勇者会議26
『マドカ【エキドナ公式】:……あっ! そういえば、今回ってアナスイたちの所属の話をしてたんじゃなかったっけ?』
「……今さら思い出したのか?」
プライドが呆れたように顔を覆った。
『マドカ【エキドナ公式】:いやー、いろいろ話してたら忘れちゃって!』
「忘れるなよ!!」
『マドカ【エキドナ公式】:でも、所属の話なら、ナナリーもそうだよね! 色欲教会に所属したまま、エキドナにも所属してるじゃない?』
「……そういえば、そうでしたわね」
アナスイは特に驚く様子もなく頷いた。
『マドカ【エキドナ公式】:それに、エレノアも王女だけどエキドナ所属だよね! あれも国が認めてるし!』
「王女でありながら、エキドナにも所属している。しかも、それを国も認めているのか?」
プライドが確認するように尋ねた。
『マドカ【エキドナ公式】:そうだよ! 本人だけじゃなくて、国も認めてるんだよ!』
「なるほど……。本人が望んでいるだけではなく、元の所属先や国も認めている。そういう前例があるわけですね」
シルヴァが納得したように頷いた。
「ナナリー様は色欲教会を辞めたわけではありませんわ。あの方は今も色欲教会の一員ですし、エキドナに所属していることも、教会として認めていますもの」
アナスイは当然のことのように答えた。
「エレノアも王女としての立場を失ったわけではない。国が認めているのであれば、複数の所属を持つこと自体に問題があるわけではないのですね」
シルヴァは、今回の話と重ね合わせるように続けた。
『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! だから、所属ってひとつだけじゃなきゃいけないわけじゃないんだよね!』
「……そういう話か」
プライドが腕を組む。
「だが、ナナリーの場合は個人的な交流から始まったんだろ? 今回のアナスイたちは、エキドナの計画に参加するって話から正式メンバーになった。そこは少し違うんじゃねえか?」
『マドカ【エキドナ公式】:きっかけは違うけどね! でも、どっちも本人たちが納得してて、元の所属先も認めてるなら問題ないでしょ?』
「ええ。大切なのは、名前だけの所属ではなく、双方がそれを認めていることですわね」
アナスイは穏やかに微笑んだ。
「私もシルヴァも、色欲や強欲の大陸を捨てたわけではありません。エキドナの一員になったからといって、これまでの関係を失うわけではないのですわ」
「そうですね。むしろ、これまで築いてきた関係を保ったまま、新しい仲間とのつながりも持てる。僕は、そういう形もあっていいと思います」
シルヴァの言葉に、アナスイも頷いた。
『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! だから、所属が増えたからって、元の所属を裏切ったことにはならないんだよ!』
『ナナリーも色欲教会とエキドナの両方に所属してるのか』
『エレノアは王女のままエキドナ所属なのか。国も認めてるなら、確かに前例になるな』
『今回のアナスイとシルヴァも同じ考え方か』
『所属先が増えるだけで、元の仲間を捨てるわけじゃないんだよな』
「……なるほどな」
プライドは納得したように頷いた。
「エキドナってのは、誰かを自分のところに囲い込むための組織じゃねえってことか」
『マドカ【エキドナ公式】:うん! 仲良くなった人が一緒にいたいって言ってくれるなら、私たちは歓迎するよ! もちろん、本人と相手の所属先が納得してることが大事だけどね!』
「……ふむ」
プライドは少し考え込んでから、苦笑した。
「最初からそう言ってくれりゃ、話も分かりやすかったんだがな」
『マドカ【エキドナ公式】:えー? 今ので分かったんだからいいじゃん!』
「そういう問題じゃねえ!!」
『マドカ【エキドナ公式】:なんだか会議を乗っ取っちゃってごめんね? いろいろ話してたら、すっかり脱線しちゃった!』
「……今さらだな」
プライドが呆れたように肩をすくめる。
『マドカ【エキドナ公式】:えへへ!』
「ねぇ! マドカ! あなた達を怒らせたくないのだけど、何かしちゃいけないことでもある?」
それまで話を聞いていた嫉妬が、改めて問いかけた。
『マドカ【エキドナ公式】:ん? 何かしちゃいけないこと?』
「そうよ。あなたって、普段は気さくだし、話もしやすいじゃない? でも、絶対に譲れないことだってあるのでしょう? 知らずに踏み込んで、あとから問題になるのは避けたいのよ」
『マドカ【エキドナ公式】:あー、なるほど! そういうことね!』
マドカは納得したように頷いた。
『マドカ【エキドナ公式】:うん、あるよ! まず、エキドナの仲間を傷つけること。それから、私たちを都合よく利用しようとすることかな!』
「仲間を傷つける、というのは分かるわ。でも、都合よく利用するっていうのは?」
『マドカ【エキドナ公式】:例えば、エキドナに所属してるんだから言うことを聞いてよ、とか、仲間なんだからタダで協力してよ、とか! そういうのは困るよね!』
「……まあ、そりゃそうだな」
プライドもそこは否定しなかった。
『マドカ【エキドナ公式】:もちろん、頼みたいことがあるなら相談してくれていいんだよ! 私たちにできることなら協力するし。でも、仲間っていう立場を使って、何でも押しつけるのは違うでしょ?』
「なるほどね。仲間だからといって、何でも許されるわけではない、ということかしら」
『マドカ【エキドナ公式】:そうそう! 仲間だからこそ、相手のことも考えようって話だよ!』
『それは普通に大事なことだな』
『仲間だからタダでやれ、は確かに違うw』
『マドカちゃん、こういうところはしっかりしてるんだな』
『マドカ【エキドナ公式】:それと、もうひとつ! エキドナに危害を加える組織とは、取引しないよ!』
それまで明るく話していたマドカが、今度ははっきりと言い切った。
「……取引しない、というのは、どんな場合でも?」
『マドカ【エキドナ公式】:うん。私たちを攻撃したり、仲間を傷つけたりしてる相手に、こっちから商品や技術を渡して助ける理由はないでしょ?』
「相手が大きな組織だったとしても?」
『マドカ【エキドナ公式】:関係ないよ! 相手が大きいからって、嫌なことを我慢しなきゃいけないわけじゃないもん!』
「……相手の立場や規模で、判断を曲げるつもりはないわけか」
プライドが腕を組んだ。
『マドカ【エキドナ公式】:そういうこと! ただ、意見が合わないだけなら別だよ。ちゃんと話し合うし、問題が起きたなら解決する方法だって考えるよ』
「つまり、意見の違いだけで相手を切り捨てるわけではないのね」
嫉妬は念を押すように確認した。
『マドカ【エキドナ公式】:もちろん! でも、話し合う気もなく仲間を傷つけたり、エキドナに危害を加えたりする相手にまで、今までどおり協力するつもりはないよ。そこは譲れないからね!』
「ふふっ……。思っていたより、ずっとはっきりしているのね」
『マドカ【エキドナ公式】:だって、嫌なことは嫌だもん! 私たちだって、何でも引き受ける便利屋じゃないんだからね!』
『便利屋じゃない、いただきましたw』
『そりゃそうだw』
『普段のマドカちゃんからは想像できないくらい、線引きが明確だな』
「分かったわ。仲良くすることと、何でも許すことは違う。あなた達が大切にしているものを理解しておけば、無用な衝突も避けられそうね」
『マドカ【エキドナ公式】:うん! 私たちだって、みんなと仲良くしたいんだよ! だからこそ、お互いに大事なものは大事にしようね!』




