそめた。


『マドカ【エキドナ公式】:それを私たちに聞かれても困るよ! お店もあるし、商業ギルドにも任せてるのに、なんで私たちに直接売ってくれって言うのかな?』


「そりゃ、発明した本人から直接買いたいって奴もいるんじゃねえのか?」


『発明した本人から買いたいって気持ちは、まあ分かる』


『でも、本人たちからしたら迷惑なんだろうなw』


『店があるなら、そっちで買えばいいだけでは?』


『マドカたちが接客してたら発明する時間がなくなるだろw』


『マドカ【エキドナ公式】:気持ちは分からなくもないけど、私たちが全部対応してたら、発明する時間がなくなっちゃうじゃん!』


「……まあ、それはそうか」


 プライドも、そこは否定できなかったらしい。


『マドカ【エキドナ公式】:私たちは最初の作品を作るだけ。そこから先は、レシピとかを下請けに流して、職人さんたちに作ってもらってるんだよ! 商業ギルドには流通や取引を任せてるし、私たちが全部やる必要はないでしょ?』


「なるほど。エキドナが発明を行い、製造は職人たちが担い、販売や取引の窓口は商業ギルドが担当する。そうやって役割を分けているのですね」


 シルヴァは、ようやく全体像を理解したように頷いた。


『ああ、そういう仕組みなのか!』


『発明する人、作る人、売る人で役割分担してるんだな』


『弟子たちがゴールで店を持ってる理由が分かった』


『これなら職人も、自分の技術を活かして商売できるわけか』


『マドカたちが全部抱え込まないの、合理的だな』


『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! 職人さんたちは自分のお店を持てるし、私たちは新しいものを作れるし、みんなそれぞれ得意なことをやればいいんだよ!』


「……しかし、EVにモンバトにヒロバト。あれだけ売れてる商品を生み出してるんだ。お前ら、相当儲けてるんじゃねえのか?」


 プライドが、ふと疑問を口にした。


『そこは気になる』


『あれだけ売れてるなら、相当な利益が出てるはずだよな』


『発明した側がどれくらい受け取ってるのかは知りたい』


『マドカ【エキドナ公式】:あー、そう思われるのは分かるよ! でも、私たちが商品の売り上げから直接もらってる分って、実はそんなに多くないんだよね』


「そんなに多くない、ですか?」


 シルヴァが聞き返す。


『マドカ【エキドナ公式】:うん! 基本的には、私たちが発明した商品の特許を取って、製造する人たちに作ってもらう。素材が必要なら、その分の代金ももらう。それから、あとは売り上げの五%くらいかな?』


「五%……?」


 プライドが思わず聞き返した。


「いや、待て。あれだけ売れてる商品だぞ? 五%でも相当な額になるんじゃねえのか?」


『五%!?』


『いやいや、EVもモンバトもヒロバトもだぞ!?』


『売り上げの五%って、普通にとんでもない金額になるだろw』


『いや、待て。そもそも製造費とか研究費とかもあるんだよな?』


『五%しか取ってないって話じゃなくて、ほかに特許や素材の代金もあるんだな』


『マドカ【エキドナ公式】:もちろん、必要な利益はもらってるよ! 素材だってタダじゃないし、研究にもお金はかかるからね! でも、実際に商品を作って、お店を維持して、売るために頑張ってるのは職人さんたちでしょ? その人たちに売り上げが入るのは当たり前だよ!』


「……なるほど。発明した側が権利や素材の代金、一定の割合を受け取り、製造や販売で生まれる利益は、それを担う人たちにも回るわけですね」


 シルヴァは感心したように頷いた。


『なるほどなあ……』


『発明した人だけが儲かる仕組みじゃないんだ』


『職人が商品を作って、店を維持して、売る。そこにも当然お金がかかるもんな』


『技術を提供する側と、それを使って商売する側。両方に利益があるわけか』


『これ、職人側にとってもかなりありがたい仕組みじゃないか?』


『自分の店を持って、エキドナの発明品を扱えるなら、商売を始めるきっかけにもなるよな』


『マドカ【エキドナ公式】:そういうこと! 私たちが全部作って全部売ってたら、職人さんたちは商売できないし、私たちだって新しい発明をする時間がなくなっちゃうもん!』


『あ、そっか。エキドナが全部独占したら、職人たちの商売が成り立たなくなるのか』


『発明品を広めながら、職人も育ててるようなものなんだな』


『そりゃ、ゴールに店が増えるわけだ』


『これ、単に儲けを分けてるだけじゃなくて、街全体の商売を大きくしてるんじゃないか?』


「……つまり、商品が欲しい奴は店に行く。取引の相談なら商業ギルドを通す。それが基本ってことだな?」


 プライドが確認するように尋ねた。


『マドカ【エキドナ公式】:そうだよ! 私たちに直接来られても、商売の話は商業ギルドに任せてるからね! そこは間違えないでほしいかな!』


『つまり、買いたいなら店へ。商談ならギルドへ、か』


『よし、覚えた!』


『いや、最初からそういう話だったんだよw』


『プライド、ここまで来てようやく整理できたなw』


「最初からそう説明してくれれば、話が早かったんだがな……」


『マドカ【エキドナ公式】:えー? だって、商売人じゃないって言ったじゃん!』


「今やっと意味が分かったんだよ!!」


 プライドの叫びに、配信のコメント欄が笑いで埋まっていく。


『そこは最初に説明してやれよwww』


『マドカの中では最初から説明できてたんだろうなw』


『マドカ「商売人じゃない」』


『プライド「いや、そういう意味じゃねえ!」』


『会話が噛み合ってるようで噛み合ってなかったw』


『でも、プライドが聞いてくれたおかげで仕組みはよく分かったぞ』


『マドカ【エキドナ公式】:とにかく、私たちは何でもかんでも自分たちで売って儲けたいわけじゃないんだよ! 私たちが作ったものを使って、職人さんたちがお店を持てたり、商売がうまくいったりするなら、それでいいじゃん! 私たちはその間に、また新しいものを作ればいいんだから!』


「……お前ら、本当に金儲けそのものが目的じゃねえんだな」


『マドカ【エキドナ公式】:いや、お金は必要だよ? でも、必要以上に独り占めしたいわけじゃないんだよね。新しいものを作って、それでいろんな人の生活が便利になったり、商売がうまくいったりする。それが嬉しいんだよ!』


 いつもの明るい声で、マドカはそう言い切った。


『ああ、これがエキドナの考え方なんだな』


『自分たちだけが儲かるより、発明したものが広まって、みんなが豊かになるほうがいいってことか』


『もちろん研究費や利益は必要。でも、独占することが目的じゃないんだな』


『なんか、エキドナがいろんな職人を抱えてる理由が分かった気がする』


『こういう仕組みなら、職人側もエキドナに協力したくなるだろうな』


『マドカ【エキドナ公式】:だから、商品の購入や取引の相談は商業ギルドへ! ゴールのお店で売ってるものなら、そっちで買ってね! 私たちに直接来ても、売れないものは売れないからね!』


「最後はきっちり釘を刺すんだな……」


 プライドが苦笑する。


『マドカ【エキドナ公式】:だって、何回も来られたら困るもん!』


『結局そこwww』


『いや、でも本当にそうだよなw』


『お店があるのに本人に直接来るな、という話だった』


『商業ギルドに任せてるのに、本人に営業しに来るのはおかしいもんな』


『買いたいなら店へ! 商談ならギルドへ!』


『エキドナに突撃するな!』


『本日の配信で学んだこと:発明家には発明をさせてあげよう』


『これだけ説明しても、明日にはまた誰か突撃してそうなのが怖いw』


『「マドカ様に直接お願いすれば特別に売ってもらえるかも!」とか考える奴、絶対いるぞw』


『マドカ「売れないものは売れないからね!」』


『強いw』


『公式からの業務連絡で草』


 どうやら視聴者たちには、ようやくマドカの言いたいことが伝わったようだった。

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